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週刊エビハルマキ  作者: とろサーモン
5/9

1月20日

「私が一番怖いと思う人種はお人好し。」

「サンタはさ、基本的に真面目なんだよね。」


家のコタツに入りながらぬくぬくとした声で続ける。

ここはサンタの家、学校の愉快な仲間達の都合のいいたまり場である。


「真面目すぎて毎日に疲れて、疲れてるけど疲れないようにすることができないっていうかさ。

わかりやすく言えば苦労人だよね。」


「ふうん、それで?」


「もうちょっと楽に生きたら?って思うんだよね。真面目なところはサンタのいいところでもあるけど悪いところでもあるんだよ。」


「それはなかなか難しいことだよね。僕はこの性格と頑固さに納得しているからさ。まあ確かに疲れる時なんかしょっちゅうだけど。ナツとかに......。」


くすっと笑うモモ、安土桃香。ハルマキ、ナツと共に僕達仲良しグループの一員。

おっとりした性格で優しい。ハルマキ、ナツと同じく顔のレベルが高い。しかし、モモの顔の作りは性格が出ているのか二人と違って美人というよりはかわいいの部類に入る。黒髪のボブカットでパッチリとした目、笑う時に目の線が細くなりもっと可愛らしくなる。


「ナツはなんだかんだでいい子だよ。私はクラスの中で一番ナツが性格いいと思う。」


「それはない。口悪いし。」


「口の悪さはさ、結局のところはさ、相手にそれは駄目だと伝えたいからなってるんだよ。ナツは天才だからさ、多分頭の中で物事の整理が私達の2倍は進んでるんだよ。そして正しくないものが許せないんだと思う。不器用だから言い方がきつくなるけど。」


ふうん、そういうものなのか。納得しかけたところでまた気になるところができる。この前ナツから浴びた冷たい視線。あれは何だったのか......。


なんだかんだいって僕達にはモモみたいな人が必要なのだろう。突っ走るだけのナツと真面目すぎるハルマキ、そしてあの馬鹿にはモモみたいな歯止めが。


「モモはさ、どんなふうにものを見ているの?正直僕達とはかなり違うところから話してるんじゃないかなとしか思えない。」


「なんていうかさ、これはサンタにだから言えることなんだけど、私の本体は真上から今話している私達を観察していて、その私が言ったことをこの私が伝達してるって言えばいいのかな。よくわかんないや。」


「ごめん、僕もよくわからなかった。」


二人とも苦笑い。

静寂が流れる。

二人の会話を聞くでなく、場を聞く時間。

僕は静寂が好きだった。

そして僕はモモが好きだ。

なんとなくだけど、モモが好き。

雰囲気がといえばそうだけど、何が好きかと言われたら答えられない。かわいいからかな.....。

少なくとも僕にとって彼女の目を細める笑顔はなんとなく癒される。モモも僕のことを考えてくれてたらいいなとは思う。


しかし、その考えは甘かった。

モモはちゃんと僕のことを思考に入れて、ちゃんと向き合ってくれていた。いや、くれていないのか。僕が向き合っていると思っているモモは本物のモモじゃない。本物のモモは真上から僕を見下ろす外側のモモである。実をいうとモモがさっき何を言いたかったのかなんて理解できている。でもやっぱりちゃんと話すことはできなかった。なんとなく怖かった。自分の好きな人の深みに入ることに恐れを抱いたのだ。

そして僕は自身の鈍感な性格に後悔することになる。


「でも私ね。自分でも怒らない方だとは思うけどちょっとだけ許せないことが有るんだよね。誰のことだと思う?」


「誰?全然見当がつかないんだけど。」


モモは笑顔で言い放つ。


「サンタだよ。」




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