第1次超人災害(2)
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
妖気を探ると、こちらに向かってくるものが一体いる。
まもなく現れたのは、黄金の装飾に身を包んだ白い肌の異形。
白い肌の上を、蛇のような紋様がのたくっている。
それは背中の翼で空を混ぜながら、道隆に近づいてきた。
「貴方は……怪物たちとは違うようですが…」
「あぁ、同じみたいね」
異形――変身した千晃が首を傾げる。
道隆が答えると、異形は声を弾ませた。
「ひょっとして、あなたも怪物と戦う為に立ち上がったんですか!?」
「え?まぁ…」
「僕も同じ気持ちです。よかったら、手を貸してください!」
面倒臭い奴に捕まった。
この状況で動ける善良さは買うが、自分を巻き込むとなれば話は別だ。
「共闘は出来ない」
「そんな!?」
「儂はこの先で感知した気配の元に行く。恐らくさっきの武者とは比較にならない強大な怪物だろう。雨宮さんは市民の保護を優先してくれ」
面倒臭い異形は雨宮と名乗った。道隆は咄嗟に「佐藤」と答える。
「僕は何も感じませんが…」
「個人差があるんだろう。自分で言うのもなんだが、儂は探知範囲が広いんだ」
千晃はわずかに黙考する。
表情は窺えないが、嘘を言っているようには思えない。
また、その物言いから、佐藤は他の能力者の情報を持っているのではないか、と考えが浮かんだ。
「僕も一緒に行きます」
「だから、儂は一直線に――」
「佐藤さんの言うような怪物だった場合、一人じゃ手におえない可能性があります。案内してください」
逃がすつもりはないらしい。道隆は内心舌打ちした。
「わかった。しばらく世話になる」
「はい。こちらこそ」
移動を始めた二人は30秒足らずで、毒沼と化した有松裏に到着した。
速度は道隆の方がやや早く、千晃に合わせる形になった。
毒沼は姥子山に向かっており、辿っていくと浮遊する巨大な怪物が2人の目に入った。
怪物が通り過ぎたところでは家が溶け、地面は泥のようになる。
道隆は巨大な怪物――マガツヒを捕捉すると、臨戦態勢を整える。
まず、自身の精神世界から巨大な烏を呼び出す。
烏が不吉に一声鳴くと、二人の身体に烏の魔力が宿った。
腕を強く降ると、溢れる力が黒羽の像となって舞う。
「ありがとうございます」
「おう」
後で顰蹙買いそうだし。
印象を悪くしたくなかった為、千晃も対象に加えた。
道隆は大きく飛び上がり、浮遊すると杭を20本出現させた。
発射された杭には魔力が宿っており、武器としての質が格段に上昇している。
飛行速度は音の領域に達し、ひとたび着弾すれば標的を大きく損壊させる。
杭は目が覚めるような大音響を引き連れて、マガツヒを爆裂させる…瞬間。
「ウソォ!」
「再生…した」
マガツヒの身体が砕けはじめると同時に泡立ち、薄赤いミルクのような体液が噴き出す。
傷が塞がり、体型が先程とは大きく変わった。
触手の大部分が失われ、新たに形成された嚢腫が胴体を覆う。
後背部と思しき部分からは一対の腕、胸部と思しき箇所には3つの人間の眼が現れた。
磨かれた鏡のような顔は歪に再構成され、無数の亀裂が入っている。
顔の亀裂が内側から開かれる。
亀裂の内側には碗のような、窪みだけがある。
マガツヒの顔、空洞の前で数本の光芒が踊り始めた。
光芒は徐々にその動きを速めていく。
先に反応したのは千晃。
雷電の槍を無数に発生させ、マガツヒを貫く。
それと同時に、二人の身体にも稲妻が走った。
肉の焦げる臭いを嗅いだ瞬間、道隆は軽く1kmは後ろに移動していた。
これは千晃の行える、俊敏さへの祝福。
稲妻の加護を与えることで、対象の速度を大幅に高める。
ただし、反応速度の向上が完全でなく、祝福を受けた相手が向上した敏捷に追いつけないという弱点がある。
マガツヒの前で踊る光芒は、一点に集中して球形を成す。
道隆は更に、10本の杭を出現させ、マガツヒに向けて放った。
表面の嚢腫は所々白くなっており、怖気を催す液体を先端から垂れ流している。
変身しているとはいえ、素手で触ろうとは思わなかった。
道隆は速さに慄きつつ、距離を瞬時に詰めるとマガツヒへ攻撃を加える。
合計30本の杭は空気を割りながら、マガツヒを二度三度と貫く。
その動きは先ほどよりもさらに早く、強化された視覚をもってしても捉えきれない。
途中、道隆の視界で、無数の稲妻が奔った。数瞬遅れて、音が轟く。
見るとマガツヒの身体は、かなりの部分が黒く炭化している。
