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第1次超人災害(4)

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。


 前後駅付近から20分ほど飛び続け、道隆は浜名湖に到着した。

深い闇の中、人工の灯に抱き締められた、静かな湖面が印象的だ。

湖のほとりに一人で立ち、魔物の召喚を行う。


 道隆の心の深奥から、翡翠色の鱗で全身を覆った大蛇が姿を現す。

物質化した大蛇は、弁天島の外周を一巻きできるほどの巨体を夜空に持ち上げ、両の眼を赤い星のように燃え上がらせている。

道隆と同じ体質を持たない者には見ることは叶わないが、霊感があれば大蛇が発する妖気に勘付くかもしれない。

大蛇は道隆が命令すると、湖に深く潜行した。

その様が人目に移る事はないが、勢いよく身体を沈める事で湖面が揺れが生じた。




 道隆が浜名湖から名古屋に引き返している頃、二人の超人が怪物と対峙していた。

髪をツーブロックにした赤いシャツの中年男が、水瀬和幸(みなせかずゆき)

花柄のシャツにサングラスの若い男が、梅崎康一(うめさきこういち)

そして彼らが籠る守山パーキングエリアを、数十の獣の群れが取り囲んでいた。


 マントヒヒに似た顔と鳥の翼を持つ、馬のような生き物――ヒヒウマ達。

その最後尾には、ヒヒウマを十倍したような群れのボスが立っている。

ボスが合図をすると、呼び出された部下達は一斉にスナックコーナーへ進軍する。


 それを気配で探知した和幸は大振りな弓を取出す。

つがえる動作をすると、虚空から黒い矢が出現した。

矢は放たれると、店舗を満たす闇に溶けるように消える。

駐車場に通り過ぎ、手近なヒヒウマの頭部を誘われるように射抜き、傷口を膿んだように悪化させた。


 和幸が矢を放った頃、康一は遥か上空から己の守護者を呼び出す。

まもなく、二対の大きな翼を背負った天使のようなものがその場に舞い降りた。


 現れたものは、光輝で満たされていた。

下半身から歩行能力が失われているのは、地に降りる必要が無い故。

心臓が外に晒されているのは、肉と骨で護る必要が無い故。

両目を持たないのは、光ではなく、万象に宿る霊によって外界を見る故。

そして頭頂に浮かぶ七色の輪。異形ではあるが、十人中八人は間違いなく天使と呼ぶであろう。


 康一の呼び出した天使は、光の奔流を数十のヒヒウマに浴びせる。

光に包まれたヒヒウマ達は、全身をヤスリで削られる様な苦痛と共に、地球外の異空に追放された。

天地を傷つけず、狙いを過たず。主人の敵のみを消す極光。

店舗の内外からヒヒウマの群れが消える。


「お、お~い…」

「あぁ、終わりましたよ。近くに怪物はいません」


 店の奥から、老いた男が出てきた。

彼は和幸の言葉に曖昧に返事をすると、再び奥に引き返した。

老人の姿が見えなくなった後、康一は傍らの男に声を掛けた。


「ねぇ、いつまで続けんの?」

「あー?俺たちと同じ力持ってるヤツが通りかかるまでだって。大分前に決まったろ」

「もう暗くなったけど」

「うるせーな…」


 和幸はうるさそうに顔を顰めたまま、売り物の巻き寿司を口に運んだ。

彼は異変遭遇時、このショッピングセンターで食事をとっていた。

しばらくして康一が逃げ込んできた為、彼は正体を見ず知らずの人々に知られてしまった。

それから仕方なしに、縋り付いてきた人々を守りつつ、怪物たちを倒す役目を背負わされてしまった。


――おメェが原因なのに、ぶつくさ言ってんじゃねーよ。


 自衛のために怪物を倒す、それは理解できる。

だからといって、よりにもよって虹色の光であちこち照らし、破壊する事はない。

そのうえこっちに声を掛けてくるなど。


 そもそも康一という男。

大型トラックに乗ってやってきた。

こっそり耳打ちしてきた限りでは、通行中のトラックを奪ったのだという。

曰く、この状況なら宝箱みてェーなもん、らしい。


 非常時とはいえ窃盗は窃盗。

この状況に収拾がついたら、康一の共犯にされやしないだろうか。

無論、会って数時間の相手。繋がりなど何もないが、第三者がどう判断するかは予想できない。


 和幸が荒れ狂うストレスを鎮めようと奮起している頃、知覚内に複数の妖気が侵入してきた。

巻き寿司の最後の一切れを押し込む。窓ガラスから外を覗くが、異物は見当たらない。


「おぉ、新しいヤツだな…」


 康一は最も大きな妖気を標的に、聴覚の共有を行う。

風の吹く音だけが、距離を無視して耳に届く。

天使に攻撃するように命令しようとした直後、爆発音が康一の意識を揺らした。

ひどい耳痛が始まり、思わず両耳を押さえた。

それと同時に、複数存在した気配が一つに減った。


 轟音は和幸の耳にも入っており、通りで火の手が上がっているのが分かる。

和幸は弓を取り出し、矢をつがえると三発、外に向かって放った。

視界内に敵は見当たらないが、気配は捉えている。

妖気が遠ざかって十数分ほど経過した時、ショップに数十発の衝撃が絨毯爆撃となって襲い掛かった。


 轟音と共に、破壊衝撃がショップに降り注ぐ。

