緊急クエスト
ウゥゥゥゥゥン
サイレンの音が鳴り響く。
誰も何も発さない。
ただただ場違いなサイレンの音だけが聞こえる。
体感でおよそ10秒ほど鳴ったあと突然鳴り止んだ。
続いてアナウンス。
「ハルアス内の冒険者に緊急クエストを発令します。」
『緊急クエスト』
本来のクエストとは異なり異常事態のみギルドか緊急で発令するクエストだ。
緊急クエストなんてものは滅多に発令されるものではない。
クエスト内容は殆どが討伐のクエストだ。
モンスターはF〜Sまでのランクがあるがごく稀にSランクよりも強い種、SS、SSSのランクが出現する場合がある。
この様な時に緊急クエストが発令されることになっている。
今この場にいる人は全員が混乱していた。
緊急クエストは普通のクエストよりも格段に死亡率があがる。
他の冒険者が混乱するのも無理はないだろう。
俺も他の人までとはいかないが若干戸惑いはあった。
またアナウンス。
「冒険者のみなさんはギルド職員の指示に従って動いてください」
俺達は言われた通りに指示に従った。
そして今はハルアスの外に来ている。
辺りにには防具に身を包んだ冒険者が大量はいる。
ハルアス内にいるほぼ全ての冒険者がいるだろう。
俺はいつも通り私服だ。
緊急クエストとはそういうものなのだ。
クエスト内容はこうだ。
大量の魔物が押し寄せて来てるから全員で殺しちゃおう。
要するに殲滅すればいい。
今はおよそ5km先にいて、今もなお進軍中とのことだ。
素材は倒した人のものなので腕に覚えのある冒険者は一足先に魔物の討伐に向かった。
さぁ、俺も殲滅と行こうか。
そう思い走り出そうとすると後ろから声をかけられた。
「おい待て、お前が行っても死ぬだけだぞ」
「は?」
俺は一瞬呆けてしまった。
声をかけてきた男は全身を鎧で包んでいて完全にパワー型だ。
「魔物は最低でもCランクなんだぞ。中にはSランクやSSランクもちらほら混ざっているらしい。だからお前みたいな奴じゃ無理だ。大人しくここで待っていろ」
ご忠告どうもありがとう。
でも
「別に大丈夫だから」
俺は何でもないように言い放つ。
「は?」
今度は男が呆ける番だった。
「いや無理だからなお前みたいな奴じゃ!死にたいのか!?」
「うるさいなぁ......大丈夫ってんだろ。怖いならお前が来なきゃいいだけだろ」
「なっ!」
男は何も言い返せない。
図星か。
「それじゃ、俺は行くから」
そう言って足を踏み出した。
「待て!」
「なんだよ、しつこいな......」
男は引きつった顔を必死に動かし何か伝えて来る。
「俺も連れてけ! お前みたいな新人が1人じゃ心配だからな」
「無理するなよ死にたくないんだろ」
「う、うるさい!いいから連れてけ!」
「別にいいが足は引っ張るなよ」
「こっちの台詞だ! 俺はお前よりもランクは上なんだぞ!」
「あっそ」
もういいよ。
俺達は魔物に向かって走った。
「そう言えば自己紹介してなかったなゲイルだ。よろしくな」
男はゲイルと言うらしい。
俺がまだ本気を出して走ってないとはいえ結構なスピードを出しているのだがついてきているので本当にランクが高いのだろう。
「興味無い」
俺は素っ気なく返しただけだが。
「お前こっちが名乗ったんだから名乗るのが筋ってもんだろ」
ゲイルは青筋を浮かべて反論してきた。
「ユーマだ」
「そうかユーマか! よろしくな」
ゲイルの顔は防具で覆われている為確認できないがきっと笑っているのだろう。
「うるさい。黙れ」
俺は冷酷に返すのみだが。
「うぅ......」
ゲイルは尻込みしてしまった。
「おい前を見ろ。第一波が来るぞ」
ゲイルも俺の声で前を見てその数の多さに戸惑いを顕にした。
「あの数ばヤバイな。1度戻って援軍を呼んで来よう」
弱気なゲイル。
「阿呆か、突っ込むに決まってんだろ」
強気な俺。
「え、ちょ、ま」
さらに戸惑うゲイル。
突っ込む俺。
魔物の集団が目前に迫る。
少なくとも100はいる。
中には空を飛んでる奴なんかもいる。
別に関係ないけど。
俺はさらに走るスピードをあげて迫る。
剣を作り出すのも面倒臭いので魔法で処理することにした。
魔力を集めて放つ。
すると地面が陥没した。
中には血の湖が出来ておりそこに居た100を超える魔物は一瞬でその命を散らした。
後ろではゲイルが完全に呆気に取られている。
「早く行くぞ」
ゲイルに呼びかける。
「あ、ああ」
俺の声で我に戻ったゲイルは俺と並走しながら聞いてきた。
「おい、さっきの魔法はなんだ! あんなの見たことないぞ!」
「当たり前だ、さっき作ったんだから」
「なっ、作った!?」
「魔力を重力に変えてあいつらを押しつぶしただけだ。以上」
「おま、ちょっと待てや」
「うるさい、次が来てるぞ」
俺たちは更なる敵を求めて走っていく。




