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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

冒険者家族

作者: カワユキ


-迷宮都市-


我が家の朝は非常に早い、鶏が鳴く頃には家族揃ってダンジョンに向かう。


「門番さんおはようございます。」


僕の挨拶にそれまでだれていたダンジョンゲートを護る兵隊さん達が敬礼をして答えた。

「ハッ、おはようございます。」


・・・イャそんなに()きんで挨拶せんでも、それじゃあまるで僕が怖い人見たいじゃない。

十代の若者は一寸したことで傷ついたりするのよ・・・


僕が苦笑いを浮かべていると、僕の後ろに立っていた親父がデカイ声で返事をした。


「ウム、ご苦労。」


ただの冒険者風情が何でそんな偉そうなのよと思いながらも俺は、

あぁオヤジの顔を見て脅えたのねと1人納得した。


-迷宮-


ダンジョンにはじいちゃんを先頭にオヤジと僕、最後に母ちゃんの四人で入って行った。


僕の家族が潜るダンジョンは洞窟の用な自然発生した物ではなく明らかに人為的に産み出された物だった。

お陰で松明等灯りを用意する必要もなくダンジョン内は煌々と明かり灯っていた。


「いつ来てもここの明かりは、不思議だよね、灯りに手を翳しても熱くもないし。」

俺の何気ない一言に母ちゃんが答えた。

「魔術師の中にはそれ専門で研究してる人がいるくらいだからね、マックスも(まじゅつ)の学校行って見るかい。」


母ちゃんの言葉をオヤジが慌てる様に遮った。

「オイオイ余り変な事を吹き込まないでくれよ、クレイジーマックスは家の家業をついで立派な冒険者になるんだからよ。」

オヤジの言葉に僕は反論した。

「なぁ他の事はともかくクレイジーマックスって呼ぶのはやめてくれない?」


僕の問いにさも傷ついた顔をしてオヤジが答えた。

「お前が産まれた朝、悩みに悩んでつけた名前が嫌だってのか!」


さも初めて知りました的なリアクションをしてくるが、どうして嫌じゃないと思えるのだろうか、

「ずっと前から知ってたでしょ。どこの世界に実の子供の名前にクレイジーと付けちゃう馬鹿がいるの?」


まぁ我が家にはいたけど、ましてや役所にの正式な書類に迄書きやがって・・・


僕は涙ぐんで母ちゃんに言った、


「母ちゃんもさ、何で止めてくれなかったの?」


僕の問いに母ちゃんは言った。

「だってさ父さんったら涙ぐんでお願いするんだもん、可哀想になっちゃって、」


母ちゃんの言葉にオヤジはハニーと呟き、

母ちゃんはオヤジの目を見てダーリンと呟いた。

可哀想なのは僕でしょ、僕はため息混じりに呟いた。


「ハァ、そんなんだから兄ちゃんや姉ちゃんが出てっちゃうんだよ。」


僕の言葉にオヤジはこっちを向いて怒った。


「あんな親不孝の薄情もんの事は忘れろ!」


いや、兄ちゃんは皆殺しのガイルとか言うキラキラネームを通り越してギラギラしちゃった名前を付けられながら真面目に学校に通い、今じゃ隣国の騎士団に入隊迄果たしたのよ。


ご近所では1番の出世頭と喜ばれてるのに、このオヤジは何が気に入らないのかね・・・


「いいか、アイツ等は俺がつけた名前を勝手に改名したんだぞ!」


何を全力で言ってるのかよく分からないが僕だって成人したら確実に改名するわ。


僕は言いたいことを我慢して話を続けた。

「そうは言っても姉ちゃんの場合は結婚して家を出た訳だし、ナニより近所に暮らしてるんだから良いじゃん。」


僕の言葉にオヤジは全然良くないと噛み付いた。

「冗談じゃないアイツは孫が産まれた事を最初隠してたんだぞ、俺が初孫の事を知ったのは既に名付けが終わってる後だったんだぞ。」

知ってます。

姉ちゃんに相談されて一緒になって隠してましたから。


僕は試しに聞いてみた。

「ちなみに名前を何にするつもりだったの?」

「堕天使悪魔ちゃん。」

うん、それもう名前じゃないよね。

僕は自分のしたことを心から誇りに思った。


僕達が下らない話をしながら狩場にたどり着くと、先行して獲物を探してたじいちゃんが戻ってきて言った。

「この先にコカトリスの(つがい)がおる、殺るか?」

じいちゃんの問いにオヤジが頷くと、じいちゃんは一瞬でその場を離れ獲物を此処まで誘導しに行った。


本当にじいちゃんの斥候としての能力はスゴいね。

昔は某国の暗殺者(アサッシン)だったらしいけど・・・

僕はじいちゃんへの尊敬の気持ちが溢れると共に自分の駄目さに嫌気がした。


オヤジは身長2メートル体重120キロの大男にしてこの街の顔役。

母ちゃんは優秀な魔術師。

じいちゃんは超一流の斥候(アサッシン)

