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ウッドペッカー•ライフシフト  作者: 三ツ目くりっく
一章 もしも死んだら、と前置きして…。
18/31

18 お前だろ。下

短めかつ、誰にも知られないような敗北感。




 「やめなさいッ!」

───桃色が、不完全な黒を弾き飛ばした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 パァアンッ────風圧は新を二•三歩下がらせる。

 甲高い衝突音。黒を弾き飛ばす、否、完全に打ち消した、打ち消していた。

 右脇腹の地面に添えられていた左手と、石を握った右手のまま、収也は動けずに停止する。

 

 疑問だ。何故彼女は叫んだのだろう。

 何故自分に背を向けているのだろう。

 あの打ち消せるような魔法は、いつ。

 あの魔法は何だろう。

 見たことは、あっただろうか。

 人に向けて、危ないんじゃないだろうか。

 迷わなかったのだろうか。

 

 そんな疑問が、浮かんでは、消えた。思い浮かび、熟考には至らず、何処かに消える。

 何よりも頭を真っ白に、

 怒りも負けん気も反撃心をも真っ白にした、彼女の行動。

 

 「みう(・・)?」

 

 未宇花を呼んだ時の感情を、収也は知らない。

 

 未宇花は言った。

 収也がぴしゃりと固まるには、十分な威力を持っていた。


 「しゅうをいじめるなんて許さない!それも魔法で!!よわいものイジメはさいていよ!刻々新!!」

 

 「みうかさんっ!?ち、ちがいます!!そいつが───」


 「いいわけはむようです!!」


 弁明しようと慌てる新。

 毅然とした態度を変えない未宇花。

 何の悪夢だろうと、嫌な予感が背を這う収也。


 気高さが大気に澄み渡るようで。

 有象無象が霞んでいくようで。

 彼女に備わったもの。それが決して、自らに良い方にはいかないんだろう予感が気にいらない。受け入れ難い。

 待って。まって、みう。ちがう、違う。

 

 話はどんどん飛躍していく。跳ね返されていく新の言葉。未宇花は同時に、収也の言葉も跳ね返す。取り合わない。

 耳を貸さない、ではないのだ。気持ちを代弁出来ていると、信じて疑っていないだけで。

 それがどう影響していくのか、こちら側を間違って認識しているだけで。

 真っ直ぐ、断罪の如く堂々と、きっぱりと。

 

 ぐわんぐわんと視界が揺れる。風一つないその世界で、ぴくりとも動いていないはずなのにぐにゃりと歪む。

 熱い何かが頭を巡る。それは、感情に直結しえない何かの激流体。外面は寧ろ凍ったように震えている。(まぶた)は重く、野暮ったい。額は凍えていた。

 指先の感覚。解らない。何か持っていたはずだ。何を。……そう、石。ただやられて堪るか、返り討ちにしてやると、しっかり握りしめたはず。どっちの?………そう、そうだ、だから違うんだと上げかけた声は霧散する。

 

 新を追い返してしまった後のこと。腕を広げ、逆らえない感の才能を開花させた少女。漸く見えた彼女の背中。

 胸を、胸に、爪を立てたような違和感が奔った。

 

 「しゅうっ!」


 「悪いイジメっ子はわたしが追いはらっちゃうから!しゅうは気にしないでね!」


 手を差し出す未宇花。

 花が咲くよりも、可愛い笑顔。

 確固たる自信を持っている、少女の笑顔。

 …ふと、聖女に救われた平民のようだという感想を持った。

 

 その手を、もう手遅れになってしまったという合図に思いながら、打ち消されるんだろうなという諦念のままに取ってしまう。

 やってしまった。

 諦め悪く、収也は口を開く。それじゃあ、何も無くなってしまうと焦燥に駆られる。


 「…ね、ねえ、みう」

 「だいじょうぶだよ!ぜったいたすけてあげるから!これからも、ぜったい!わたしが守るよ!」


 眩しい。綺麗。

 明るくて、前向き。人を救える何か。自信。

 尊い、何か。

 こういう人が誰かを救えるんだろうと、そう思う。

 なんせ、真っ直ぐだから。


 だから、こう言った。


 「………うん、みうはすごいね」


 


 収也は思った。何度か考えて、やはり救いは彼女の特許であると、そういう人なのだと認識した。

 だか、とは収也は言えなかった。思っていても言えず終いだった。

────嫌いだ。

 あの感じは嫌い何だと、自らで飲み下す。

 

 胸を、抉ったような違和感が奔った。

 

 




幼少編は、これを絶対書くつもりでいた気がします。決定打には届かないけど、一因にはなる感じです。


あと、教養が無駄に、余計なとこで何かに発揮される話も、割とありそうじゃないですかね?子どもだからこそ、歯止めが効かない感じをイメージしているんですが、ないでしょうかね?

────────


書き溜めのなかの、十分の八の部分ですコレ。一章の。

「8、不穏。」て書いてありました。まあ、不穏だわな。

すっきりする話にはならないです。幼少編後しばらくは、多分、恐らく。


早く開き直りたい。




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