7月7日(5)
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
「ホントに良かったの?」
「なにがー?」
携帯食料を頬張った楓が、覗き込むように顔を近づけてくる。
「おじさんとおばさん、捜してもらわないで」
「別に後回しでいーだろ。親父はともかく、お袋のところで頑張ってるヤツがいるらしーし」
「心配?」
「そりゃー、心配だけどさ。ンなもん、全員同じだろ」
携帯食料を一切れ食べ終えると、楓は気抜けしたようになった。
「……大丈夫だよね、お母さんとお父さん」
「う、ゴメン!正直保証は出来ない…けど、最優先で捜すように頼んだじゃん。涼葉はまぁ、性格がアレだけど、千晃は結構強いからさ、間に合ったなら大丈夫」
健介がやや早口で言い切ると、楓は疲れた顔に、小さな笑みを浮かべた。
「なんかゴメンね、こっちこそ。それなら私も、少し待ってみるよ」
「お、おう……」
健介は視線を逸らし、顔を合わせないようにする。
しばらくじっとしていると、寝息が聞こえてきた。
顔を向けると、楓が横になっていた。揺すっても目を覚ます様子はない。
(疲れたか…)
一般人の身で、異様な状況に放り込まれたのだから、当然だろう。
家族の安否をはっきりしない現状、心身とも疲弊しているはず。
一方、健介の体調は殆ど万全に近い。
今日は12時半過ぎから雑魚ばかりとはいえ、戦闘続きだった。
しかし、疲労は無く、まだ戦える自信がある。
気分が冴えており、全く眠れる気がしない。
目を閉じて考えるのは、友人達や家族の事。
健介自身は昼の時点で、彼らの生存に見切りをつけたと思っている。
楓の無事と引き換えに、皆を捨て置く。勿論全員生きているなら、それに越したことはないのだが。
幼馴染を確実に守るために、千晃達との合流を健介は優先した。
(生きているか死んでるかぐらいは確認してーな、墓ぐらいは立てなきゃな…)
力が無くて済まない。
俺には、お前たち全員を守る事なんてできない。
皆が巻き込まれる前に、この変事が終わって欲しかった。
だが、それは叶わなかった。俺はせめて、楓の傍からは離れないようにする。
恨むなら恨め。
3人が自分と同じように判断したのか、健介にはわからなかった。
ある程度見切りをつけたのか、それとも自分と合流した後で、改めて救出に向かう腹なのか。
もし合流を優先したうえで、親しい者を助けられる、助かると本気で信じているなら、不用意なことは言えない。
(やっべ…寝てた!?)
ふと目を覚ました時、周囲は既に夜だった。
健介はいつの間にか、寝入ってしまっていた。
部屋の中は暗く、2人はまだ起きてこない。
楓が怪我をしていないか、身体をまさぐり確認する。
安否確認以外に、含むものはない。
――その時、尋常でない気が健介の感覚に滑り込んできた。
弾かれたように身体を離し、周囲を探る。
しばらく待ち構えていると、集会室の扉が開く。
飛び出そうとした健介の顔に、強い光が浴びせられる。
懐中電灯だ。
「先輩、無事ですか?」
「おー、千晃…」
「これだけか?」
集会室に入って来たのは千晃と涼葉、そしてもう1人。
聞き慣れない声の主は、健介達より少し年上の男だった。
髪色が明るく、さっぱりした顔立ち。
男は長さ1m程度の棒のような物を右手に持ち、鋭い目で3人を窺っている。
「新顔だな。アンタは?」
「俺は堀井。雨宮達が連れてきた連中含めて、14名の市民を保護している」
堀井元尚は身を翻し、出て行こうとする。
そこに健介が声を掛ける。
「アンタ一人?」
「向こうに2人残している。移動するから、そこの2人を起こしてくれ」
堀井は今度こそ、部屋を出て行った。
「愛想のないヤローだな。おい楓、起きろ」
「海野先輩…先輩」
目を覚ました楓に手を添えて、立ち上がらせる。
秀人は揺すっても叩いても起きるそぶりを見せず、千晃は面倒臭くなったのか、彼を資材のように肩に乗せた。
担がれた秀人は小さく呻いたが、起きようとはしない。
5人は玄関のアーチをくぐり、テニスコートで待つ堀井の元に向かった。
彼は赤い竜の傍で、腕を組んで立っている。彼は近づいてくる気配に顔を向けた。
健介達が騎乗した事を確認すると、自身もドラゴンの背中に乗り、涼葉に声を掛ける。
「山岸、頼む」
「は、はい」
ドラゴンが飛翔を始めた。
目的地は栄2丁目に建つ、1件のビジネスホテル。
元尚は集まった住民を力によって従え、保護あるいは従属させている。
闘える者が最上位、料理など家事ができる者、あるいは車など脱出に役立つスキルを持つ者が次、特に秀でたところが無い者が最下位。
実力によって人を選り分け、小規模な階級社会をホテル内に形成していた。自分含む超人は当然闘える者の上。
「そーいうのどうかと思うぜ、俺」
健介は千晃から元尚と出会った経緯を聞くと、表情を硬くした。
千晃自身、表情から察するに面白く思ってはいないらしい。
「ならバラバラに自由行動させるか?雨宮にも説明したが、難民に好き勝手させるだけの余裕はない。仲間が4人増えたとしてもな」
「……」
「1人でも多く生き残らせたいなら、誰かが仕切らなきゃならない。やるとするなら俺達しかいない」
「ふーん、まぁ言い分は分かりました」
健介は話を切り上げようとするが、千晃がそれを許さない。
「僕は反対です。堀井さんのように、優劣で人を区別するような…」
「待った待った、スト~ップ。お前ら空の上で喧嘩すんな。やるなら降りてからにしてくれ」
千晃は黙りこんだ。
元尚は興味なさそうに夜の街を見下ろしている。
涼葉が心配そうに2人を見つめ、楓も悲しげに眼を細める。
秀人だけが変わらずぐったりとしている。
しばらくして一行は栄2丁目に着く。
元尚の案内で、6階建てのホテルまで歩いた。
白塗りの外壁に、窓が等間隔に並ぶ。
長方形の建物の一角から、筍のように暗色の箱形が突き出ている。
そこに白抜きで名称が書かれていた。
健介らが中に入ると、ロビーでうなだれている男女6名と妖気を纏った若い男2人がこちらを向いた。
元尚は若い男2人に近づき、何事か相談し始める。
ややあって、6名の中から丸っこい身体をした年配の男性が近づいてきた。
深く憔悴していたが、柔和な目元は健介の記憶にある通り。楓の父親である。
楓の父が健介に気付き、声を掛けようとした時、強烈な気配が超人達に浴びせられた。
千晃が真っ先に飛び出し、秀人は相変わらず寝ている。
「てめーら、絶対出るなよ!フリじゃねぇぞ!!」
楓含む避難者が後ずさった事を確認して、健介は外に飛び出した。
錦通御園交差点上空。
細長い胴体と人間の顔を持つ、おぞましい生き物が宙に浮いていた。
働き盛りの男性そっくりの顔は健介達に気付くと、耳障りな咆哮をあげる。
その姿を見た瞬間、健介は小春の生存を諦めた。
ありがとうございました。