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ウッドペッカー•ライフシフト  作者: 三ツ目くりっく
一章 もしも死んだら、と前置きして…。
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プロローグーないやー



 休日。

 オシャレなんて気にかけない、男同士で通ったカラオケ。

 クソ上手いくせにたまにとんでもなく外す親友と、可も無く不可も無いおれの美声()。

 その場のノリで掛けた携帯端末。完全に呆れ返った顔でやって来た猫ちゃん先生。

 綺麗なソプラノでネタ曲を熱唱するさまのなんとシュールな事か。

 いつの間にか替え歌合戦へと変わったカラオケルーム。コーラと珈琲とグレープジュースがこぼれて大惨事に。

 残り十分を証拠隠滅に使い、逃げるように店を出てばたばたと走ること数分後、漸く冷静になった頭で馬鹿やってんなぁと考えた頃、そう言えばと親友が口を開いた。

 何だと聞き返す猫ちゃん先生のネクタイに、白い猫のタイピンがあるのに目が留まる。仕事終わりでそのままだったスーツ姿の、キッチリした所にギャップが出来て良いね───そう珍しく褒めようとしていた。

 だって猫ちゃん先生、見た目にこだわらないんだもの。タイピンだけでも十分な進歩だろうと。

 自分も洒落っ気はないくせに、髪も伸ばせば美人になるだろうにさ、本当教師命なんだからと余計な事を考えていた。


 ビルとビルの間。顔の隠れたいかにもな連中。

 そんなものが、目に留まった。


 そう言えばこのショッピングモールの先って、敵地に近いんだっけ。ふとそんなものの、何処かで聞きかじった他人事を思い出した。

 血なんか転んだ時と、包丁で切った時しかお目にかかれないような育ちだから、少し街を出れば死ぬようなそんな世界のどっかの話なんて、自覚する生き方してなかったから。


 まあ何が言いたいかと言うと、そのいかにもな連中、敵国の奴らで。


 其奴らの目先に、猫ちゃん先生がいて。ああこれ、諸共市民皆殺しの感じかと察したんだ、どっか人事に。

 同じ身長くらいの猫ちゃん先生と親友の、肩と服を引っ掴んで階段を下ろうとした。

 そう、した(••)んだ。


 トコトコトコトコトコトコ───ブーツ特有の籠もった音。ズガガガガガ───、すっげえ音。…ああ、銃か。


 ちょ、えぇ?

 なに!?


 二人を突き飛ばす。特に、近い場所に居た、猫ちゃん先生を。


 乱暴でごめんな、ちょっと今さっきので手加減とか出来ないわ。受け身取れてれば良いんだけれど。まじごめん。

 咄嗟に引っ張る力を、ただ押す力にしたせいでこんなやり方になってしまった。申し訳ないなぁ。

 おい親友よ。そんな苦虫かっ潰したような顔すんなや。確かに眼鏡は落としちまったし、形振り構わな過ぎてみっともないかもしんないけどさ。これでも精一杯やったんだぞこら。

 一応猫ちゃん先生女だからさ、早く起こして逃がしてやってよ。男なんだからさ。今助けてやれんのお前だけなんだからよ。

 ほら。行け、行けよおら。言わねぇと解んねえ付き合いじゃねぇだろ。何年悪友やってっと思ってんだ。


 鉄パイプに似た匂い。左肩と右脇腹から流れるモノのまぁまぁ何と赤いこと。

 乱射された弾はこちらにも向かって来て、それがおれに当たっただけ。

 充分な致命傷。べしゃりと力の抜けた身体。ぶつけたはずの、痛みの無い肘。

 熱い。何だよ此処。クーラー効いてないな。

 あ、違うわ。寒い。やっぱ寒い。やっと冷房効いたのか。でも寒くし過ぎだって。調整しろよ。…とか、馬鹿な現実逃避何だろう、なんて思って。自虐がぴっとりとくっついて離れない。口元も、上がらないけども、行っちまえって、気力だけが残った。

 ─逃げろ。あっち行ってろ。イイから。…、寒いなあ、寒い。寒い。寒い──ああ、イタい。

 お前らは生きてろよ。おれはイイけど。逃げ切って何時もの日常に戻って、また課題にでも悩んでるよ。

 おれはイイ。おれはイイから。別に。別に。べつに、いい。

 平気。へーき。いいんだ。イイ。


 いや、やっぱ無し。駄目、だめ。おれ、おれは、

 まだ、まだおれ、まだ、おれは、

 死にたく─────……………







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