闇に轟け、勝利の号砲よ
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
午後7時過ぎ、名古屋港には艦艇が複数、展開されていた。
主な目的は救助活動と怪物の掃討。
乗員の眼前には、名港トリトン跡にそびえる高さ800mの柱。
その不吉な影の足元から艦艇目がけて、魚と人を混ぜたような生き物が波となって押し寄せる。
特異な攻撃性は見受けられず、乗員の装備も有効打になる。しかし6、7発食らった程度では怯みもせず、数も圧倒的に多い。
数千の魚人の軍団を、早苗は野跡駅上空から眺めている。
早苗の視覚は精神力によって強化されており、数百m先も楽に見渡せる。
早苗は一人ではなかった。
彼女は、黒い馬に二人乗りしている。
背中にあたる丈の長いローブに身を包んだ、学者風の騎手の感触。
彼の胸のあたり、馬の鬣の前で厚い装丁の本が独りでにページを手繰っている。
黒い騎士が能力を発動しているのだ。
それにより、早苗の位置情報はずらされている。
騎士以上のパワーで知覚しない限り、今の早苗を発見する事は出来ない。
(やっぱり地味ね、便利だと思うけど…)
早苗は精神世界に呼びかける。
心の中に控えている三騎の内の一騎。
殲滅力においては赤い騎士の上を行く、現在の早苗が使える最強戦力。
早苗の前方に、騎兵の像が描かれていく。
弓矢を携帯した、鉄製の鎧に身を包んだ戦士。
跨っている精悍な馬の体毛は、新雪のように白い。
名古屋港で繰り広げられている攻防を木っ端微塵にするよう、早苗は白い騎士に無言で命じた。
白い騎士は一切の感情を表す事無く、1本の矢を放つ。
矢は艦艇をすり抜け、変幻自在の軌道で飛鳥コンテナ埠頭まで到達。
全体が青白く輝いた時、矢の表面温度は摂氏数百万度にまで達していた。
1000/1秒後、臨界に達した矢が空中で爆発。
その瞬間、白く輝く火球が港に出現した。
火球はさながら、地上に落ちてきた極小の恒星のよう。
0.5秒後。火球は直径30mに膨張、温度は摂氏10万度にまで下がっている。
さらに刹那の後、半径およそ4kmを摂氏7000℃を超える高熱の奔流が襲った。
光の中にいた乗員、魚人達は体内の水分が蒸発、瞬時に炭化する。
遺骸は続けてやってきた爆風によって四方に飛ばされ、両者は跡形も残らなかった。
金城埠頭は建物も草木も全て焼失。
爆心地近くの名古屋火力発電所が、突き上げるような大爆発を起こす。
被害は知多市、東海市にまで及び、海沿いに並んでいた工場は全焼。
不運にも範囲内にいた住人は、相貌の判別がつかなくなるほど焼かれた。
膨張した空気は爆風となり、知多半島を侵略した。
刈谷市内の窓が悉く吹き飛び、木造家屋の殆どが半壊から全壊。
当時屋外にいた人々は爆風により、内蔵や鼓膜に裂傷を負った。
遠く半田市や大府市でも、熱線によるものを思われる火事が数件報告された。
これが白い騎士。
たった一射で数万の人々を死傷させる、神の矢の担い手。
等身大でこの威力なのだ。
赤い騎士のように50mサイズで呼び出した時、いったいどれ程の破壊を齎すのか。
暗い期待と興奮が、早苗の胸中で膨らむ。
ただし、完全に被害から逃れた地区もある。
5本の金属柱を結んだラインの内側、名古屋市内には高熱も爆風も入り込む事は無かった。
この正体不明の柱は、名古屋を崩そうとするものを許さないのだ。
外部の圧力を逸らし、あらゆる攻撃から土地を守る。
ここ名古屋は聖地であり神殿となる。
旧世界から逃れた人々が暮らす、楽園となるべき地。
そのような考えを受けて、この柱は生まれた。
(そろそろ戻るか)
名古屋港の壊滅を見届けた早苗は、秘密基地に帰還する。
昼間、夏姫から結構叱られたのだ。
その程度で落ち込む彼女ではないが、幼馴染に心配はかけたくない。
ありがとうございました。