兄ちゃんは隣の国で騎士様。

姉ちゃんだってあのまま家業を続けていれば一流の魔術師になってただろう・・・僕だけが中途半端だ。


オヤジ程ガタイが良いわけじゃなく、母ちゃんの様に魔術の才能に恵まれる訳でもない。

責めてもじいちゃんの様に斥候(アサッシン)の技術をと思ったが、此方もいまいち。

一流に囲まれていると嫌でも自分が半人前な事を痛感する。



僕はそんな事を考えながらじいちゃんが釣れてきてくれる獲物をじっと待った。


暫く待っていると、

"コケ〜" "コッコッコッコケ〜"

と云うけたたましい鳴き声と共にじいちゃんに連れられてコカトリスが2頭こちらに向かって突っ込んで来た。


母ちゃんは慌てる事なく僕達に石化に対するプロテクションの魔法を掛けてくれた。

僕も初級の生活魔術位なら何とかなるが本格的な魔術になると手に負えない。


僕は母ちゃんの目を見て軽く頭を下げた。


僕が母ちゃんとアイコンタクトを取っていると、オヤジは大楯を持って飛び掛かって来るコカトリスの蹴りを受け止め弾き返していた。


「オゥッ、一羽は任せたぞ!」

そう言うオヤジの声に思わず僕は連携とか考えないのかね、と心の中で呟いた。


まぁ殺生は嫌だが、殺らなきゃならないことはさっさと終わらせたい。

僕は此方に走り込んで来る、もう一頭のコカトリスに向かいあった。


鶏の身体に尻尾は蛇と言う一見すると死角なしに見えるこの魔物だが、所詮はおっきな鶏。

僕は正面から突っ込んで来るコカトリスに持っていたナイフを2本投擲した。

1本は鶏の頭にもう1本は蛇の頭にこのデカイ鶏はこうやって双方の頭をいっぺんに攻撃されると簡単にフリーズしちまう。

後は頭にナイフを喰らってもがいてるコカトリスの頚を跳ねてお仕舞いである。


僕は自分の分の狩を終えるとすぐさまオヤジの援護に行こうとした。


はい、調子乗ってました。


オヤジの方はとっくに倒し終わったコカトリスの解体作業に入っていました。


僕はそそくさと自分が殺った獲物の解体を始めた。


-街中-


太陽が上がる頃には家の家族はダンジョンを離れ自宅に足を向けていた。


僕としては飯を食ってから学校に行きたかったが、ちょっと間に合いそうにない。

僕はこのまま学校に行く旨を両親に伝え防具をオヤジに預けた。


「悪いねオヤジ。」

「いいから早よ行け!」


オヤジの言葉に続いて母ちゃんが学校終わったら早めに帰って来て、今日捕れたお肉お姉ちゃんとこ持ってっ行ってあげて欲しいのと、言った。

オヤジが不満そうにしてたが大きな声は出さなかった。

サスガにこの時間に大声で騒ぐとご近所迷惑になる。

我が家のオヤジはこんな所だけ妙に常識的だった。


-放課後-


学校を終えて家に帰った僕は母ちゃんから渡された鶏肉を肩に担ぎ姉ちゃんの家に向かった。


とは云え姉ちゃんの嫁ぎ先は2ブロック先の宿屋であり歩いて5分とかからない。


本来ならオヤジを荷物もちにして母ちゃんが行けばいい話だが、イジケたオヤジのせいで中々母ちゃんは姉ちゃんの家に遊びに行けなかった・・・全部馬鹿オヤジが悪い。


「姉ちゃん、居る〜?」

僕の呼び声に真っ先に反応したのは姪っ子のマリアだった。


「兄〜ちゃん。」

4つになったマリアは最近僕の事を兄ちゃんと呼ぶ様になった・・・この可愛い姪っ子にふざけたまねする馬鹿がいたら容赦はしない。


僕はマリアを抱っこすると母ちゃん居ると質問した。

「あっち」

マリアの適格な答え頷きながら奥に入って行くと、姉ちゃんが椅子に座って挨拶してきた。

「悪いねマックス、ちょっと悪阻(つわり)がキツくてね。」


「気にするなよ、所で義兄さんは?」

「父〜ちゃん買い物いった。」

マリアは俺の腕から脱出しようともがきながら答えた。

「本当あんたら仲がいいね、実の兄妹見たいじゃないか。」

姉ちゃんの問いに僕は素早く答えた。

「マリアは嫁にはやらん。」

「うちの人と同じ事言うのは止めておくれよ。」

俺の台詞に姉ちゃんは呆れながら答えた。

サスガ義兄さんは解ってらっしゃる。

僕が頷いていると、あきれ顔した姉ちゃんが聞いてきた。


「で、今日はどうしたの?」


僕は玄関に置いてあった鶏肉を持って来ると姉ちゃんの前において言った。

「母ちゃんが持ってけって。」

「・・・いつも悪いね。」

「姉ちゃんは何も気にしないで。」


僕の言葉に姉ちゃんはお腹を撫でながら言った。

