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魔女のお茶会

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。

 6月に起きた数々の事件によって、名古屋には僅かな変化があった。

表面的には6月以前と同じだ。

しかし住人達は町で事件が起きると、好奇の目をこれまでより強く向けるようになった。

原因の不明な事件、手口が陰惨な事件は特に注目を引いた。


 特に注目を引いた事件の一つが、壊滅した徳川町だ。

月が変わって尚、寒気は町を覆い続け、気温は7月時点で-30℃。

冬に入ってもこの状況なら-40℃を下回るだろうと思われた。

救助隊による決死の捜索も空しく、発見された死者の数は既に100人を超えた。


 東山線の崩落事故も記憶に新しい。

既に1週間近く経つが、復旧はまだ遠い。

市の東西を横切る名古屋の主要路線とあって、その影響は甚大。

路線を利用する数十万の市民は、徒歩や自転車、タクシーなどの利用を余儀なくされた。

くわえて、名古屋に存在する全ての地下鉄構内を、数名の警察官が巡回するようになった。


 多少生活に変化はあったが、街は表面上、平穏を保っていた。

じきに慣れていくだろう。

異様とはいえ、実生活に関係ない事に拘っていられる程、皆、暇ではないのだ。

いつかは元に戻るはず。そう信じて、彼らは今日もそれぞれの戦場に向かっていく。



 道隆も同じ。

大事件が続いているが、彼の業務には何の差し障りもなかった。

口を結んだゴミ袋をゴミ庫に持っていく途中、屋外に出た道隆は妖気を知覚する。

店内で発生したのではなく、外から入り込んできた。

視線の先に現れたのは三毛猫――浩紀が改造した猫だ。


「店員さーん、仕事終わってから時間ある?」

 

 猫は口の端を吊り上げ、人の言葉を喋り始めた。


「後でツラ貸してくれない?」


 声のトーンが少し下がった。

道隆はやや間をおいて、退勤まで待ってくれるなら、と事務的に応じた。

猫は満足そうに口元を綻ばせ、店舗の外へ出て行った。





 退勤時間になり、道隆は待ち合わせ場所の駅に向かう。

しばらく待っていると、気配を纏った細身の少年が近づいてきた。

その顔に、道隆は見覚えがある。

お互いの名前を把握した後、改札に向かう。


 浩紀自身に用があるわけではなく、ボスが道隆を呼んでいるらしい。ふと疑問に思った。


「電話じゃ駄目なの?」

「えー、何か…同じ才能を持つ仲間として、直に顔を合わせておきたいんだって」

「仲間ね」


 道隆は内心、嘆息した。

彼の言動から、自身の正体に気付いているのか察そうとした。

もっとも顔は晒していないし、変身したまま自宅の周囲を歩き回った事も無い。

自分の正体について、彼は知らないはず。

二人は改札を通り、地下鉄に乗った。


「二つ質問良い?」


 浩紀が怪訝そうな顔で小さく頷く。


「ボスって言ったけど、組織とかあるの」

「え~、そんなモンねーよ。手下みたいな女がいたけど」


 浩紀が声を抑えて笑う。

手下みたいな女については聞かない事にした。

ここで聞かなくても、この後会うのかもしれないからだ。


「じゃあ、次。前園君は、どこ住んでるの」

「は?………医療センターの方だけど」


 浩紀は口をぽかんと開けた。

直後に意図を了解し、曖昧に返答する。

浩紀は眉を顰めている。警戒されたかも知れない。


(コイツか…あの気配の正体)


