表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/41

6月30日~7月1日(1)

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。

『地下鉄が使えなくなったのは痛いよな~』


 もうすぐ期末テストである。

健介達は勉強に勤しむ傍ら、連絡を取り合っていた。

結局、地下街には戻らなかった。

一瞬舞いあがった炎が効果を示したのでは、というのはただの言い訳。

同じ車両に乗り合わせただけの他人より、身近な人々の方が重かった。それだけの事。


 地下街の事は話題に上がっていない。

ただ、怪物に変身する少年を目撃したという、神隠しめいた記述を彼らは発見できた。

とはいえ写真の一つも掲載されていない為、本気にしている者は殆どいない。

この記述は不特定多数の読者からは、創作として扱われているようだった。


『結局バラしたんだなー、あの子』

『落ち着かせる為とはいえ、先輩も思い切った事しましたね』

『お前たち、もう少し深刻になれ』


 健介は少々残念に思ったが、恨む気持ちは無い。

助けたとはいえ、少女に報いる義務はないのだ。


『これからどうやって集まる?』


 健介の住所は、3人から遠く離れている。


『走って?』


 今の健介が本気で走れば、10分で今池に着く。

とはいえ、そんなスピードで街中を疾走する人間が現れたら、瞬く間に噂になるだろう。


『地下鉄が使えなくなったのがイタイな…』

『先輩、確かバイク持ってましたよね?』


 聞くと、秀人は二輪の免許を持っているのだという。

健介は部活に集中していたので、持っていない。

他二人も、遠出する時は交通機関の利用が主だった。

地下鉄路線が断たれた名古屋において、バイクや自動車の価値は日増しに高くなっている。


『俺も免許とろっかなー』


 人目についても問題の無い移動手段が必要だ。

怪奇事件に首を突っ込み続けるなら、市内のあちこちを走り回る事になるだろう。


『今からとって間に合いますかね』

『俺が迎えに行くから、それでいいだろ』

『マジで!?』


 HR前の教室に入った時、省吾と話し込んでいる楓の顔が気になった。

よって、声を掛ける。


「楓、なんか顔色悪くない?」


 何気なく見た顔には、疲労が浮かんでいる。

具合が悪いのかと思ったが、当の本人は愛想笑いで首を横に振る。

健介は深く考えずに流そうとしたが、省吾がそれを許さなかった。

楓はしばしの逡巡の末、溜めていたものを二人に吐き出す。


――家に誰かいるかもしれない。


 先週の初めごろから、物音がするのだという。

コツコツと革靴を思わせる乾いた足音。

足音の方に振り返っても、そこには誰もいない、と言う事が度々あったそうだ。

初めに母親が聞き、次に楓が遭遇した。


 父親は未だに遭遇しておらず、お祓いをしたい、という二人の懇請にも曖昧な態度を続けている。

もっとも足音だけで実害はない為、母親は少し慣れてきたらしい。

楓自身も怪音を怖い、というよりはむしろ、鬱陶しいと思っているようだった。


「俺には力になれそうもないが…相談するなら、ちゃんとした寺や神社にしておけよ?」

「わかってるよー」


 健介は省吾や楓とは、違った感想を抱いた。

チャットで相談してみると、千晃達も似た意見のようだ。

楓に明日、友達を連れて見に行ってもいいか尋ねると、彼女は不審と興味が半分ずつといった複雑な表情で了承した。

健介はバイクを持っている秀人と共に午後2時過ぎ、荻野家に集合する事になった。



 翌日。

四階建てのマンションの隣に建つ、グレーの外壁の一軒家。

大きめのバルコニーとシャッター付きガレージが目を引く2階建てが、楓の自宅である。

昼過ぎに二人が訪ねると、楓が出迎えた。

両親とも勤めに出ており、家には彼女一人だった。


 霊的感覚を開くと、二階から気配がする。

階段を上がり、廊下を歩いた先は楓の自室。気配の主は間違いなくここにいる。

ちらりと見ると、部屋の主は「ちょっと散らかってるけど、遠慮しないで」と前に出た。

ノブが回り、ドアが開かれる。


「ひぃッ!?」


 内装を見た瞬間、秀人は悲鳴を上げた。

全体の色調はパステルカラーでまとめられ、可愛らしい雰囲気は如何にも乙女だ。

窓際や化粧台の上には所狭しと物が並べられ、察するに懐事情はいいらしい。

ぬいぐるみやクッションが床に散らばっているところを見ると、整頓は得意でないのかもしれない。


(まだ現役かよ…こいつ)