「この子にあたしらみたいな苦労はさせたくないんだよ。」

その言葉を聞くと僕は何もいえなくなった。


何せ絶賛被害にあってますから。


僕達がこんなとりとめの無い会話をしていると玄関の方でマリアの鳴き声が聞こえた。



僕は脱兎の如く玄関に向かって走った。


ちょうど玄関を出たところでマリアが倒れて泣いていた。


僕はすぐにマリアの所に駆け寄るとマリアの怪我を調べた。


あぁクソッ膝を擦りむいてるじゃねぇか、

俺は躊躇わず初歩の癒しの魔術を使った。

所詮は俺程度の魔術じゃ血を止める程度しか出来ない。

マリアのおった心の傷を癒すには姉ちゃんか母ちゃんの魔術に頼るしかねぇ。

俺はマリアを姉ちゃんに渡そうと振り返ろうとした。


「ちょっと待ちなさい!」


俺はマリアを抱えながら声のした方をちらりと見た。


どこぞのお貴族の坊っちゃん嬢ちゃんか知らないが冒険者風のかっこをした三人組みが立っていた。


俺の前で偉そうに立つ三人の馬鹿に言った。

「何だか知らんがうちの姪っ子が大変なんだ、後にしろ。」


俺の言い方が気に食わなかったのかそのうちの1人が俺の肩を掴み無理やり向きを代えさせやがった。

当然目の前の馬鹿に驚いたマリアは益々泣き叫んだ。


「貴様がこのガキの親戚ならば先ず私達に謝罪しろ!

いいか、このガキはミスソフィアにぶつかって謝りもしなかったのだぞ!」


あ?

じゃあ何かうちのマリアが泣いてるのはコイツらのせいなのか・・・

俺はマリアを下に降ろし優しく言った。

「ちょっと母ちゃんの所に行ってな。」


マリアが姉ちゃんの所に行くのを確認すると俺は3馬鹿に質問した。

「確認するがこの街は貴族のルールが通用しない冒険者の街だ。

お前らは一体何様だ。」

「フンッ我々は学園の課外授業でこの迷宮都市までやって来たのだ。」

「質問に答えろよ、お前らは貴族か冒険者か?」

「えぇ私達の今の身分は冒険者だわ、それがどうしたと言うの?」

3馬鹿の1人の女が答えた瞬間俺は隠し持っていたナイフを正面のお坊ちゃんの腹に捩じ込んでいた。

3馬鹿は何が起こったのか分からない顔をしてたが、こっちの知ったこっちゃない。

俺はもう1人のボンボンの後ろに素早く回り込み予備のナイフでそいつの咽をかっ伐った。

それを見て初めて何が起こったのか解ったらしく残ったお嬢ちゃんが金切り声をあげやがった。


ウルセェ!

マリアがまた泣いちまうだろうが!

俺は持っていたナイフを叫んでるお嬢ちゃんに向かって投げつけた。

ナイフは狙い通りにお嬢ちゃんの咽に突き刺さり、

金切り声は止まった。

俺はヒューヒューと音を発てながら倒れてるお嬢ちゃんの所に歩み寄るとナイフを抜き頚に足を乗せおもいっきり体重を掛けた。


"べキュ"と云う音と共にお嬢ちゃんの体は一度跳ね上がり音はしなくなった。


俺は最初に腹をえぐった奴の所に行くと最後に質問した。


「所でうちのマリアを怪我させたのはあの女か?」


ソイツはしくしく泣きながら頷いた。

「そうかい、じゃあまぁ苦しまずに行かせて殺るよ。」

俺がそう言って坊っちゃんの咽をかっ切ろうとすると、坊っちゃんは急に話し出しやがった。


「コッこんな事許されると思っているのか?」

何を今更言ってるのか分からんが優しい俺は質問に答えてやった。


「この街じゃ冒険者同士の喧嘩に役人は介入しない、それがこの街のルールだ。」

「違うっ僕はキ・・・」

俺はそれ以上しゃべらせる事なく坊っちゃんの喉にナイフを突き立てた。


-冒険者ギルド酒場-


「おいっ聞いたかよ。」


「あぁ聞いた、クレイジーマックスの事だろ。」


「まったく名は体を現すとは良く言った者だぜ。」


「あぁ貴族の餓鬼共に冒険者名乗らせてあっという間に殺っちまったってよ。」


「いくら冒険者同士の喧嘩は斬られ損って言ってもよ、相手は貴族だろ。」


「普通なら貴族の親が殺し屋なりを送って来るさ。」


「だが今回は相手が悪い、この街の闇を仕切ってるあの家族に手を出せば、迷宮都市から王都に運ばれる資財は確実に止まる。

下ッパ貴族の為に王国はそんなリスクは侵さないだろうよ。」


「まぁ俺達にゃ関係無い話さ。」


冒険者達は忘れようとするかのように酒を煽った。




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