表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/41

霊園にて(2)

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。


「えっ」

「あ」


 豪音と共に男女の背後に、何かが現れる。


2人の背後の墓を踏みつぶした、鳥の下肢を思わせる大きく立派な両脚。

中世の拷問器具を彷彿とさせる大きな胴体。

左右に牙が生え揃う身体は、さながら巨人の口を縦にしたみたいだ。

そして口の内側に収められているのは、醜悪な肉塊と女の上半身。

上半身――白髪を振り乱した老婆は獣のような絶叫をあげ、胴体から伸びた3本の触手を振り向こうと立ち上がった男女に向けて突き出した。


 3本の触手は締まりのない身体2つに巻き付き、ねじ切らんと締め上げる。

まもなく絞られた果実同様に、赤い飛沫がそこかしこに飛び散った。

返り血は老婆――ジャンピング婆さんの全身にかかり、皮膚や肉の隙間に吸い込まれていった。


(何あれ?)


 既知の生態系では括り様がない怪物であった。

轟音が聞こえた時点で霊的視線を戻した道隆が見たのは、墓石の間で狂乱している複数の生物を混ぜたような老婆だった。

道隆は液体となったまま下方に目を配っているが、気配は相変わらずぼんやりとしか掴めない。

やがて老婆の下半身を取り込んでいる肉塊から、黒い泥が吐き出されていく。


 泥は様々な形に変化していく。犬、猫、小鳥などなど。

ここで埋葬された動物霊かと道隆が納得するが早いか、泥の獣達は墓参に訪れていた人々や通行人を目指して駆けていく。

不幸にも捕まった人々は首や腕に噛みつかれ、あるいは顔や足を裂かれた。

しかしそれらを食べることはない。

この動物たちは老婆から供給されるエネルギーのみを受け付ける使い魔であり、実体を持った死霊なのだ。


(面倒臭いけど、行くか)


 これが外部に広まると、騒ぎは一気に拡大する。

人目は気になるが、道隆は対処する事に決めた。

結界を張る時間は、とても工面できそうにない。




 道隆は老婆の頭上で己の肉体を液体から固体に変換。

気配の濃度は一気に増大。むせ返るような心地悪さは、煙草の副流煙によく似ていた。

公園で戦った男では比べ物にならないほどのプレッシャーだ。


 道隆は勢いをつけて踵落としを試みる。

男女を持ち上げる触手の間を通り、老婆の脳天目がけて右足を振り降ろす。

老婆が金槌で打たれた様な衝撃を覚えた直後、その頭部が陥没した。


 着地した道隆は追撃を試みるが、僅かな物音を拾うと背後に跳躍。

まもなく意識を取り戻した老婆は頭部を修復することなく、活動を再開。

掴んでいた死体を捨てると一歩踏み出し、青い怪人に泥の獣を差し向けた。


 道隆は摺り足気味に更に後退。並行して獣達や周囲の雨滴に命令を下す。

獣達は命令を受け付けないが、天は道隆の味方だった。

この時、天白区の降水量が1時間あたり1mmから20㎜にまで一気に上昇。

区内で外出していた人々は非難の言葉を口々に並べながら、急いで建物内に避難していった。


 更に道隆は自分の周囲に降る雨粒をかき集める。

まもなく水球が4つ、5つと出現し、そこから放水が行われる。

鉄すら砕く水の刃によって、獣たちは残らず砕け散った。


(やっぱ、雨天だと違うな)


 その水球の速度、圧力、何もかも晴天時とは違う。

獣の群れを退けた道隆は、雨粒を使って足場を宙に作成。

地を蹴って飛び乗ると、自身の周囲に全長2mほどの杭を4本出現させた。

これは外界にある全ての水、空間を区切り支配する結界術に続く、変身した彼が持つ第三の武器であった。


 4本は音に迫る速度で老婆に迫り、瞬き程の時間を置かずに命中。

発射したうちの半分は触手によって叩き落とされたが、勢いは健在。

2本は敷石を吹き飛ばし、地面を抉る。

その片方は道隆が止めるより早く、霊園を突っ切り、グラウンドに滑り込んだ。


 触手をすり抜けた2本は老婆の胴体や右膝に命中。

黒い泥が濁った音を立てて地面に流れていく。

致命傷を避けた老婆は、皺だらけの顔を更に歪めて吠える。

地面の下から、轟音が響く。


 まもなく、1本の杭が墓石を割って、霊園に姿を現した。

この杭は思念によって、自在に動かす事が出来る。

ひとたび命じれば、杭は弾丸のような速さを保ったまま、空中でUターンし、地中を掘り進む。


 グラウンドまで飛んでいった1本も軌道を変更。

撒き戻るように後ろ向きに宙を進む。

2本は空中で、有効打となった2本と合流。

4本は老婆の頭上から、雨に交じって降りかかった。


 老婆の牙が砕け、触手が砕断される。

杭達は勢い余って地面に突っ込むが、まもなく敷石の下から撃ちあがった。

無言の道隆の周囲に、忠実な僕のように4本の杭が侍る。




 死に体となった老婆は激痛に悶えつつも、攻める手を緩めない。

寝転がった老婆は黒い泥を動物に変えることなく、濁流として敵に放った。

濁流は2つの遺体や石の破片を押し流して道隆に迫るも、半径1mから先には侵入する事ができない。


 水だ。

宙に伸びた黒い洪水が、透き通る壁によって塞き止められていた。

そもそも老婆の泥は凶獣作成を本領としており、パワーやスピードにおいて道隆の水流を大きく下回る。

水の壁は濁流を徐々に押し返し、その後ろの道隆は老婆の真上に8本の杭を配置。


 指をついと動かすと、続けざまに1本ずつ射出される。

掃射を浴びた老婆の力は尽きた。

それを証明するようにその身体は塵となって消え去り、獣達は元の汚泥に還ると地面に吸い込まれ、影すら無くなった。

後はこの騒動に、世間がどれほど注目するか。


 もはや長居する必要ない。

道隆は雨雲の支配を解くと透明な水になって、霊園上空に飛んでいった。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