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13、薬師の独白


薬師は私とスコープの前にお茶を置いた。そして向かいのソファに腰をおろすと少し辛そうに絞り出すように話しだした。


「スコープ殿はご存知でしょうが、私は50年以上王族付きの薬師を続けているラクと申します。代々薬師の家系で父も王族に仕えていました。薬師という職に誇りを持ち王族の為に薬を処方し研究を重ねました。父から薬師の全てを叩き込まれ仕事を受け継いだ後も、滞おりなく順調に運び高を括っていました。研究も適当にこなし薬の処方も助手に任せていました。その時です6歳のリアン様に言われたのです。」


「お父様の薬を同じ効能で飲みやすく小さくしてみましたの。ラクこの薬お父様にお出ししてもいいかしら?」


「私はその瞬間、戦慄が走り、動揺を隠せませんでした。その場をどう切り抜けたか分かりません。ただその薬は副作用が出る等と嘘をつき薬を全て回収しました。そして絶対にリアン様に薬師の座を奪われると、代々受け継いだこの職を失い家族の恥だと汚点だと。そうはなりたくなかった。だから罪を犯しました。占い師に大金を払いラナ様が女王だと予言させ、リアン様を遠ざけました。」


そこまで話すと薬師は堰を切ったように泣き出した。話にもびっくりだがこんなとんでもない話をする程スコープを信用してるって普通の何でも屋ではないわよね。


当の本人のスコープは声もかけず軽蔑するように薬師を見下している。静まりきった部屋で老人の嗚咽だけが存在していた。


「ああ、私です。私が殺したんです。リアン様を。ああ神よお許しください。最期はどうだったのですか?教えてください。リアン様は幸せだったのですか?」


薬師はカッと目を見開き机越しにスコープを真っ直ぐに見た。


「リアン様は王に家族に、信頼していた者達に7歳で捨てられ血が滲むような努力を重ね認められようとしました。それでも愛を受けられなかったリアン様は城から出て行きました。幾ら薬の知識があってもまだまだ小娘の売る薬を買ってくれる人はおらず店を持ったとはいえ細々と薬を売って生きていたところにラナ様のお話。そして魔力を込める為に命の炎を吹き込んだ。そして亡くなったのですよ。まだ若いのに。幸せだったかと聞きましたね。考えれば分かるのでは?」


スコープは淡々と話す。薬師は最後まで聞くと涙も枯れたのか虚ろな瞳で私達に礼を言い部屋から出て行った。


三日後、ラナ様の病気が完治したと号外が撒かれ、次の日薬師が亡くなったと小耳に挟んだ。ただラナ様のお祝いムードに掻き消され誰も薬師の話を口にしなかった。




「あんたさ、知ってたでしょう」


「クインとうとう名前さえ呼んでくれなくなったね。」


「話をそらさないで。」


「いいや、知らなかったよ。」


ニヤリと笑いそれ以上何も言わなかった。




「ドク私達まっさらに生まれ変わったわね。」


「ええ。」


放牧と農業が盛んな、あまり魔法とは無縁の土地を選び、農場と赤い屋根の家を買い取って新しい生活を始めた。あの宮殿とは比べ物にならない位貧相で環境も全く違い戸惑う事ばかりだけど私達の表情はとても明るい。


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