親神離れしました
総合評価10ポイント達成です。ありがとうございます。
俺はこの前十六歳の誕生日を迎えた。
驚くことに容姿は元の世界にいた時と同じだった。
正直これは助かった。容姿が違うとなんか気持ち悪いしね。
若干性格が変わったけどまあいいだろう。
今では魔力の制御も完璧になりかなり手加減ができるようになった。
今日俺は魔力の向上と制御の練習のために魔王城の敷地にある訓練所に来ている。
訓練所はドーム方になっていて城までとはいかないもののかなりの大きさを有している。
これについては俺が修復を手伝っているときに
「どっか派手に練習できるとこないかなぁ」
と呟いていたところを魔王の娘さんに聞かれ、それが魔王に伝わり
「じゃあ訓練所使ってええよ」
と軽いノリで使用許可が降りた。
魔王そんな軽くていいのかよ。
でも使わせてくれると言うならばありがたい。遠慮はしないぞ!
ブッバァァン
やってしまった......。
全壊させてしまった。
この事件が俺に本気で手加減の重要さを教えてくれた。
そんなこともあったのでさっきも言ったとおり手加減という名の魔力制御は完璧だ。
俺が今日の訓練を終えて一息ついていると外へと繋がる扉から少女走り込んできた。
彼女の名前はエルミル=レイゼン。
魔王サージクト=レイゼンの一人娘である。
どこか幼さの残る顔立ちと腰まで伸びる銀髪。スタイル抜群でそこから伸びる四肢もスラリとして、美人というよりは可愛いという言葉が似合う少女だ。
傍から見れば人間そのものだが列記とした魔族だ。
余程急いで来たのか肩で息をしながら呼吸を整えている。
顔には少し汗も滲んでいた。
「あ、あのユーマさん。これタオルです」
彼女はいつも俺が訓練を終える時間になるとタオルを持って来てくれる。
前に「無理して持ってこなくてもいいよ」と言ったら「いえいえ。これは私が好きでやっていることですから」と言って切り替えされてしまった。
なので俺はこの善意に甘えることにしたのだ。
「うん。いつもありがとね」
「そんな。お礼なんていいんですよ」
エルミルが笑顔を振り撒きながら「いえいえ」とかぶりを振る。
もらったタオルで顔などをを拭きながら俺とエルミルは他愛のない話で盛り上がった。
しばらくそうしていたら時間が結構経ったので帰ることにした。
荷物は【時空庫】という無属性の高等魔法で時空の狭間にしまってあるので帰ると言ってもやることはそんなにない。
「それじゃぁ俺はそろそろ帰るよ。またねエルミル」
「はい、またいつでも来てくださいね」
そう言ってエルミルは城門まで送ってくれた。
その後俺が見えなくなるまで手を振ってくれた。
なんていい子なんだろうか。
魔王城のある山の頂上から俺の住んでる家までの帰路では特に何も起こらなかった。
普段なら低級の魔物やらが出てきて片っ端から木っ端微塵に粉砕してやってるんだけどね。
しばらく歩いていると三十七代目我が家が見えてきた。
一歳の頃に全焼させてからも度々家を破壊してしまうことがあったので今ではそれなりに大きく頑丈な家となってしまった。
俺は家の扉に手をかけて開き中に入った。
「ただいま――」
「ユーマよ。話がある」
えっ何してんの?
ここ玄関だよ。もしかしてずっとそうしてたの?
目の前には若干俯きながら正座で座り込むザリスさんがいた。
なんだその神妙な面立ちは。
何か俺に重要な話でもあると言うのか?
てか後でザリさんの足つついてやろう。
「それで、話って?」
そんなことを考えながらも俺は続きを促す。
ザリスさんを正座させたまま。
「ああ。じゃがまず中に入ろうか」
そう言って立ち上がろうとするザリスさんを手で制して
「大事な話なら早くしないと」
言い放つ。
ザリスさんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かばせながらこちらを見上げている。
相当足が限界なんだろうな。
だがザリスさんは諦めたのかそのまま俺に話始めた。
「実はわし、天界に帰らなくいけなくなった」
はっ?えっ 天界?
「どういうこと?」
俺は震えそうな声を必死に抑えて恐る恐る聞いた。
「実は今度天界で大事な会議があってな。それに出席しなきゃならないんだよ。それで一度天界に帰ると長い間こっちに戻って来れなくなるからさ」
ザリスさんは悲痛な表情で訥々と話す。
「それで、いつ帰るの?」
「うん。今日の夜」
・・・は?
「はぁぁあああ? んでそんなこともっと前から言わねぇんだよ!」
俺はザリスさんに食ってかかり前後に揺さぶった。
「だ、だって、言おうとしたんだけどなかなか切り出せなかったんだもん」
「おっさんが“だもん”とか言ってんじゃねぇよ!気色悪いわ!」
「だぁれがおっさんだとぉお? それに気色悪くないわ!」
「おっさんだろうが!自分の年考えろやボケェ!」
「んだとコルァア」
「あぁ? やんのか?」
「上等だよ手加減しねぇからな」
そう言ってザリスさんは俺を振りほどき立ち上がる。
ピキィッ――――
「ぬぉわぁぁあああ」
しかし立ち上がったことにより足の痺れが激しく表面化したザリスさんは床の上をのたうち回り始めた。
俺はそれを見たと思うが早いかザリスさんの足をひたすら蹴りつけた。
俺たちはおそらく二人で過ごせるであろう最後のひとときを心ゆくまで堪能した。
★
陽が沈み夜の帳が降りて来た。外は星の輝きだけがあたりを照らしている。
その中で俺はザリスさんの天界送還の時を待っていた。
「ザリスさん。その、今まで悪かったな、いろいろと」
俺は少し寂しいことを悟らせまいと声を出した。
「なぁに、そこまでの事はことはやっとらんよ」
「そんなことないよ。一人だった俺をここまで育ててくれたし、魔法だって教えてくれた」
「結局最後にはお前に勝てたことがなかったけどな」
ザリスさんが不満そうに顔を歪ませ俺に吐露する。しかし
「ユーマ。強くなったな」
次には微笑むように称賛を送ってくれた。
その顔と言葉で俺のなかでピンと張っていた糸が切れた。
「俺は......あなたに出会えて......あなたに拾ってもらえて......あなたと一緒に暮らせて......本当に良かった」
「ああ。わしもだ」
二人の間にこれ以上の言葉は不要とばかりに頷く。
「だから......」
そう、これが最後だから。
「あなたに......伝えたいことが......ある」
今一度心の底から精一杯気持ちを込めて
「本当にありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
瞬間ザリスさんの足元に魔法陣が浮かび上がりグルグルと回り始める。
徐々にザリスさんの体が薄れていく。
そして何かが弾けると同時に夜空を光の柱が貫いた。
気がつけば目の前には微かに光り輝く粒子が漂ようのみとなっていた。
「あ......あぁ」
やばい。
「あぁ......うぅ」
もうダメだ。
「うぁぁああああああわ」
そして俺の涙腺は崩壊した。
結局その日は一晩中子供のように泣きじゃくった。
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