6月30日~7月1日(2)
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
健介はふと疑問に思った。
話を振られた秀人は、眉を片方持ち上げて答える。
「俺に聞かれても困るんだが…。まぁ、普通の人に幽霊が見えないように、普通の幽霊にも人間が見えないんじゃないか?」
口に出した秀人の中で、新たな疑問が湧いてきた。
普通の幽霊が目の前の女性だとすると、普通じゃない幽霊とは何か。
力のある幽霊――たとえば神格化された偉人の霊などは、普通の人間とスムーズに対話を行う事が出来るのだろうか。
自分たちが気付いていないだけで、そういった存在は身近にずっといたのだろうか。
「話しが逸れているな。…結局、石動さんはどうするんだ?」
霊の世界に思いを馳せていた秀人は、ひとまず意識を現在に戻す。
真理を扱い兼ねた三人は、しばし沈黙する。
これまで出会ってきた怪物とは違い、彼女はまるっきり人間だ。
不法侵入として扱う事は出来るが、健介達は警察ではないし、その程度で彼女を殺す―既に死んでいる相手だが―のは気が引ける。
「あの、私…」
「待った待った」
「そんなに騒がないならー、家にいてもらってもいいよ?」
真理は気を遣って、こっそり部屋から出て行こうとする。
立ち上がった事に気付いた秀人が引き留め、楓が真理が立っていると思われる空間に声を掛ける。
秀人の手は肩の感触を自身の脳に伝え、感知能力が無ければ人間と区別するのは難しい。
その様子を見ていた健介が手を挙げた。
「俺に考えがあるんだけど…」
全員が聞き入る体勢に入った事を確かめて、話し始める。
図書室に現れた少年の事。
彼は異空の図書室に居を構えており、そこに置いてもらえるのではないか、と皆に説明した。
「いつのまにウチの学校にそんなものが…」
聞き終えた楓は唖然とした。
「そこまで友好的な存在なら、一度交渉してみてもいいかもな。お前さえ良ければ、後は任せるが?」
「おう、今日はありがとな」
真理が提案を承諾すると、会談はお開きになった。
秀人が去ると、健介は両手に花―片方は健介にしか見えないが―で学校に向かった。
通い慣れた道を歩き、図書室を目指す。
「ここにその、本の幽霊がいるの?」
「そう」
しばらくして、健介達は図書室に着いた。
健介の背後に立つ真理は途中、興味深そうに校舎の中を見回していた。
室内はテスト勉強に励む生徒たちで賑わっている。視線が少々気になった。
記憶に従って書架を検め、まもなく見覚えのある背表紙を見つける。
重厚なカバーに記入された「名古屋東部史」の文字。
触れてみると、聞き覚えのある声がした。
《久しぶりだね!午後の授業には、あれから間に合ったのかい?》
「おお、まあな」
再会の挨拶は、軽い調子で行われた。
再びそちらに出向く旨を告げると、本を取り出さなくていい、と言った。
少年の声は、後ろの二人には聞こえないらしい。
「取り出さなくっていいって…開かなきゃそっち行けないじゃんか」
《僕が引っ張るから必要ない。連れてきたい人がいるなら、松岡君にくっついておいてくれ》
少年の言葉を伝えると、2人は健介のカッターシャツを掴んだ。
背表紙に触れ、合図を送る。足元が崩れ落ち、三人は奈落に滑り落ちる。
健介は迫る様な不安に襲われたが、それは一瞬で通り過ぎて行った。
「楓、いるか!?」
「怖かった~!?」
生者2人は無事、向こう側に飛んだ。
楓は足元の感触を確かめると、健介のシャツから手を離す。
「びっくりした……」
「!?」
聞き慣れない女の声を耳にし、楓は思わず振り返った。
目に飛び込んできたのは、明らかに学生でない大人の女性。
「こ、この人か…」
「そそ、石動真理さん」
「初めまして。石動真理です」
二人は目を白黒させたまま、突然現れた女をまじまじと見つめる。
肩を流れる濡れ羽色の長髪。
ストライプのシャツを押し上げる豊かな胸とくびれた腰。
華々しさはないが、見る者を不快にさせない、すっきりとした顔立ち。
「すごーい、ホントに変わってる!」
部屋の様子に気づいた楓が、感嘆の声をあげる。
板張りのこじんまりとした図書室。
レトロとすら言える部屋は、楠高校のそれとは似ても似つかない。
楓が珍しそうにあたりを見回していると、書架の陰から見覚えのある顔が出てきた。
「やあ、見ないうちに大所帯になったね」
大人しめの千晃達よりも尚、整った格好の高校生。
健介が紹介すると、2人は簡単に自己紹介をした。
「それで、用件は何だい?」
「あー、こっちの石動さんをさ、ここに置いてもらいたいんだ」
少年が顔を向けると、真理は会釈をする。
少年は考え込むような仕草をとった後、「いいよ。部屋はいくらでも空いているから、好きな所を使ってくれ」と彼女に笑みを向けた。
真理は礼を言うと2人から離れ、少年の元に向かっていった。
異空の図書室からの去り際、健介は少年に、思い出したように声を掛けた。
「名前聞いてなかったよな?なんて言うんだ?」
「親からもらった名前はないよ。けど、そうだな…」
少年は長考の末、「治だ。治療の治の字だよ。今後はそう名乗る事にする」と告げた。
用を全て済ませた健介は、分厚い本の背表紙の前に立つ。
楓達もそれに続くが、真理は治の傍らに立ったまま動かない。
まもなく、健介達は板張りの図書室から、不可視の圧力によって送り出された。
健介と楓は母校の図書室に戻る。
生徒達の様子に変化は無く、書架の陰から出た2人に視線を向ける者はいなかった。
黙ったまま図書室を辞し、学校を後にするとそれぞれ家路についた。
ありがとうございました。




