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ウッドペッカー•ライフシフト  作者: 三ツ目くりっく
一章 もしも死んだら、と前置きして…。
15/31

15 忘却的ごめんなさい。②



 一応気まずさはある。在るには、在るのだ。

 それ以上に練太と言う人物に呆れてしまっただけで。随分な脱力感に末恐ろしささえ感じる。

 何より、ぶれない。 


 「しゅう?」

 未宇花がボールを抱えている。

 「何?」そう言って笑う。

 「どうしかしたの?きのう」

 「ん?なんでもないよ」

 「でも」

 「なんでもない」


 「変だよしゅう。……ケガいっぱい」

 「ちょっところんだだけ」

 「そんなケガする?」


 「うん、する」

 「そう?」

 「うん」



 「……見て見て!わたしできたんだよ!」

 ふわあっ───……掌から離れていくボール。受け皿のように手は下に構えてあるし、上下にぶれているけれども、ちゃんと、浮いていた。

 放り合うにはまだまだ足りない。

 「…すごいじゃん!みうすごい!」

 それでも、出来ている。

 それこそが凄いし、嬉しいことだ。

 「えへへー、ありがとしゅう!」

 得意気に胸を張る真っ直ぐな少女に、収也は少し焦りながら口を開く。

 「っあ、ぼくも練習、するね」

 「あ、うん!がんばって!」

 わたし先生に見せてくるー!───走って行く様子に胸をなで下ろし、溜息と共に見送る。自分のボールを抱えながら。


 引っ掻いてしまいたい気持ちに蓋をする。ボールに目を向けた。消えてしまう訳はないが、切り替えた。その筈だ。



 全く“無い”人、逆に“多すぎる”人。在って、すぐ使える人とか、下手な人とか。

 色々いる。そんな感じを、思い出す。


 練太は凄く量があり、使うのが下手。

 それが才能なのか、やろうとしないだけなのか、扱えないほどなのか。器用なくせにやらない?だけなのか。

 遣りようは、在るんだろう。


 未宇花は量も扱い方も、こなせる。色んなモノが比例して上がっていく、大物になる……多分。

 恵まれる、報われるんだろう。


 明乃は量が多いとは言えない。それを、針のような、ピンと研ぎ澄ませて。

 違いが出る。そう思う。



 収也は、自分はどうだと考える。

 不思議なことにどれを考えても不正解な気がしてくるから困っている。才能とか、無い気もするし、ゼロな訳は無いのだが。

 出来ないとは、違うらしいが。

 足りない、とは解る。魔力、才能、気持ちの持ち様等々……、どれかは分からない。

 ならどうしよう。

 がんばる、そう、がんばるしかないのだ。それ以外を、よく知らない。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 無属性の魔法は物を浮かせ、移動運動を引き起こす。

 目に見えない精神的影響以外の現象を引き起こすモノ。モノに影響を与える、他属性に当て嵌まらないモノを総じて無属性と括っていた。

 これが転移や、空気の壁、別空間等になると、上位属性の空間属性になる、らしい。



 属性は元々生まれ持った相性が個々にあると言う。それは一点特化も、全種に精通するのも、殆ど使えないと言うのも勿論あった。


 収也は、火と相性が良い、それは同じくらい、才能があるという事でもある。まだ使った事はない。判明したのは、割と最近だったからだ。

 少なくとも木の村では、“園”に入り適性を視てもらう。それまでに知る事は難しい。一重に環境と、必要なモノが用意出来ない事にある。

 家によって、やはりと言うべきか専門の、そういう役職もあるらしいが、まあそれはそれ。幼馴染み二人がそれに当て嵌まるとしてもまた、それはそれ、なのだ。


 無属性は一般的に、日常的に使うことが多いものの、練習は必要な訳で。

 帰って来た母が楽だからと多荷物を浮遊させながら手軽にさらっと運んでいるのも、小さい頃からの繰り返し、反復練習にある訳で。

 何をどう言っても、兎に角やれ、としか落とし所がない訳で。


 「……めんどくさいなぁ」

 蹴っ飛ばした方が早いんじゃないかなぁ、と割と本末転倒なことを思う。赤いピンの子が男の子に混じって走るさまを見ながら、あの子独走してるしとも考えるのだ。はっや。

 沈みがち。ああ、意外と落ち込んでいるのかもしれない。

 めんどくさい。

 

 手を(かざ)す。溜息混じりに。

───浮かべ。何なら真上にポーンと。もしくはゴムみたいに跳ねてしまって良い。ポーンポーン。

 感覚……想像……浮遊……。

 ……………………うん。

 脱力感が抜け切らない。今一度理解した所で、収也は思いっきり力を加えた。言うまでもなく、魔力の塊を、そのまま。

 ぐわん───力みすぎて肩を傷めるような突っぱった痛みと共に、ボールは跳ね返った。自然の摂理で。


───収也の顔面目掛けて。


 力の加え方が地面に向いていたのもあるし、加減も何も、無かったやり方が悪かったのもあるだろう。力の掛かり方が収也の方に跳ね返って、叩きつける形になったのも、加えて投げやりだったのも不意を突かれた。

 よく考えずにやったため、考えもつかなかったと言うのもある。

 「グエッ」

 見事な顔面直撃。

 ボールは収也の身長を優に超し、弧を描いて離れていく。ぽすっぽすと地面を跳ねるさまが一相微妙さを醸し出していた。

 「~~~~ッ!」

 小さな手で顔面を覆い、(うずくま)った収也の顔は赤い。

 それがボールの攻撃力によるものか、羞恥心によるものかは察して然るべきである。

 

 わああああぁやっちゃっま、うわああああッ!

 

 生殺しのようだった。羞恥心で死ねる気がした。何処の誰の言葉かは知らないが、全力で同意出来る気がした。






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