初めてのお仕事
俺はハルアスに足を踏み入れた。
おぉーこれはなかなか。
街はかなり大き勝った。
さすが王都だ。
ハルアスは三つの区画に分けられている。
まず一番外回りの区画が平民。
真ん中が貴族。
中心が王族だ。
外側の平民の区画は読んで字のごとく平民が暮らす場所だ。
ここには平民の家、飲食店、屋台宿、ギルドなど大体のものは揃っている。
真ん中は貴族が住んでいてそこらじゅうに屋敷が建てられているらしい。
いるらしいと言うのはハルアスはかなりの面積を有しているので今いる場所からでは見ることが出来ないからだ。
最後は王族やその血縁者が住んでいる場所。
王宮とか貴族の屋敷よりもさらに一回り大きい屋敷があるらしい。
当然貴族区画よりも内側にあり距離が遠いため目視は出来ない。
まっ俺は関わることが無いだろうから関係無いと思うけどね。
っと早くギルドに行ってギルドカードを発行せねば。
ついでにいくつかクエストを受けて金を稼がないとな。
正直今の有り金だけじゃ少し心元と無い。
ギルドは平民の区画の中で突出して高いので問題なく辿り着くことができた。
外観は石造りで少し大きめのビルって感じかなぁ。
中に入ると前方奥部には受付カウンター。
一つのカウンターにつき一人の受付嬢が座っており冒険者と思わしき人たちの対応に追われている。
続いてこちらから見てカウンター右手にあるのは上へと続く階段。
その手前には冒険者が雑談や飲食を行うであろう机と椅子だけが置かれた簡素なスペース。
左手には依頼やクエストなどが貼ってある掲示板。
うーむ、どうすればいいか分かんないしとりあえず受付で聞いてますかね。
「あのすみません、冒険者登録したいんですけど」
受付嬢は顔立ちが整っていて皆世間一般的に見て美人と言っていいだろうことが想像できた。
ほかのカウンターも皆顔立ちが整っていた。
ギルドの顔だからね美人を雇ったんだろうな。
俺は一番左のカウンターで登録することにした。
が気に入ったとかでは断じてない。
本当だからな!
「はい。それではこちらに記入をお願いします」
受付嬢が俺に紙とペンを渡してきた。
紙には個人情報を書き込む欄があった。
内容は名前、年齢、魔法属性、武器、その他諸々だ。
う〜ん、武器はまだ無いし属性も全部使えるからなぁ。
流石に全属性と書くのはまずいだろうし。
「あの、これは全部書かなきゃダメですか?」
「いえ、最低でも名前と年齢だけ書いて頂ければ結構ですよ」
そりゃあ良かった。
俺はお言葉に甘えて名前と年齢だけ書くに留めた。
「これでいいですか?」
受付嬢に紙を手渡すと上から下まで一瞥してから
「はい、確認しました。それではカードを発行しますので少々お待ちください」
そう言って一礼するとカウンターの奥の方に消えっていった。
しばらくするとさっきの受付嬢が戻って来た。
「それではこちらがギルドカードになります。最後に一滴血を垂らして頂ければ登録が完了となります」
なるほど身分証にもなるから個人を証明する為に血が必要なのか。
だがどうやって血を垂らせばいいんだ?俺は何も持っていないぞ。
そう思っていたら受付嬢がカウンターのしたから針を取り出した。
「よろしければこちらをお使いください」
ありがたく使わせて貰おう。
俺は人差し指の先に針を突き刺し出てきた血をカードに垂らした。
一瞬カードが赤く光ったと思ったら元に戻った。
「ありがとうございます。それでは改めてこちらがギルドカードになります。またこちらは身分証としても使えますので身分証の提示要求をされた場合にはこのカードを見せて頂ければ大丈夫な筈です」
「わかりました」
「それでは引き続きギルドの説明をさせて頂こうかと思いますがどうなさいますか?」
これは聞いといた方がいいよね。
「頼んなます」
「畏まりました。それではギルドの仕組みについて説明させていただきます。まず冒険者の皆様にはそれぞれG、F、E、D、C、B、A、Sの八つのランクがあります。最初はGランクから始まります。このランクはクエストをこなす、またはギルドに実力を認められた場合にのみ上昇します。」
「何か上がる時にしなきゃいけないことはあるのか?」
気になったので質問してみる。
「そうですね、GからDまでの間は特に何もありませんがCからSの間はランクが一つ上がる時にギルドからのクエストを受けてもらいます。それを達成するとランクを上げることができます。」
「失敗したりやらなかったりするとどうなるんですか?」
「はい、失敗に関しては特に何もございません。ただまたランクを上げる為の試験を受けるにはクエストを受けでもいく必要があります。やらない場合は半年までなら大丈夫です。しかし半年経つとギルドカード剥奪になりますのでお気をつけください」
俺はうんうんと頷いて分かったことを示す。
