プロローグー全員もれなくー
プロローグしゅーりよー。
よろしくお願いします。(T.T)
おれ、死にました。
あの日、あのショッピングモールの階段に逃げ込もうとして、知人を庇って死にました。
なのに、おかしいですね。おかしいじゃないですか。
なんで、“おれ”が居るんですか。意識が在るんですか。何で考えられる状況なんですか。
厭に留めておかないて下さいよ。何かの厭がらせですか。趣味の悪い。
おれは死んだんでしょう?消えて地獄にでも連れて行かれるはず何でしょう?
そう思って死んだんですからその通りにして下さいよ。覚悟くらいしてました。てか解ってますから。死ぬことくらい。だからこうして、受け入れてるんです。不本意だろうがそう言うもんでしょう?死ぬって。
何か恨みでもあるんですか。
大人しく死ぬ気でこっちはいるのに、何ですかこれ。
こっちに行ってろという案内も無ければ、あっちに行けという“誰か”すら居ない。何処かへ行けという意思さえ見えない。むしろ“無い”んじゃないですか?
何なんですか。おれが何したって言うんですか。余計な事しないで下さいよ。潔く死なせて下さいよ。
“まだ生きたい”なんて幻想持たせないで下さいよ。
“また会いたい”なんて絵空事思わせないで下さいよ。
いい加減にして下さい。早く、早くおれを死なせて下さい。
お願いですから。
ºººººººººººººººº
───くそ、くそっ!……この野郎!!おまえが先とか巫山戯ん な!!
ああ、お前かよ。ばかたれめ。
───何、何で先逝った!?何で先逝くマネしたんだよおお!ざっけんじゃねーよカスッ!
誰がカスだ。巫山戯んなよバカ。
───俺より先とか許さねえぞ!大馬鹿野郎!!
うるせぇよ。お前らが勝手に言ってたんだろが。
───くっそ……、くそ!!あああ”あ“!!
あんま言ってんなよ見つかるぞ。集中。
───『─ガガガン!!』『─取りこぼし発見』…チッ!
ほれ見ろ。毎度毎度詰めが甘いんだよ。
───邪魔だクズ共!俺の前に立つな!!
何処のSPだよ。いや、ヒットマンだっけ?
───あーくっそ………ッ!行き止まりかよ……!!
我武者羅に走ってたもんなあ。てか肩、大丈夫かよ。あと足。
───この壁登…………って!先生!こっち!!
相変わらず、血登り頭じゃ隠れるって手は浮かばないのな。
───ハァ………ハァ……、ッ……………先生、先行ってくれ。
……………。
───俺は平気だって。
……また、馬鹿言ってら。
───女を守んのは男の仕事なんだよ!ニシシッ。
……………そこは役目っつっとけよ……。ばかたれ。
───だいじょーぶ!だあいじょ『ビチュン──』………って…………。
………………………………………。
───……ああああああああ、ああああ!!あああ”………あ、先生。
……結局。
───……………逃げてくれ。
お前も死んだのかよ。
───…………助けナシで生きらんないのは、私も同じか。
猫ちゃん先生、あんたもか。
───いや、生きる。私は生きるさ。死んでたまるか、あんたたちの両親に伝──。
希望から全部、全部全部。
───『ズガガガガガガガガガ』『ピチュンピチョン─』『パーンパーンッ』
助けって……。
───『課長、この資料と、クライアントの─』…ああ、解ってる。
…父さんも。
───『先日新人が─』…ああ、あ………、ん?……なっ!?
………なぁ、なんでさ。
───『あああッ!!』『キャアアアアッ!!』『うわああああああ、やあああアア!!!』
…なんで、こんなさ。
───『─』『─』『─』──────………がふっ………!エ”ホッ、エ”ホッ………。………ァ…………………。
………何だってんた。
───たまご、たーまーごー………っべ、切らしちゃってた。
………かあさん。
───お遣い頼んじゃおっかな~、また怒られちゃうなあ~、ふふっ。
かあさん、逃げて。
───おっなべー、おっなべー……んふふ、我ながら良い出来だ!
逃げて、お願い。
───あー、お椀お椀…、何処やったっけ……あ、こっちの棚……?
……違うし……左、左の棚。下じゃないって。上。
───…あ!あった!よぉし!お次『ゴオオオォッ!』……え…………。
ああああぁ………。
皆、みんな、死んでいたと言うんですか。わざわざそれを見せたんですか。
あんたは本当に、何がしたいんですか。
おれが絶望する事に、何の得があったんですか。
答えろ、答えろよ、糞野郎。
ººººººººººººººº
特にこれと言って不満などない、普通に幸せな人生だったと思う。
厭なことはあれど、殺したくなるほど嫌った人やモノも無かったし、それに何ら不備があった訳でもない。
正面から大好きだと言えるような年頃じゃなかったし、伝える事を恥ずかしいと思う頃でもあった。だから伝えず、伝えず終いで後悔する。
助かってほしかったものは助からなかった。これほどやりきれないものはない。
死にたい。死にたい。
気が済んだだろう。もう良いだろう。いい加減、死なせてくれ。
終わらせて、くれ。
その日、一つの紛争で、一つの街が滅んだ。
戦争を知らない、紛争地に少々近かった街。
当然武器なんて持つ者はいない平和ボケした街の住民は、反撃しようとすら考えず逃げ惑い、
全員、死んだのだと言う。