 ベッドサイドに飾ってあるゴム質の暗緑色。

薄い黄色に染まった糸で縫われた口と両目。

幼い頃も怖かったが、今見ても凄まじい。

どこで買ったのか全く解らないが、枕元に飾るセンスも一切理解できない。

幽霊の足音―まだ、そうと決まったわけではないが―など、彼女にとっては蚊の羽音程度にしか感じられないだろう。


「あー…それじゃ、早速だが」


 唇を湿らせる秀人が、視線を部屋の隅に動かす。

その先を目で追った楓は首をひねった。

秀人が見ているのは、ストライプのシャツを着た、30代に差し掛かったくらいの女性。

視線が合うと、彼女は驚いたように目を瞠った。


「ようやく人に会えた…」


 女性は感極まったように声を震わせると、声を抑えてすすり泣き始めた。

座った3人は彼女が落ち着くまで、しばし手持ち無沙汰になる。


「お見苦しいところをお見せして、申し訳ございません」


 女性は深々と頭を下げると、石動真理(いするぎまり)と名乗った。

何故ここにいるのか秀人が尋ねると、こらえるような表情で「分かりません…」と答える。

健介が視線を投げると、楓は顔の前で手をぶんぶんと振った。


「あの…貴方は、既にお亡くなりになっています」


 秀人は、我ながら錯乱した事を口にしていると自覚した。

論拠もなく、いきなり荒唐無稽な結論を突きつけられた真理だったが、「そうなんですか」と安堵した様子を見せた。







「ねーねー、何て言ってるか分かる?」


 健介は顔を寄せてきた楓に「そうなんですかーって」と小声で教える。


「つーか、見てて平気?ぶっちゃけ気味悪くない?」

「へーき、こういうの初めてだから、ちょっと面白い」


 楓は健介が考えていたより、柔軟な発想の持ち主らしかった。

これなら変貌した自分を受け容れてもらえるかもしれない、と希望を抱く。

だが、下心を持って打ち明けるのは失礼な気がする。後で秀人に相談してみようか。


「てゆーか、ケンスケは見えてるの?」

「見えてるけど?」

「聞いてなーい!!どういうことー!!いつからー!?」


 楓が健介の袖を掴む。

彼女にとっては幽霊が部屋にいることより、幼馴染が霊能力者だったことの方がショックだったらしい。







「薄々気づいてたんですよ、そうなんじゃないかなーって」


 肩の荷が下りたのか、真理の語調が少し砕けたものになった。

本人曰く、


――会社帰りだったのは覚えている。

次に気づいた時、人の全くいない街に放り出されていた。

お腹は空かないし、眠くもならないが、昼夜が変わるだけの街で過ごす日々は退屈だった。

仕事の引き継ぎは出来ていないのが不安だったが、歩けども歩けども、誰とも会わないので今は気にしていない。


 自宅に帰ってみたが道中、誰とも会わなかった。

それならと実家の方まで足を延ばしてみると、今度は正確な場所が分からなくなっている事に気付いた。

内装や過ごした日々は思い出せるのだが、どこを通れば辿り着けるのか、ぼんやりとも思い出せない。

確信できるのは、最寄駅が岩塚であることだけ。

その後は、総当たりと言わんばかりに付近の民家を探索して過ごし、この家を見て回っている時に4人がやってきた。


「死んだって言われてびっくりはしたけど、私以外の全員が消えたって言われるより、納得はできます」


 真理は「これからどうしよー」と猫のように背筋を伸ばした。

拍子抜けした二人は顔を見合わせ、楓だけが「何か損した気分…」と唸った。


「いい人そうだけど、これからどうするんだ?」

「うーん、いつまでもこの家に居られるのは、こちらの家族に迷惑が…」


 秀人が考えを巡らせていると「今、こちらに誰かいるんですか?」と身体を寄せてきた。

手で示すと、真理は楓がいるあたりに向かって頭を下げた。

方向がずれており、二人の視線は全く交わっていない。

普通の人間は幽霊を見ることが出来ないが、幽霊の方も普通の人間を知覚できない。


「えっと、どういうこと?」

「霊感ある奴じゃないと、向こうも見えねーんだって」


 楓にも彼女が置かれている状況が把握できた。

無人の街に人間―幽霊―が一人きり。

物を触る事は出来るが、動かせる時と動かせない時があるらしい。

その寂しさは体験していない者には推し量る事すらできないが、真理は平然としている。

曰く、「スマホも偶にだけど動かせるし、何より仕事しなくて良くなりましたから」だそうだ。


「何で幽霊になると、人間が見えなくなるんだ?」


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