それを見た受付嬢は説明を再開した。
「それでは説明の方を再開させていただきます。クエストの方は左手に見える掲示板に貼ってある紙をこちらまで持ってきて頂けると受けることができます。クエストは自分のランクもしくは自分のランクの上下一つまで受けることがきますで。また達成状況はギルドカードに表示されますので達成されましたらお見せください。それとたまにですがギルドが緊急クエストを発令する場合がございます。こちらはほぼ強制招集となりますのでご了承ください。以上で説明は終了となりますが何か質問はございますか?」
おそらく大丈夫かな。分かんないことがあったらまた聞けばいいし。
「たぶん大丈夫だと思います」
「畏まりました。それではお気をつけて」
よし、早速クエストを受けてみよう。
俺は掲示板の方に歩み寄って何かいいクエストは無いかと探した。
これにしようかな。
しばらく掲示板を見て俺が受けられるクエストを見つけた。
クエスト内容はゴブリン十体の討伐だ。
報酬は一万ゴルド。
この世界の通貨はゴルドだ。
相場は元いた世界と同じくらい。
まぁ初クエストにしては妥当だよね。
そう思い掲示板からクエストを剥がしてカウンターまで持って行った。
俺はクエストを受ける為に先ほどのカウンターに足を運んだ。
決して意図があるわけじゃないぞ。
本当だからな。
「これをお願いします」
「畏まりました。ギルドカードをお貸し頂けますか?」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
受付嬢はカードを何かの機械に通してからカードを返した。
「これでクエストの受諾が完了しました。行ってらっしゃいませ」
よし、行くか。
武器が欲しいけど金ないし魔法で何とかなるから大丈夫だろ。
ちなみに武器や防具、回復アイテムはは冒険者ギルドの上の階に売っているらしい。
関所までやって来た。
ギルドカード見せなきゃ行けないんだっけ?
「あのーこれ身分証です」
するとさっきも俺に対応してくれた門兵がこちらに近づいて来た。
「あっさっきの人ですね。どれどれ拝見します――はい、大丈夫です」
はっや!別に早いに越したことはないないからいいんだけどさ。
「それではこちらお返しします」
返してもらった。
「それじゃここ通りますね」
すると門兵が驚愕に目を見張って咳き込んだ。
「ゲホッゲホッ。な、何言ってんですか!?」
えっ?何ってなに?
「そんな格好でクエスト受けに行くんですか!?」
あーその事ね。
今俺は鎧やらローブやらの冒険者が身につけるであろう装備を何一つ身につけていない。
分かり易く言うと私服なのだ。
だってお金無かったんだもん。
仕方ないじゃん。
「まっ大丈夫ですよ。魔法もありますし」
それにクエストって言ってもゴブリンだよ。
正直負ける気がしないんですけど。
「うーん。そこまで言うなら止めはしないけど、まっせいぜい死ぬなよ」
「わかりましたー」
俺は何とも気の抜けた返事を返して門をくぐった。
さてと行きますか。
ゴブリンは関所を出てからまっすぐ行った所にある森に普通にいるらしい。
なので俺はとくに急ぐこともなく歩いてゆっくりと向かった。
森に着くと早速一体のゴブリンに遭遇した。
ゴブリンもこちらに気づいたのか臨戦体制に入った。
んー何の魔法を使おか。
普通に殺ると完全にオーバーキルになっちゃうし。
そんなことを考えていたらゴブリンが飛びかかって来た。
えっもう来たの?早いよ、まだ何使うか決めてないのに。
仕方ない殴ろう。
向かって来るゴブリン。
構える俺。
向かってくるゴブリン。
顔を殴りつける俺。
爆砕するゴブリン。
俺が殴ると風船が割れるかのようにゴブリンの顔が弾け飛んだ。
あたりに血の雨が降り注ぐ。
汚い。もう絶対殴らない。
そう心に決めて無属性魔法【クリーン】を使う。
あっという間に返り血が落ちて元の清潔な私服に戻る。
俺は次なる獲物を求めて森の奥へと入っていった。
しばらく歩くと少し開けた場所に出た。
すると一斉にこちらを睨みつける十八の視線。
そこにはゴブリンが九体いた。
あ、これでクエスト達成じゃん。
ラッキー。
すると九体のゴブリンが一斉に飛びかかって来た。
それを俺は横目で見て手を前に翳す。
それだけで地面から九つの巨大な針が突き出し今まさに襲いかかって来ていたゴブリン全てを瞬時に貫いた。
はいしゅうりょーう。
しかも今回は極細の針で貫いたので血も全然流れない。
土属性マジで優秀。
俺が魔法を解くとドサリと音を立ててゴブリンが地面に落ちた。
ギルドカードを確認するとクエスト達成の文字が浮かび上がっている。
帰るか。
そう思い踵を返そうとした瞬間ガサゴソと音がした。
音がした方を向くとそこには一人の冒険者?らしき男がいた。
「ちょっと待ちな小僧」
男は言い放った。