 目覚めた後、近くに発生源が存在しているのは分かっていた。

覚醒した時、気配は既に存在していたため、浩紀の方が先に覚醒していたのだろうと道隆は思っている。

一方、向こうは道隆の存在に気付いていないらしかった。

よって、今日に至るまで放置していたのだ。


 先月遭遇してから、今日を入れて6日。

その間に探知の網に引っ掛かってしまったらしい。


 しばらくして、二人は星が丘で降りた。

浩紀に連れられ、道隆は大通り沿いの喫茶店に入る。

華美でありながら開放的な店内、カフェスペースの客席は半分以上埋まっていた。

今の道隆には、まず縁のない世界だ。


 浩紀はあたりを見回した後、客席の一角に進んでいく。

そこでは若い女が、つまらなそうな表情でアイスコーヒーを飲んでいた。

浩紀が声を掛けると、女――早苗は着席を促す。

まもなく、店員が注文を取りに来た。店員が去った後、最初に口を開いたのは早苗だ。


「貴嶋です。初めまして」

「紀里野です」


 早苗は道隆に向けて、軽く頭を下げた。表情は先ほどよりも柔らかくなっている。


「急な呼び立てに応じてくれてありがとう。そう時間はとらせないから」

「そうですか」


 早苗は超人同士の相互扶助を目的としている、と言った。

全体に関わる問題が起きた際、即座に集まり、団結して問題解決に当たれるようにしたいのだ、とも。

道隆が早苗の主張に首肯すると、質問が始まった。


「まず、いつ覚醒したの?」

「気付いたのは4月の後半」


 問題なし。繕わねばならない質問内容ではない。


「街で起こった変化について、知っている事は?」

「…化け物が至る所で出ているな。後は自分自身の事くらいだ」


 今池ビルに行った事は秘密。突っ込んだ説明は求められなかった。


「街の現状について、どう思ってるの?」

「特に何も。身内が巻き込まれない限り、どうでもいい」

「淡泊ね」


 失敗したかな。しかしこの程度で敵対感情まで持たれるだろうか?