体感で3分、1分、実時間でどれくらい経過したのか。
千晃による敏捷の祝福が解ける。マガツヒは光球を撃ち出す。
光球が弾け、死を志向するエネルギーが周囲に拡散する。
効果範囲に一般人がいなかったのは幸いであった。
後ずさった千晃、道隆、両名の身体を、霊体を傷つけ生命を奪う呪詛が貫く。
不吉な寒気が皮膚の上を走ったが、死亡する事は無かった。
千晃の目から、赤黒い液体が流れる。道隆は身体がやや重くなったような気がした。
「平気?」
「だ、大丈夫です…」
道隆は周囲の水蒸気を集める。
瞬く間に薄雲がマガツヒの周囲に形成され、千晃が稲妻を用意する頃には黒雲があたりに漂っていた。
マガツヒの肉に矢尻のようなエッジが無数に生える。
硬質化された肉片が散弾のようにばら撒かれる。
一部は足元の市街に降り注ぎ、一部は稲妻によって撃ち落とされた。
千晃は十字槍を出現させ、残った矢尻を凌ぐ。
矢尻は道隆の甲殻に弾かれたが、運良く表皮に触れたものもあった。
しかし出血させるまでには至らない。
稲妻と肉片の撃ち合いが終わる頃、特大の稲光がマガツヒを焼き尽くす。
組織の殆どを破壊されたが、マガツヒはまだ生きていた。
それは右腕だけを2倍以上に巨大化させると、腕の全てを枯れ枝のような細い触腕で覆う。
頭部は泡立つ肉の中に埋没し、ともすると右腕が頭になったように思える。
マガツヒは触腕の間から黄色のガスを吹きあげつつ、千晃に向けて振るった。
道隆は空中を移動し、難なく避ける。
目眩がするほどの悪臭を感じたことから、ガスを少し吸ってしまったらしい。
しかし特に異常は感じない。
変身中ゆえか、それとも少量だったからか。
狙われた千晃は穏やかではない。
吹きつけられたガスを、大きく吸ってしまった。
まず嗅覚に―変身した千晃の顔に鼻はない―刺激が来て、続けて胸の内側に鋭い痛みが走る。
硬直した異形の天使に、高層建築に匹敵する超質量が叩きつけられる。
千晃は怪物の足元、毒沼のなかに沈んだ。
(おっと…助けたほうがいいよな!?)
外界の水分、そして沼その物に命令を下す。
その瞬間、毒沼は千晃を呑み込むのを止め、泥の台座となってその身体を掲げる。
気を失ったわけではなく、横たわったまま顔をこちらに向けている。
――マガツヒが再び、右腕を振り上げた。
それを30本の杭が待ち受ける。
黒羽の加護を受けた杭は、道隆が思考すると同時に直進。
空気を震わせながらマガツヒの巨体に刺さる。
蠢く触腕が千々に砕け、上半身の殆どを呑み込んだ右腕が寸断される。
トドメに稲妻を浴びせると、蓄積したダメージが、遂にマガツヒの生存能力を上回った。
黒焦げた体は徐々に崩れ、破片が地面に落下する。
毒沼に落ちなかった黒炭が、雪のように積もった。
千晃の身体を思念で引き寄せて街路まで運び、横たえる。
「あ…ありがとうございます。終わったようですね…」
「だな。それじゃ、儂は行くから」
「一体どこに!?」
腕を使って体を起こした千晃は、道隆の背に尋ねる。
「市外の様子を見に行くんだよ」
「!そうですね。外がどうなってるのか、確かめないと」
「おい、ついてくる気か?」
千晃がゆっくりと浮き上がると、道隆は煩わしげな声をあげる。
「はい、何か…」
「市民はどうするんだ?…二手に分かれたほうが、いいんじゃないか」
「そ…いえ、友達と相談してみます。ちょっとここで待っててください」
千晃は考えるような仕草をすると変身を解き、その場から離れる。
――逃げるチャンスか?
ぐずぐずしているとアイツが帰ってきてしまう。
このまま二人で行動する場合など、考えるだけで辟易する。
自分は今、街をぶらつきたいのだ。
しかし、断りなく逃げた後で再会すると気まずい。
(よし!逃げよう)
どうせ向こうは、こちらの顔を見ていない。
期待や緊張が震えとなって、全身に走る。
意を決した道隆は霧となって、その場から姿を消した。
「!」
その時、千晃は秀人に連絡を取っていた。
道隆の気配が急激に薄くなっていくことに気付くと、彼は急いで待ち合わせ場所に戻った。
一帯を走り回るが手がかりすらつかめない。
まさか別の怪物に倒された?
付近には妖気が幾つも点在しているが、探知範囲に入れておいた道隆の気配の近くには、何も無かったはずだ。
(佐藤さん…何も言わずに一体、どこに?)
やや消沈した千晃は相談の末、秀人達と合流する事に決めた。
通信を切り、物陰で再び変身すると鶴舞を目指して、飛行を始めた。
ありがとうございました。




