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賛美すべし混沌の先駆け(2)

【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。


 昼食を終えた夏姫が映画を見ていた頃、早苗は外の状況を確認していた。

外に送り込んだ調査員の端末から、映像が送られてくる。

しばらくして、早苗は調査員たちを呼び戻すと席を立った。

そのまま武器庫に向かい、コンバットナイフを手に入れる。

通路に出た後、外の世界に転移した。


 早苗は秘密基地から、名古屋テレビ塔のスカイデッキに移動した。

ガラス張りの展望台からは、栄オアシス21や久屋大通り公園が見渡せる。

名古屋の街を、蛙と翼竜を足したような生き物が覆っていた。

目を凝らすと街路を、蛇の下半身を持つ兵士がうろついているのが見える。

頭頂から背中にかけてを角で覆った小鬼が、歓喜の叫びをあげて通行人を追跡している。


 男の頭蓋が砕かれ、女が引き倒される。

ぐったりとした子供が、梟の頭を持つ獣人の逞しい腕で引き摺られていく。

警察官が発砲を繰り返すが、怯みもしない。

異形の群れは銃弾を物ともせず、警察官を通行人と同じように扱う。

送り込まれてくる応援に、新しい犠牲者を増やす以上の意味は無かった。


 展望ガラスから顔を離すと、早苗は地上に降りた。

近くに生存者はおらず、死体が幾つも転がっている。

通りでは自動車が店舗に突っ込み、至る所で黒煙が上がっていた。


(あれは…ゾンビ?)


 見るからに健康体でない男が歩いている。

血で汚れた衣服は所々破け、顔の皮膚が削げた箇所から白いものが覗く。

同じような風体の男女が栄に限らず、名古屋のあちこちに出没していた。

早苗が近づくと、男は社長とすれ違った平社員のように、スッと道をあけた。


 百貨店に向かって歩いていると、生存者と遭遇した。

表情のやつれた、肥満体の男性。

男性は安堵した様子を見せ、一緒に安全な場所まで避難しないか、早苗を誘った。

早苗が頷くと、男は先に立って歩き始めた。


 男は身の上を聞いてもいないのに、喋り始める。

早苗は男の話に相槌を打ちつつ、周囲に生存者の気配がない事を確かめると男の衣服を掴んだ。

声を上げる間も無く、通りの陰に投げ飛ばされる。

早苗もすぐさま肥満体を追って、通りの陰に飛び込む。


「な…ウ――」


 男の首に大振りの刃が突き立つ。

血液が勢いよく流れ出す。汚れるのも構わず、早苗は男を仰向けにする。

興奮に震える手で、早苗は首にナイフを一閃した。

男の頭を踏みつぶし、ナイフを構えて周囲に目線を配る。

人影がない事を確かめ、その場から足早に離れた。




 早苗は緩んだ口元を隠すように顔を傾けたまま、走る。

命を奪った経験はないではないが、この手で奪ったのは肥満体の男が初めてだ。

肉を切る感触、同等の知性を破壊しているのだという優越。


(私は選ばれた…。アイツらよりも…私の方が上)


 その確証は此処にある。

早苗が保有する、目に見える脅威。

今、それらが早苗の号令を受けて、この名古屋に顕現する。



 久屋大通公園に近い、泉二丁目。

そこの一角に高さおよそ55mの、巨大な騎兵が出現する。

両刃の長剣を持った、血のように赤い体毛の駿馬を駆る青銅の騎兵。


――持ち上がった刀身が、黒に近い赤に染まる。


 剣閃が80m近いの高さの真紅の壁となって、名古屋を裂いた。

真紅の波は音の二倍の速さで街を駆け抜ける。

道路に深さ10mの亀裂が走り、自動車が千切れ飛ぶ。すれ違った瞬間、近くを通行していた通行人は砕け散った。

射線上に立っていた者は、影すら残らなかった。真紅の剣波は幅下橋にまで一直線に進むと、幻のように姿を消した。


 騎士は剣をだらりと下げると向きを変え、矢場町方面に突進を始める。

車両を踏みつぶし、街路樹を蹴飛ばす。振り回される剣が、立ち並ぶビルを雑草のように刈っていく。

真紅の駿馬は足場の悪さを物ともしない。



 早苗は矢場町を荒らし回るように命令を下すと、錦二丁目に向かって歩き始めた。

折角ここまで来たので、前職の勤務先に顔を出したい。

時間からすると、まだ皆職場に残っているはず。

散歩するような足取りで、早苗は歩く。

金色に輝く豹が、ひょっとこ面のように口をすぼめた鼠が、彼女の邪魔にならないように道を空けた。



ありがとうございました。

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