29、久しぶりの1人
「じゃあ説明するわね。まず午前中、夫が座学を担当します。調合の注意点や方法、レシピを教えるそして最後に座学の卒業試験をして受かったら実際に調合を教えるわ。お昼を食べて実技は私が教える。でまた最後に試験をするわね。高難易度の薬を実際に作ってもらって完成できたら卒業ね。」
ブルーは大人しくリアンの話を聞いている。私はびっくりしてリアンを見ていた。
「先生みたい。」
小声で言うと私の独り言が聞こえたのかリンが、
「母さんは先生よ。ここからもう少し歩いたところに学校があって、ていうか2人が作ったんですって学校を。そこで2人共先生をしてるの。」
「えっそうなの、ありがとう。」
リンは調合の準備をしてくれている。あの2人目立つ事をしてるわね。でも2人に頼んだの正解だったわね。
「リク、ちょっといいかしら。」
「クインどうしました?」
「明日の流れは分かったわ。ありがとう。それでブルーの事を明日1日2人に任せてもいいかしら。」
「ええ、いいですよ。彼は優秀そうだから1日で終わると思いますよ。」
「ありがとう。」
明日は久しぶりに森に聖水の雨を降らして夕方には戻ろう。
その後、リアンにもお礼を言ってまた明日と、別れてブルーと一緒に帰ってきた。
「ブルー明日頑張るのよ。あの2人腕は確かだから。」
「はいお師匠様頑張ります。とりあえず1番難しい混沌酩酊状態からの復活の薬を作る事が目標だそうです。」
「そう。応援してるわ。」
私は明日の2人の授業が終われば修行は終わりだと言うと決めている。ブルーもそろそろ旅に出ないといけない。
そして私はまた俗世と関わりを断つ生活に戻る。ブルーに場所を知られているので引っ越し先も決めておかないと。
次は寒いところか暖かくて海の近くどちらかにしよう。
「ではお師匠様行って参ります。」
ドクが授業をしてくれる部屋に入るだけでこれなのでリンは笑いを堪えている。リアンは実技の準備をしているのでここには4人だけだ。
私は邪魔をしないようにそっと部屋を出て別の部屋にいるリアンに話をしに行った。
「今回は本当にありがとう。助かったわ。」
「いいえどういたしまして。彼魔力ほぼ0だものね。」
「そうなの、だから治癒の方法が薬しかなくて。しかも魔法を全く使わない調合方法。」
「ふふ、大変ねお師匠様。」
「もうやめて。恥ずかしいから。」
「ねえ、スコープはどうしてるの?一緒にいるのよね?」
私は黙ってしまう。こればっかりは全ての真実を話せない。でも、嘘も言いたくない。
「スコープは、あの人は死んでしまった。私が治療を間違えたから。」
「そう、そうだったの。残念ね。そう、彼死んでしまったの。彼、いい人だったのに。私があげたなんでも治し効かなかった?」
「いいえ、そのあれは使えなかった。もう息をしていなかったから。でもまだ持っているわ。」
「そう。」
リアンがそっと背中をさすってくれる。背中をさする手がとても優しくて堪えていたのに結局涙を流してしまう。
「ごめんなさい。泣くなんて。」
「良いじゃない泣きなさいよ。誰もいないわ。」
しばらくして落ち着いた私は森に帰ってきていた。
「さあ久しぶりに雨を降らそう。今日は割と遠くまで降らして昼寝しよ。」
ありったけの魔力を使って雨を降らす。魔力はどっと減るけどすぐに復活する。ついでに家に幻惑の魔法をかけなおして昼寝をする為にベッドに入った。
目を覚ますとまだ昼過ぎのようで窓から外を覗くと太陽が高い位置にある。
「まだ夕方まで時間があるわね。ちょうどいい買い物に行こう。」
変身の魔法を自分にかけて街の市場に転移する。ブルーの為に鞄や靴、ローブ等を買い揃える。
普通なら母親が、子供を守ってくれますようにと時間をかけ、お金をかけて選ぶものだ。だからなるべく良いものを選んだ。剣は私が持っていた物の方がいいのでこれを渡す。他は全て新品で質の良いものにした。一式をまとめてブルーの部屋に転移させる。
「さあそろそろ迎えに行こうかな。」
リアンの家に転移するとまだ実技の試験に苦戦しているようで、ブルーが困ったように薬を調合している最中だった。
「大変そうね。」
少し眺めているとドクが現れた。
「クイン何かしてきました?滝行とか?なんだかとても神聖な清い感じが、そばににいるだけで魔物が寄ってこないのが分かります。」
「へえーそう?まあまあ気にしない気にしない。」
「ブルー君座学は1発合格ですよ。やっぱり優秀でした。」
「私の弟子だからね。」
冗談っぽく返すと、ドクは続けて言った。
「彼は学校にしっかり通った事があると思います。応用編の本を開いて渡してもスラスラと読んでいたので高等な教育を受けています。王立学園のような。応用編は難しい単語や専門知識がないと読めない言葉ばかりですからね。」
「そう、やっぱり。ありがとう教えてくれて。」
勇者だものね。何を隠しているのかしら?
「終わりましたー!お師匠様!」
元気よく戻ってくるこの笑顔も今日で見納めか寂しいような待ち望んでいたような。
「アン、本当にありがとう。」
「ええ、でも彼は優秀だわ。すぐになんでも調合出来ちゃうの!」
ブルーは嬉しそうに頭をかいている。
「これは今回のお礼。大したものではないけど受け取って。」
市場で買っておいた果物や野菜の盛り合わせを渡す。2人の祖国、砂の国の果物や野菜が籠いっぱいに入っている。
「クイン、これってもしかして。」
「ええ、そうよ。」
それ以上は言わなかった。リアンもドクも嬉しそうに懐かしそうに1つ1つ手に取っては戻してを繰り返している。リンは不思議そうにそんな2人を眺めている。
「それじゃあさようなら。」
「ありがとう。また来てねいつでもー!」
「ありがとう。さようなら。」




