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第21話 帝国の将と対峙する

「さてと」


 砦の上層部に注目する。そこには小窓が設置されてあり、その向こうからはっきりとした魔力を感じる。間違いなくあの部屋だな。


 ⋯⋯さすがに緊張する。原作通りなら間違いなく双子の暗殺姉妹より数段強いはずだ。でもまだ普通に勝てる相手のはず。突入手段はもちろん()()だ。


 ――ナターリアたちは砦内に突入したな。俺もそろそろ動こう。

 両手の刀を握りしめ、


「よし、行くか!」


 気合を入れ、右片足で【瞬雷脚】を発動させ小窓のところまで上昇、そして左足でもう一度【瞬雷脚】を使い、瞬時にドロップキックを放つような態勢になり、小窓を蹴り破った。


 ガシャン!


 ガラスが粉々に吹っ飛び、ついでに小窓正面にいた兵士の顔面を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばした兵士は受け身も取ることもなく、派手に床にボールの如くバウンドしながら転がった。

 ⋯⋯首の骨折れて死んだな。恨むなよ、そこにいたお前が悪い。


「貴様ァ! どうやってここに入った!」


 どうやってって、お前、今見てなかったのかよ。小窓から侵入しただろうが。

 部屋にいた兵士四人が同時に斬りかかってきたので迎え撃ち、一瞬で斬り伏せた。


 そして部屋全体を見渡す。石中心で作られた部屋だが、壁には装飾が施されていて少し豪華な雰囲気が出ている。中々の広さだ。床の中央に細長いレッドカーペットが敷かれており、その奥には玉座がある。

 元々ここはこの国の王が非常時などに使う大広間。そして今玉座に座っているのは帝国の将だ。


「お前がナポス砦を任されている者だな」


 ふてぶてしく座っている男は俺を見るなり舌打ちをする。


「テメェか、一人で俺の軍隊を壊滅させたのは」

「だとしたらなんだ」


 その男は腸が煮えくりかえる様子で声を荒げた。


「どいつもこいつも使えねぇヤツばかりだ。こんなガキ一人にいいようにやられやがってッ」

「そう言う割には随分と余裕がある様に見えるけど?」

「ふん、兵士()なんざ使い捨てよッ。代わりなんていくらでもいる」


 男は立ち上がりこちらへゆっくりと近づいてきた。


「俺がその気になりゃ、ここに来た王国兵なんざ一捻りよッ」

「じゃあ始めからそうしろよ」

「ああ? 俺は指揮官だぜ。なぜ俺が自ら動かねばいけねぇんだよッ。駒共がしっかりやればいいだけの話だろうが!」


 コイツ、典型的なダメ上官だな。まあ、俺が設定した性格通りだけどね。いや、本来戦で前線に指揮官自ら立つケースは少ないけど。


「この俺、ゴンザがまずは手始めにテメェから始末してやる」


 ゴンザは指をポキポキ鳴らしながらさらに近づいてくる。


 奴は背が高く、二メートルくらいあり、そしてスキンヘッドで上半身は裸、下は長いズボンをはいている。だが特筆すべきはその隆々とした筋肉だ。見るからにパワーがあるのがわかる。


 さて、戦闘開始だ。


 ――と言いたいところだが、一つ確認したいことがある。


「戦う前に一つ聞きたい。お前、朱色の髪の男を知っているか?」

「知らねぇよッ。知っていても教える気はねぇッ!」


 ゴンザは突進して右こぶしで鳩尾狙いの突きを繰り出してきた。

 体を捻り、躱すが次に左こぶしが俺の顔面を襲う。それを首を傾けて紙一重で避けると同時に俺はゴンザに反撃の一太刀を振るう。


 が、軽いフットワークで躱される。俺は続けて突き、振り下ろし、横薙ぎをを入れるが、ことごとく回避されてしまった。


 想像以上に身のこなしが軽い。体格に似合わない素早さだ。原作同様でただの筋肉バカではないということか。


 一度距離を置き刀を構え直す。⋯⋯油断したらやられかねんな。


 今度は俺から距離を詰め、ゴンザの胸めがけてX字に両手の刀を振るうが――


 消えた――!? いや違う! ヤツは素早くしゃがみ、足払いをかけてきた。

 俺は思わず飛んで躱すが、ゴンザはそれを読んでいたのか立ち上がりながら右手で渾身の突きを放ってきた。


 ――まずい!


 俺は左足で【瞬雷脚】放ち、一瞬で後ろに下がりすれすれのところで回避に成功する。

 俺の動きが予想外だったのか、ヤツは目を見開いている。そして今、隙だらけだ。


 ――もらった!


