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ウッドペッカー•ライフシフト  作者: 三ツ目くりっく
一章 もしも死んだら、と前置きして…。
16/31

16 忘却的ごめんなさい。③

不定期更新すぎぃ………。



“たぶん、こんな感じ。”



 あ~~~う~~、ああぁ~~………。


 もごもごと空気がこぼれる。見てくれるな、聞いてくれるなと口を序で出そうになって、それもまた恥ずかしいだけだと口篭もる。

 ガンッと殴られたような振動に、痛みではないだろうじんじん熱したような感覚。

 何やってんだよ……。思わず呻いた。

 


───ボフンッ、とすっとすっとすっ…………。

 粉の袋が破けた音と、聴き覚えのある反復音。

 予想もつくし、原因も分かる。何となしに収也は顔を上げていった。

 思いの外自分の近場に転がった赤茶けたボール。自身の持っていたボールより黒ずんでいるのは爆発音の影響か。中位属性を何時もの如く暴発させた同級生がいるであろう方向を見上げる。

 すぐ正面に、そいつの顔。

 「うわっ!?」

 ザズッ、手をついたため尻餅はつかなかったが、砂利が痛い。少し腹立つ。じゃなく………。

 

 練太は頭を下げた。

 “腹が立った”辺りには行動に移していた。

 ぺこり。効果音ならこれが鳴るだろう腕のそろったお辞儀に面食らっていた。


 疑問が全身を固め、痛みも何処かふっとんで、思考もふっとんで。


 「な……なに?」

 練太に問う。

───ぱっ、と顔を上げ、言った。「ごめん」


 飛び上がって足で立つ。砂がとか、頭から抜け落ちていった。

 目をこれでもかと見開いて収也は言う。


 「何が?」

 「きのうの」

 「うん」

 「いろいろ」

 「うん」

 「やっちゃったから」

 「うん」

 「ごめん」

 

 「うん」 

 

 不思議に思った。

 不可思議に思う。我思う。

 

 猫目が沈む。下を向きたい訳でなく、何処も見ていない目で下を向く。何も考えていない。空っぽだった。探して、それ以外に、出てこなかった。

 「うん」───目を、上げた。

 色が増えたような。手を握る。自分の拳。何故か、忘れモノを思い出した感覚がした。


 ほっとした。


 「あー………やる?」

 「はーい(^O^)/!やってこー!」

 ケラケラと鳥のような笑い方。がなり声に似ている。

 練太を例える動物は絶対、鳥じゃないけど。

 朝鳥よりは喧しくないし、手紙鳥ほど落ち着きもないとか、失礼な事を考える。

 顔に出てたまるかと、毛ほどにも出したりしないけども。


 ボールを拾う。

 「れんたー、どのくらいー…、できるー?」

 「んー?……、ばーん!!くらい?」

 「わかんないよっ!」

 「あははははは!!」

 「うっさい」

 当てにならん。

 やり方、やり方と口にしたがら上に投げる。放る、の方が正しい。ぽすっ。そのまま落ちて手に納まる。

 「まず、うかさなきゃ、だ」

 「おれ浮くまえにどっかいく」

 「がまんとかしなよ」

 「どうやって?」

 

 「え?」───何?

 どう言う事?

 疑問が飛ぶ。思わず凝視した練太は、躍起になったのか、

「だから、うりゃっ!でぽーんっていって、うおりゃあッ!でぽぽーんっていって、どうすりゃいっかなって、ソイッてやったら、ぽーんっていっちゃうんだって」

等々言う。

 

 「うりゃあ?ぽーん???」

 「そ。ぽーんって」

 「何それ」


 「だから、飛んでくんだって!」

 「何で?」

 「だから!!」



 ほぉっ……!でもうらぁっ!でもぽーんなの!何でぇ??だからぁ!!!ちゃんと言って??言 っ て る !!!ごめん。

 全身を持って繰り返して。練太は大きな葉をビリビリ破きそうな顔で、それでも放り出そうとはしない。思い出せなくて石を蹴りたくなるような感情。

 そんな様子を、収也は知っている気がした。

 自分に向かい、練太より………練太より?

 誰。

 「で!!こう、わーっと!!!で、う、うおお、あああ???」

 「ちょっとまってわかんない……」

 「ああ!もう!なんで!!!???」

 「ごめん…」

 「~~~~~~ッ!!!」

 皺だらけの額で、不機嫌さをどうにも出来ず歯を噛みしめる練太の、ぎっちり握りしめた掌を見て、爪で破けそうだと思ったのだ。そう見えた。

 それで、どことなくじんわりと、不安感のような(よど)みで自覚する。

 “誰かの傷”。

 えぐられた。えぐらるより嫌な感覚。

 見たくない。

 

 「…………手…」

 

 練太はああでもないこうでもないと呻きながら、声は聞き逃さず反応する。

 「うううううぅ………ぅえ?え、て?………あ、」

 首を曲げながら手を開く。確かに痛いかもと、(さす)りながらぶつぶつと続ける。

 それを、見ていた。

 

 安心感。巣くう、恐怖感。

 例えば、

───誰かの腕を、思いっきり何かの拍子で引っ掻いてしまったとして。ぐぎゅ。爪が。思いの(ほか)食い込んで皮膚を、皮膚の感触をリアルに感じてしまったとして。柔らかい、何かが爪に挟まって、誰かの腕には爪の跡。赤が滲んで、岩から水が湧き出るようにゆったりと溢れて、落ちて。掌には、指には、ゆびさきには、赤が、真っ赤っ赤で、赤くて、赤い、赤が、あか、赤赤赤赤赤赤赤、アカ、赤、アカアカアカアカアカ─────────




 「───rとおもうんだ………って、ちょっと聞いてる?なぁ?」


「え?」

 

 練太。同級生。ボール。手。

 練太は訝しげに口を開─────

 「何でもない」

 「ん?そう?か?」

 「うん」

 「あっそ。で?」

 やろうぜー。練太がとりあえずと、ボールを翳す。


 「あー………今日はもう出来ない…、かな」

 口を序で出てきただけ。


 「え?」

 「上上」

 それが、少し間が良かっただけ。

 午後の予定が終わる時間。四刻を回る帰宅時間。

 陽は沈まない。まだ沈まない。

 でも、れっきとした帰宅時間。 

 「そろそろまなb──先生よびにくる、んじゃないかな…」


 「皆!!」

 言った通り。少し得意気に。

 学びな先生の、意外と通る声。


 「……あー、ね?」

 「忘れてたー!」

 やっちゃったねー!練太はケラケラと笑った。

 何やってんのー。収也もつられた。

 

 通りの中心にある長方形。木で囲っただけの柱時計は四刻過ぎだと知らせていた。

 古ぼけている。

 あ、そうだ。『─────』。

 一緒に消してほしい。

 

 「………まさかねー…………」

───曲がってないように、見せてほしい。






ぶっちゃけキャッチボール。


ぶり返す。誤魔化している。しーらんぺ。何でもないって、ほんとほんと。


 そんな感じ。

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