6月30日~7月1日(1)
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
『地下鉄が使えなくなったのは痛いよな~』
もうすぐ期末テストである。
健介達は勉強に勤しむ傍ら、連絡を取り合っていた。
結局、地下街には戻らなかった。
一瞬舞いあがった炎が効果を示したのでは、というのはただの言い訳。
同じ車両に乗り合わせただけの他人より、身近な人々の方が重かった。それだけの事。
地下街の事は話題に上がっていない。
ただ、怪物に変身する少年を目撃したという、神隠しめいた記述を彼らは発見できた。
とはいえ写真の一つも掲載されていない為、本気にしている者は殆どいない。
この記述は不特定多数の読者からは、創作として扱われているようだった。
『結局バラしたんだなー、あの子』
『落ち着かせる為とはいえ、先輩も思い切った事しましたね』
『お前たち、もう少し深刻になれ』
健介は少々残念に思ったが、恨む気持ちは無い。
助けたとはいえ、少女に報いる義務はないのだ。
『これからどうやって集まる?』
健介の住所は、3人から遠く離れている。
『走って?』
今の健介が本気で走れば、10分で今池に着く。
とはいえ、そんなスピードで街中を疾走する人間が現れたら、瞬く間に噂になるだろう。
『地下鉄が使えなくなったのがイタイな…』
『先輩、確かバイク持ってましたよね?』
聞くと、秀人は二輪の免許を持っているのだという。
健介は部活に集中していたので、持っていない。
他二人も、遠出する時は交通機関の利用が主だった。
地下鉄路線が断たれた名古屋において、バイクや自動車の価値は日増しに高くなっている。
『俺も免許とろっかなー』
人目についても問題の無い移動手段が必要だ。
怪奇事件に首を突っ込み続けるなら、市内のあちこちを走り回る事になるだろう。
『今からとって間に合いますかね』
『俺が迎えに行くから、それでいいだろ』
『マジで!?』
HR前の教室に入った時、省吾と話し込んでいる楓の顔が気になった。
よって、声を掛ける。
「楓、なんか顔色悪くない?」
何気なく見た顔には、疲労が浮かんでいる。
具合が悪いのかと思ったが、当の本人は愛想笑いで首を横に振る。
健介は深く考えずに流そうとしたが、省吾がそれを許さなかった。
楓はしばしの逡巡の末、溜めていたものを二人に吐き出す。
――家に誰かいるかもしれない。
先週の初めごろから、物音がするのだという。
コツコツと革靴を思わせる乾いた足音。
足音の方に振り返っても、そこには誰もいない、と言う事が度々あったそうだ。
初めに母親が聞き、次に楓が遭遇した。
父親は未だに遭遇しておらず、お祓いをしたい、という二人の懇請にも曖昧な態度を続けている。
もっとも足音だけで実害はない為、母親は少し慣れてきたらしい。
楓自身も怪音を怖い、というよりはむしろ、鬱陶しいと思っているようだった。
「俺には力になれそうもないが…相談するなら、ちゃんとした寺や神社にしておけよ?」
「わかってるよー」
健介は省吾や楓とは、違った感想を抱いた。
チャットで相談してみると、千晃達も似た意見のようだ。
楓に明日、友達を連れて見に行ってもいいか尋ねると、彼女は不審と興味が半分ずつといった複雑な表情で了承した。
健介はバイクを持っている秀人と共に午後2時過ぎ、荻野家に集合する事になった。
翌日。
四階建てのマンションの隣に建つ、グレーの外壁の一軒家。
大きめのバルコニーとシャッター付きガレージが目を引く2階建てが、楓の自宅である。
昼過ぎに二人が訪ねると、楓が出迎えた。
両親とも勤めに出ており、家には彼女一人だった。
霊的感覚を開くと、二階から気配がする。
階段を上がり、廊下を歩いた先は楓の自室。気配の主は間違いなくここにいる。
ちらりと見ると、部屋の主は「ちょっと散らかってるけど、遠慮しないで」と前に出た。
ノブが回り、ドアが開かれる。
「ひぃッ!?」
内装を見た瞬間、秀人は悲鳴を上げた。
全体の色調はパステルカラーでまとめられ、可愛らしい雰囲気は如何にも乙女だ。
窓際や化粧台の上には所狭しと物が並べられ、察するに懐事情はいいらしい。
ぬいぐるみやクッションが床に散らばっているところを見ると、整頓は得意でないのかもしれない。
(まだ現役かよ…こいつ)
ベッドサイドに飾ってあるゴム質の暗緑色。