 右足での【瞬雷脚】でゴンザに瞬時に迫り、右手の刀で斬り上げた。


「ぐぅッ!」

「⋯⋯チッ、浅かったか」


 ゴンザの胸部を斬ったが、ヤツは咄嗟に上体を後ろへ逸らすことにより、致命傷を避けたのだ。

 そしてヤツは飛び退き俺と距離を取った。ヤツの胸からは血が垂れている。


「やるじゃねぇか、だが今のでわかったぜ。テメェ、雷属性だな」

「⋯⋯それがどうした」


 ゴンザは俺を見下すかのように笑う。


「知らねぇのなら教えてやるよ。お前じゃ俺に勝てないことをなッ」

「⋯⋯」

「魔力同士には相性がある。そしてお前は雷、俺は土だッ。そして土はなぁ、雷に強いんだよ!」


 ゴンザは両肘を引き、握りこぶしを腰に寄せ、気合を入れた。


「むうぅぅん――! はぁッ! 【プロテクト】!」


 ゴンザの全身が半透明の黄色の膜で覆われる。

【プロテクト】土属性魔法の補助魔法だ。対象者の防御力を上げる。つまり、ヤツの肉体は今鋼のように硬くなったということだ。


「さあ、来いよ。俺はこの場から動かねぇ。斬れるもんならきってみなッ」


 ⋯⋯結果はわかっているんだが、一応試してみるか。


「うおぉぉ!」


 俺は渾身のX斬りを放つがゴンザの体には傷一つ付かなかった。


「これでわかったろ?」

「まだだ!」


【シャインショット】を放つが、ダメ。この程度の威力じゃ強化されたゴンザの肉体に弾かれる。

 次に刀に雷魔力を込め、あらゆる角度からゴンザを斬り付けるがこれも全く歯が立たない。


「魔力の相性は絶対だ。バカめ、雷属性が土属性に敵うと思ったかッ!」

「っ!」


 全身を使った渾身の振り下ろしのクロス斬りも刃が交差する前にヤツの両腕に受け止められてしまった。


「覚悟はいいかッ!」


 ゴンザは受け止めていた刀を払いのけ、その反動で俺は態勢が崩れてしまった。

【瞬雷脚】! ――ダメだ間に合わない!


「おららららららら!!」

「があぁぁぁぁ――!?」


 ゴンザの怒涛のラッシュを受けてしまう。

 素早い突きが俺の体にこれでもかと叩き込まれる!

 痛てぇぇ⋯⋯!! 体の芯まで響く⋯⋯! ヤツは魔力をまとった拳で攻撃してきている⋯⋯!

 魔力相性が悪いと受けるダメージも増大するんだッ! 

 でも武器だけは手放すわけにはいかない!


「とどめだぁ!!」


 ヤツは渾身右こぶしが、俺の腹部にめり込む!


「がはぁ⋯⋯!」


 俺の体はくの字に折れ曲がりそのまま吹っ飛び、壁に激突。そして、前のめりに倒れた⋯⋯。


「はッ! 口ほどにもねぇ! さて、残った雑魚どもも片付けに行くとするか。あーめんどくせぇ」


 ゴンザはその場から立ち去ろうとする――


「――やるな」


 俺はゆっくりと立ち上がった。大丈夫、まだ動ける。


 ゴンザは俺の方に向き直り、


「タフなやつめ⋯⋯!」


 眉間にしわを寄せながら低い声で喋った。


「その図体の()()()意外と軽い攻撃だったな。まあ、それなりに効いたけど」

「ふんッ! 強がりを」


 ああ、強がりだよ! 本当はめっちゃ痛かったぞ! てか、意識飛びかけたし! 今も身体に激痛が残ってる。間違いなく肋骨何本か折れてるな。


 でも数日前、ナターリアの裸を見てしまったときにフルボッコにされたけど、あれのおかげか痛みに多少耐性がついていたみたいだ。

 あの時は意識飛ぶどころか一瞬お花畑が見えたからな。

 もしあの一件がなかったら俺は確実に気を失っていただろう。

 ありがとう。ナターリア。まさかこんな形で君に感謝するとは思わなかったよ。


「大人しく死んでればよかったものを」

「悪いがこんなところで死ぬわけにはいかないんでね」

「だが、テメェじゃ俺にはかすり傷すらつけれねぇ」

「ああ、このままじゃな」


 それはよーくわかった。試すだけ時間の無駄だったよ。それともう一つ、原作とこの世界でゴンザ、お前の強さは変わらないってこともわかったぞ!

 ならお前に勝てるさ。それもさっきお前が言ったことを覆してな!


「本気を出す⋯⋯! 覚悟しろ!」


 原作でも主人公はここで本気を出す。原作では久しぶりに本気を出すことになっているが、()()()()()()()()()()。でもそのために短い期間とはいえ、鍛錬はしてきたんだ。やってみせる!

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