1秒の間に屋根や天井、床やテーブルが弾け飛ぶ。

運悪く着弾地点の近くにいた避難者は、水風船のように爆ぜた。

降り注ぐ瓦礫や破片で、負傷する者もいた。

全く被害を被らなかった者は、和幸と康一含め、店内に一人もいなかった。


「うぅ…あいつ、ぶっ殺したる!死ねッ!」


 瓦礫を払い除けた康一が憤怒に顔を歪め、天使に命令する。

和幸は背中の痛みに耐えつつ、康一に視線を向ける。

なぜこんな男が従える怪物が、聖性や荘厳を纏っているのか。

いくら考えても、和幸には理解できなかった。


 気配の主――宙を舞う青い怪人は近づいてきた天使に、十数発の拳打を浴びせる。

人間の眼では腕が分裂したようにしか映らない、高速のラッシュ。

拳は天使の両腕を吹き飛ばすと、上半身を楽々と掘り進んでいく。

青い怪人が4本の杭を出現させた時、天使は七色の光で、杭もろとも敵を押し流した。

極光が晴れた時、怪人はその場から姿を消していた。


「よ~し!終了」


 妖気が消えた事を探知し、康一は機嫌をよくする。

この虹色の光で倒せなかった敵はいない。

一度浴びせれば、どんな相手でも消えていく。

狙った相手だけを確実に消す。眩しい事だけが唯一の不満だった。


「おーい、おっさん。とりあえず瓦礫どかそうぜ。みんな死んでるかもしれねーけど」

「助けるのか?」

「アンタ見捨てんのかよ!ひで~な、俺そこまでオニじゃねーよ」


 小さく笑いながら、康一は瓦礫をどかし始める。

大人3,4人がかりで持ち運ぶような塊を、片手で持ち上げて駐車場に放る。

さほど力を入れている様子は無く、小石を投げるような動きだ。

和幸も避難者に呼びかけつつ、瓦礫の下から身体を引っ張り出す。


「おーい、爺ちゃん…あ?」

「何」


 先程消えたはずの気配が、一瞬で現れた。

二人の硬直が解けるより早く、青い怪人は天使目がけて殴りかかった。

一々消したり出現させたりが面倒臭いため、康一は召喚しっぱなしにしているのだ。

そもそも召喚し続けた所で、体力が消耗するわけでもない。


 青い怪人の両腕に火花が走る。

体内の電気が腕に集束され、一部が放出されているのだ。

あふれる精神力を具現化させた雷電を纏った拳を、怒りを籠めて叩きつける。

拳は天使に刺さり、再生しつつあった上半身を爆裂させる。


 和幸は背中の負傷がひどく、行動が遅れた。

康一の号令を受けて、傷ついた天使が怪人から距離を離す。

怪人はとっさに2本の杭を出現させ、逃げた敵を負わせた。

杭はライフル弾並みの速度で標的に迫り、心臓部を破砕。天使は実体を保てなくなった。


「うわァッ!」

「どうした!?」


 康一は天使が消失したことに驚き、声をあげた。

精神を集中すると、気配は感じる。

しかし念じても再出現しない。

自分の天使は無敵であり、倒せるものはないと思っていた。

あの七色の輝きを浴びれば、如何なる敵も即死するはずだ。


「天使消えちゃった!どうしよ…」

「消えた…」

「もう一回召喚できないか?」

「ん~、無理ィ…」


 和幸は身のふり方を考える。

このまま康一と組み続けるべきか?揉め事を起こしそうな事に加え、こちらの負傷を心配する素振りも見せない。

パートナーとしては心許ないが、その戦闘力は心強かった。

召喚が使えなくなったとしても、一般人より強いだろう。


――とはいえ、いつまでもここにいる訳にはいかない。


 数時間前に会ったばかりの連中より、妻子や両親の方が大事だ。

徒歩で逃げてもいいのだが、その場合家族を連れて市から脱出する際、不都合が生じる。

移動手段が欲しい。そしてそれは店の近くに存在する。





(なんだったんだ、さっきの)


 青い怪人――道隆は守山PAでの一幕を思い出す。

飛行している最中、道隆は地上にある2つの気配を捉えた。

いきなり矢を撃ってきた為、こちらも頭にきて杭を降り注がせた。

それで反省するかと思いきや、今度は天使らしき怪物を差し向けてきた。

近接戦闘では優位に立ったが、それも七色の光を放つまで。


 虹色の光を浴びた瞬間、これまで経験した事のない激痛が全身を襲った。

闘争のために再構成された身体が削られていく痛み。

視界を閉じ、次に開いた時、七色の光の中に転移させられていた。

光の空間には自分のほか、猿と馬を合体させたような生き物がおり、彼らの身体は半分以上消滅していた。

巻き込まれた4本の杭は、瞬く間に消滅した。


――この空間に留まっているのは不味い。


 彼らのように消滅してしまう。

そんなろくでもない最期は断固拒否。

道隆が慌てて出口を探そうとすると、皮膚に痺れが走り、急に景色が変わった。

周囲は虹色の光輝から夜中の空に変わり、すぐそばには先ほどの天使がいた。


(あの2人、まだ死んでないらしいが、関わってる暇はないな)


 愛知県を囲う結界を完成させるのだ。

不埒な2人組を痛めつけたい気持ちはあるが、どう考えても時間の無駄だ。

多少は傷も負ったはず。後は適当な相手に襲われて、気に障る2人が野垂れ死ぬことを祈ろう。


ありがとうございました。

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