「普通はそうだろう?外国で事故が起きたからって、貴方は救援に向かうのか?」

「…親しい相手が巻き込まれたなら、向かうでしょうね」

「僕もそうだ」


 早苗はしばし考えるような仕草をして、答える。

そして四つ目。


「貴方が得た能力は何?答えられる範囲で構わないから、教えてちょうだい」


 デリケートな質問。

黙秘は封じられてしまった。

道隆も全て白状するつもりはないが、悪印象を抱かれるのは避けたい。

こっちからも質問をぶつけてやろうか、とも思うが、実行したところで有利にはなるまい。


「…魔物を召喚し、命令する。それぞれ違った能力を持っていて、総数は分からない」

「見せてもらえる?」


 適当な魔物を二体、店内に呼び出し説明する。

3人のテーブルの側に壁に現れたのは、蜘蛛に似た怪物。

頭部にある顔のほか、腹部が顔になっている。

二つの顔は細い瞳を、道隆らに向けている。

能力は若返り。噛みついた相手を急激に若返らせる。


 向かいの空席のテーブルにも、一体座っている。

伸びた鼻が嘴のようになった、緑色の人型。

異様に頭が大きく、鼎のような冠を被っている。

能力は鉄の操作。周囲の鉄を自在に動かし、増減させることができる。

怪物の存在に気づいているのは、店内に3人だけだ。


「ありがとう。中々便利そうな能力ね」


 道隆が魔物を呼び戻すと、浩紀が尋ねてきた。


「二つ目は?」

「二つ?……これだけだが」


 道隆は首を傾げ、黙る。

覚醒した際、如何なる能力を得たのかは発動するまでは分からない。

発動後、繰り返し使っていくことで詳細が明らかになっていったのだ。

恐らく、そこは彼らも同じだろう。

自分が未だに二つ目を知らなくても、不思議ではないはず。


 沈黙が三人の間に降りる。道隆の表情は平静そのものだ。

黙っていれば、自分に都合のいいように解釈してくれる。

社会との折り合いをつけるために身につけた、道隆なりの処世術だ。

口先で丸め込めるのが一番いいのだろうが、習得する為の努力を道隆は怠ってきた。


「これで最後にするわ。紀里野さん、貴方はこれからどうするの?」


 しばしの時間経過の後、早苗が問う。


「…世間に正体がバレるのは、嫌だな。だから目立つ行動はとりたくない」


 時間稼ぎになるように、聞き取れるようにはっきりと口にした。

普段は殆ど喋らない為、周囲に気を付けつつ声を張る。


「…だけど、この事態が進行するなら、助長してもいいと思っている」

「どういうこと?」


 眉を顰めた早苗は、首を僅かに動かす。

つまらなそうな表情から、内面の思考を窺う事は出来ない。


「僕らの存在がバレた場合、差別してくる層が一定数、出てくるんじゃないか?」

「…続けて」

「だから封じ込められないくらいに、勢力が大きくなればいいと思っている。ああ…能力者の社会が築けるくらいの土地があると、尚いいな」


 早苗は言葉を潜め、視線を横に滑らせる。

道隆は卓に着くまでの間、集団の傾向に考えを巡らせていた。

早苗、浩紀とまだ見ぬ女の3人によるチーム。

通常人の側に阿るつもりはないように思う。締め付けが緩く、あれこれと仕事が投げられないなら、何でもいい。


 印象に残っておいた方がいいかな。渡りをつけられるなら、つけておいた方がいいかもしれない。

多少の痛手は承知の上で、道隆は自己アピールをしてみた。

ただし、本音は少し違う。


――刺激が足りない。


 こんな考えを一度でも口にしたなら、狂人扱いは避けられない。

だから必死で適当な言い訳を絞り出した。

冷えた両目がもう一度道隆を見据えた時、沈黙が破られた。


「能力者同士で潰し合いが起きる可能性も、考えられるけど?」

「志のあるヤツが仕切るだろ?それでなくても皆、最低限の自衛くらいするはずだ」


 段々、苛々してきた。早く終わってくれ。

この街が消し飛んだところで、人類の権勢に殆ど影響はない。

多少数が減っても大丈夫。アニメ文化は安泰だし、家族には魔物をつけてある。

臍のあたりに錆が浮いたような感じを覚えながら、道隆は出方を窺う。

早苗はコーヒーを一口飲むと、ふっと息を吐いた。


「聞きたいことはこれで全部よ。今日はありがとう。ここの支払いは私が持つから」

「ゴチになりま~す!」

「ご馳走様」


 道隆は礼を言って、席を立った。浩紀もそれに続く。

番号の交換を済ませてから、二人で店を出た。


「そっちの用事は済んだの?」

「ああ?これで全部だよ。つーか、あんま一緒に居たくないんだよな…あの人、ちょっとコエーし」

「怖い?」


 浩紀は肩を竦めた。


「何考えてンのかわかんないんだよ、話してると何か疲れるしさ…」


 聞きながら、道隆はゆっくり息を吐いた。

浩紀の言う通り、確かに疲れた。

初対面の相手と会話するのは全くできない訳ではない。仕事中、客に応対する事もある。

しかし話の合わない相手とは、出来る限り会話したくない。

道隆が人心地つくことが出来たのは、若水の予備校前で浩紀と別れた後だった。


(将来か…どうなるかな)


 道隆は思いを馳せる。

妙な集団に目をつけられた事だし、本気で身の振り方を考えた方がいいかもしれない。

明日には忘れているかもしれないが。

ぼんやりと考えを巡らせながら、道隆は帰路についた。






「どうだったの、今日の会合は?」


 その日の夕食後、夏姫はグラスを傾けながら、早苗に聞いた。

圭は既に休んでいる。


「期待した程じゃなかった。能力はそこそこ使えそうだけど」

「ほー、それで?味方になりそう?」


 夏姫は興味津々の様子だ。

早苗は注がれた焼酎で唇を湿らせる。


「敵にはならないでしょうね。それは断言できる」


 早苗は遠くを見ながら答える。

オクラの胡麻和えをつまみながら、彼女は薄く笑った。


ありがとうございました。

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