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7月11日/これから始まる

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。

 健介たち脱出組は準備に3日の時間をかけた。

その間、脱出を希望する者は少しづつ増えていった。

1日経って、2日経って、救助があまり期待できないことを悟ったのだ。


 あくまで動かない者たちもいた。

敏が作成した敵除けの印と、近隣から集めた物資が残っている為だ。

ライフラインが止まっているが、3、4日は籠城できる量。

その間に救助が来てくれると、考えているのだろう。


「荷物は全部積んだかい?」

「水も食料もOK…」

「着替えと薬もあるよー」


 車のフロントには敵除けの印が描かれている。

道中で怪物が出現した場合に備えてのことだ。

蹴散らしていくのは手間がかかるし、外の目も気になる。


 集った7人の超人のうち、残留するのは戌井と千晃だけだ。

健介は楓達を安全地帯まで逃がした後、市内に戻ってくることにしている。

父親や友人達を探したかったし、千晃の手伝いもしたかった。

行く当てのない涼葉もそれに付き合う。秀人と元尚、敏は脱出後はもう戻らないつもりだ。


「親もよく許したよなー」

「ひょっとして皮肉ですか?」

「いやいや。外まで送ってかないの?」


 千晃は悪戯っぽく微笑んだ。


「先輩に任せてもいいですか」

「いいけどさー、お前が残る必要ある?」


 避難者達は全員が味方という訳ではない。

穏健な者たちもいるが、不信感を隠そうとしない連中も目立つ。

途中からついていくことに決めた者にしてもそう。

勝ち馬に乗っていたいだけの、日和見主義者。5名きりとはいえ、千晃が守ってやる謂れはないと思った。


「皆気が立ってるんですよ。状況が落ち着けば、普段の調子に戻ります」

「そんなもんかね」

「両親のこと、お願いします」


 千晃が軽く一礼する。


「おう、俺も楓達を送ったら、そっちに顔出すからさ」

「待ってます」


 まもなく、脱出組は北ルートで出発した。

千晃が走り去る車を見送る。

難民たちも、修理した窓の隙間から見つめている。





 道隆は冷蔵庫を開け、パック牛乳を取り出した。

扉を開くと、冷気が顔を撫でる。

彼の自宅にはあらゆるライフラインが生きている。


 これが青い怪人の結界の行き着く先。

四方を区切り、周囲と区別する意味は何か?

自分の世界を作り出すためだ。


――限られた空間に別天地を生み出す力。


 この道隆のための世界――聖域内は道隆のルールによって支配される。

この家の中に限って言えば、異変以前の環境が維持されているのだ。

そのため、ライフラインが絶たれても、この家の中では今まで通りの暮らしができる。

ある程度以上汚れると自動的に清浄化され、食料は一定量を下回ることがない。


(それでも、一般人がここで暮らすのはキツイよな)


 道隆は四方に守護の魔物を置いた後、家族を拾うために走った。

弟は避難所からはぐれていたが、他の二人は避難していた。3人とも怪我はなかった。

家族を回収した後、擬態道隆と共に「空間を無視する魔物」に乗せ、香川県高松市内まで移動させた。

高松には叔父夫婦が住んでいるのだ。


(細かい部分は大人―社会的に自立した人間を指す―に任せていいはず…弟妹も20歳過ぎてるし)


 愛知県を結界で区切ったが、支配下に収めることはできなかった。

道隆の力量では怪異を根絶するまでには至らないのだ。

彼自身が早々に見切りをつけていた事もあるが、真剣に異変解決のために動いたとしても結果は同じだった。



 道隆が今回の異変で失ったものは、主観で言えば殆ど無かった。

無論、職場や家族との暮らしなど、失われたものはある。

しかし、それに代わる自由を得た。

危険は多いが、身を立てる力も同時に身についた。楽や利の総量は、むしろ増えたといっていい。


(これからどうしようかな。不足している物は特にないし…暇だ)


 道隆は表向き、平静そのものだった。

心の中で不安と歓喜が同質量で存在しており、二つが相殺しあっている。


――秩序に背き、無法を働く気はない。

――力ない人々を束ね、導くなど柄じゃない。


 諸手を挙げて事態を歓迎しているわけではないし、以前の世界に戻りたいとも思わない。


(……不満はあるけど、わざわざ変えたかったわけじゃないんだな)


 狭い範囲で完結したあの生活に、執着も未練もない。

しかし大過のない、淡々とした日々は、そう悪いものではなかったはずだ。


(しばらくは様子見か)


 グラスに注いだ牛乳を一口飲むと、道隆は数日前に購入した戯曲を読み始めた。




――発生から5日が過ぎ、7月の異変はひとまず収束に向かった。


 5本の柱が形成する力場によって物流が制限され、支援の風はごく緩やかにしか行き渡らないとはいえ、大規模な被害は7月11日で途絶えた。

街の状況が再び動き出すのは5か月後、年の暮れかけた12月に入った後になる。


ありがとうございました。

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