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6月23日

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。

 火曜日に登校すると、校舎から何かの気配がした。

健介はしばし立ち止まって、出所を確かめる。

3階らしいが、気配は間もなく消えた。猿の時のような不快な印象は無い。

昼休みに見に行ってみようか、と健介が考えていると遅れてやってきた部員が話しかけてきた。

健介は3階を気にしつつ、彼のとりとめのない話に付き合う事にする。



 昼休み。

弁当をかっ込み、3階を目指した健介が辿り着いたのは図書室だった。

朝から気配は一度も現れることなく、探索に難儀したが、図書室の前に立った時に引っ掛かる物があった。

それを信じて、扉を手に掛ける。


 室内には数名の生徒がいたが、至って静かだった。

皆黙々と読書や学習に勤しんでいる。その一部は入ってきた健介にちらりと目をやり、一瞥で興味を失くすとそれぞれの作業に戻った。


 初めて図書室を利用した健介は戸惑いつつ立ち並ぶ書架を検め、やがて一冊の本を見つける。


「名古屋東部史」


 とっつきづらいタイトルしか記されていない装丁は重厚。

ページも百科事典を思わせる程多く、平素の健介なら間違っても手に取らない。

朝の気配は感じられないが、持っているだけでページを中身を確かめたい欲が内側から溢れてくる。

沸き上がる興奮に内心慄きながら、健介は一ページ目を開く。


 じっくりと読み進めていくが、健介が見る限り特に変わった記述はない。

名古屋の歴史が堅苦しい筆致で記されており、一分と立たないうちに読むのが辛くなってきた。

何だか目がチカチカしてくる。

もう閉じよう、と決心した時。


――!


 健介は一瞬、足元が崩れたように感じた。

足元をよく見ると床が木造に変わっている。

振り返った図書室はつい先刻まで居た部屋より小さく、内装も古くなっていた。

書架の間から出入口に走るが、誰もいない。思わず手元から落とした分厚い本の元に戻り、パラパラとめくってみるが何も反応が無い。


「ハァッ!?」


 自分は閉じ込められたのだろうか?

今は昼休みだ。早く帰らねば大騒ぎになる。

出口を探さねばならないが、どこに向かえばいいのか。


 健介はそろりと廊下に歩み出る。左右を見渡してみたが誰も現れる気配はない。

外には祖父母の家でしか見たことが無いような森や山が広がっている。

窓は簡単に開く。顔を出してみても、特に異常は見受けられない。


 校舎内を歩きながら、見つけた部屋をくまなく調べていく。

生徒のいない教室には荷物が残されており、まるで移動教室に向かった後のようだ。

健介がしまってあった教科書を調べている時、教室の戸が開いた。


「おや、泥棒?」

「ちがうちがう!俺出られないんだよ!」

「冗談だよ。入ってきたのは君だね」


 教科書からパッと手を離した健介を見て、入って来た男子生徒は興味深そうに微笑む。

ゆったりとした足取りで近づくと、彼は隣の席に着いた。

髪は短く整えられ、新品同様の綺麗な学ランに身を包んでいる。

うちの生徒だろうか?健介は一瞬考えたが、彼からは強い気配を感じる。


「あんたさー、人間?かな?」

「不躾な尋ね方をするね。けど、そう…僕にもわからないんだ」


「気付いたら、ここにいたんだ」と男子生徒は肩を竦めた。

健介はどう扱ったらいいか分からず、この問題はひとまず棚に上げておくことにした。

あの猿や火災現場のビルのような気味の悪さが、男子生徒からは感じられない。


「それで、出られないというのは?」

「だから出られないんだよ!分厚い本読んでたら、ここにいてさ」

「落ち着いて。最初から、ゆっくり説明してくれ」


 たどたどしい健介の説明を聞き、幾つか質問を投げ、男子生徒は目の前の男が置かれている事態を理解した。

しばし黙考した末、男子生徒は「その本を調べてみようか」と軽く言った。


「本には何もねぇーよ」

「君一人の時はね。僕が一緒なら、何か変わるかもしれない」

「う~ん」


「何も無かったら、改めて出口を探してみよう」と男子生徒が言うので、健介もそれならと納得した。

健介は男子生徒を伴って図書室に引き返す。本は開いた状態で床に落ちている。

もう一度調べてみた時、健介はもう一度落下感を味わった。


 ふと気づくと足元が木目からカーペットに変わっており、健介はその上で跪いていた。

夢だったのだろうか。本を持って慎重に立ち上がる。


《戻れたみたいだね》

「お、おお、悪かったな。そっちは…」


 びくっと震えた健介はあたりを見回すが、近くに人の姿はない。

居場所を尋ねると、《僕は此処から出られないらしい》と困ったような声が帰ってきた。

人外の疑いが強まるが、あの場所に一人ぼっちと考えると、憐れでもある。

どう声を掛けたものか迷っていると、男子生徒の方から話しかけてきた。


《そっちがどうなっているのかわからないが、昼休み中なら急いだ方がいいんじゃないか?》


 そういえば昼休みだった。

時計を確認すると残り10分しかない。

図書室にはやはり他の生徒の姿は無く、健介も本を棚に戻すと大急ぎで教室に向かった。


ありがとうございました。

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