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7話 魔女(7)オラン爺な

6話~10話同時投稿してます。


川沿いの町。


正式な名前があるのかも知れないが、住人も旅人も皆がこう呼んでいる。

王国東端を流れるイグニス川に面した小さな交易地……だったのだが、数年前に川を挟んだ隣国が無政府状態に陥り、交易は縮小。対岸の町と細々としたやり取りが続いてはいるものの、活気は失われ住人も半減。更に去年の旱魃でイグニス川の水位が減少し、船が出せない時期まであった。飲食店は軒並み閉店し、宿も1軒を残すだけ。この調子じゃ数年後には地図から消えていてもおかしくない。



予想以上の活気の無さに、魔獣肉なんて買い取ってくれる店があるかと不安になったが、幸い冒険者ギルドはまだ残っていた。ギルドなら大抵の品は売買できる。


――カララン


ギルドの重い扉を開けると、なんとも閑散とした有様だ。

受付に眠そうな爺さんが一人いるだけで、冒険者の姿は皆無。逆に依頼票は山ほど貼ってある。


「おお。3日ぶりの客だの。歓迎するぞー。今なら依頼も選び放題じゃ」

見た目通りの眠そうな声。歓迎されてるのか?投げやりにしか聞こえない。

「いや、買取をお願いしたいんだが」


「なんじゃ……つまらん。冒険者なら依頼を受けてなんぼじゃろ、小鬼(ゴブリン)も魔獣も選り取り見取りじゃぞ。大鬼(オーガ)やら巨大魔獣やらが出たなんちゅう話も来とる」


こんな平地に大鬼が出るようじゃお終いだ。軍が出る事態だろ。

「軍も色々立て込んでそうじゃからなあ。ほれ、何を売るんじゃ。出して見せい」

背負い袋一杯に詰め込んだ白鷲魔獣肉(とりにく)をカウンターに並べる。


「ほうほうほう、白鷲の、しかも魔獣じゃと!どこで遭った?このサイズだとまだ若い魔獣じゃな?夏場に飛んできてそのまま居ついたか……ふむ、2体分のようじゃな。他の部位は食ったのか?かなりの量じゃろ?尾羽はないかの?ほほう、1体は雷撃、もう1つは魔法弓か。お前さん若いのになかなかの腕じゃな。パーティーで動いとるのか?人数は?頼みたい依頼が3つほどあるんじゃが……」


待て待て。急に元気になったな爺さん。ゆっくり話してくれ。


「おう、すまんすまん。何せ近頃ここには碌な冒険者が来ないもんでなあ。久々に腕利きが来たと思って興奮してもうた。ワシは冒険者ギルド、ルクシア支部イグニス中流域担当のオランじゃ。認定証はお持ちかな?」

腰巻から認定証を取り出し、渡す。俺のギルド認定級は2級だから、この認定証は銀製。……大分くすんでいるな、今度磨こう。


「銀級冒険者のアムラン殿だな、宜しゅうに。買取価格だがな、これなら……大銀貨15枚でどうじゃ?」

おお、予想よりかなり高い。いいのか?ここでは売れそうにないが……

「この品質ならルクシアに持っていけば飛ぶように売れるじゃろ。白鷲魔獣など滅多にお目にかかれんからの。燻製にして小さく切ればこの街でも売れるがな、ルクシアで売って麦と肉を仕入れた方が皆は助かるからの。ちょうどギルド商人も来る頃じゃ」



支払いを受け取り、しばし雑談。

数年前にここでいくつか依頼をこなしたが、その頃は職員も冒険者もたくさんいた。やはり交易縮小が痛手なのか。


「それもあるが……今は西部や北部の『自由都市』があるじゃろ。あちらは税が安くてのう。冒険者は根無しの個人事業だからどうしてもな、そっちに流れるんじゃ。今は旱魃の影響でここらの売買税も通行税も上がっとる。そりゃ物好きな奴しか残らんよ」

やっぱり旱魃の影響は大きいんだな。俺も行き倒れるところだったし。


「数日いられるならちょいと頼みたいんじゃが……先を急ぐかのう?」

まあ、ミカ次第だが……特に急ぎというわけでもないだろう。


「ここから北へ向かった街道沿いにでかい魔獣の痕跡があったようでな。どうも巨大な縞虎らしい……まさか辺境の(ヌシ)が来るとは思えんが、情報を取ってきてもらいたいんじゃ。ランクはC、依頼料は大銀貨5枚」


あ、それ解決してます!もう奴は帰りました!詳しくは知りません!魔獣こわい。

「なんじゃ、何か知っとるのか?この街に縞虎の魔獣なんぞ出たら皆殺しじゃ。知っとるなら教えてくれんか。依頼は達成扱いにするぞい」

んーどうしたものか。正直に話す気にはなれないし。



――カラr「おっすー!オラン爺いるー?くたばったー?葬式は済んだかー?」


ドアベルが鳴り終わるのも待たず喧しい女が入ってきた。間違いなくミカだ。ナイスタイミング。


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