薄い黄色に染まった糸で縫われた口と両目。
幼い頃も怖かったが、今見ても凄まじい。
どこで買ったのか全く解らないが、枕元に飾るセンスも一切理解できない。
幽霊の足音―まだ、そうと決まったわけではないが―など、彼女にとっては蚊の羽音程度にしか感じられないだろう。
「あー…それじゃ、早速だが」
唇を湿らせる秀人が、視線を部屋の隅に動かす。
その先を目で追った楓は首をひねった。
秀人が見ているのは、ストライプのシャツを着た、30代に差し掛かったくらいの女性。
視線が合うと、彼女は驚いたように目を瞠った。
「ようやく人に会えた…」
女性は感極まったように声を震わせると、声を抑えてすすり泣き始めた。
座った3人は彼女が落ち着くまで、しばし手持ち無沙汰になる。
「お見苦しいところをお見せして、申し訳ございません」
女性は深々と頭を下げると、石動真理と名乗った。
何故ここにいるのか秀人が尋ねると、こらえるような表情で「分かりません…」と答える。
健介が視線を投げると、楓は顔の前で手をぶんぶんと振った。
「あの…貴方は、既にお亡くなりになっています」
秀人は、我ながら錯乱した事を口にしていると自覚した。
論拠もなく、いきなり荒唐無稽な結論を突きつけられた真理だったが、「そうなんですか」と安堵した様子を見せた。
★
「ねーねー、何て言ってるか分かる?」
健介は顔を寄せてきた楓に「そうなんですかーって」と小声で教える。
「つーか、見てて平気?ぶっちゃけ気味悪くない?」
「へーき、こういうの初めてだから、ちょっと面白い」
楓は健介が考えていたより、柔軟な発想の持ち主らしかった。
これなら変貌した自分を受け容れてもらえるかもしれない、と希望を抱く。
だが、下心を持って打ち明けるのは失礼な気がする。後で秀人に相談してみようか。
「てゆーか、ケンスケは見えてるの?」
「見えてるけど?」
「聞いてなーい!!どういうことー!!いつからー!?」
楓が健介の袖を掴む。
彼女にとっては幽霊が部屋にいることより、幼馴染が霊能力者だったことの方がショックだったらしい。
★
「薄々気づいてたんですよ、そうなんじゃないかなーって」
肩の荷が下りたのか、真理の語調が少し砕けたものになった。
本人曰く、
――会社帰りだったのは覚えている。
次に気づいた時、人の全くいない街に放り出されていた。
お腹は空かないし、眠くもならないが、昼夜が変わるだけの街で過ごす日々は退屈だった。
仕事の引き継ぎは出来ていないのが不安だったが、歩けども歩けども、誰とも会わないので今は気にしていない。
自宅に帰ってみたが道中、誰とも会わなかった。
それならと実家の方まで足を延ばしてみると、今度は正確な場所が分からなくなっている事に気付いた。
内装や過ごした日々は思い出せるのだが、どこを通れば辿り着けるのか、ぼんやりとも思い出せない。
確信できるのは、最寄駅が岩塚であることだけ。
その後は、総当たりと言わんばかりに付近の民家を探索して過ごし、この家を見て回っている時に4人がやってきた。
「死んだって言われてびっくりはしたけど、私以外の全員が消えたって言われるより、納得はできます」
真理は「これからどうしよー」と猫のように背筋を伸ばした。
拍子抜けした二人は顔を見合わせ、楓だけが「何か損した気分…」と唸った。
「いい人そうだけど、これからどうするんだ?」
「うーん、いつまでもこの家に居られるのは、こちらの家族に迷惑が…」
秀人が考えを巡らせていると「今、こちらに誰かいるんですか?」と身体を寄せてきた。
手で示すと、真理は楓がいるあたりに向かって頭を下げた。
方向がずれており、二人の視線は全く交わっていない。
普通の人間は幽霊を見ることが出来ないが、幽霊の方も普通の人間を知覚できない。
「えっと、どういうこと?」
「霊感ある奴じゃないと、向こうも見えねーんだって」
楓にも彼女が置かれている状況が把握できた。
無人の街に人間―幽霊―が一人きり。
物を触る事は出来るが、動かせる時と動かせない時があるらしい。
その寂しさは体験していない者には推し量る事すらできないが、真理は平然としている。
曰く、「スマホも偶にだけど動かせるし、何より仕事しなくて良くなりましたから」だそうだ。
「何で幽霊になると、人間が見えなくなるんだ?」
ありがとうございました。




