6月26日(3)
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
大猿の咆哮に反応して、鋭利な石礫が空中に現れる。
それらは矢の様に放たれ、四人に向かっていく。
健介は咄嗟に非変身者達の前に出た。
千晃は雷電で壁を作り、石の槍を弾こうとする。
石の槍の一部は稲妻によって溶かされるより早く、健介を貫いた。
肩と腰に刺さった槍を躊躇う事無く引き抜く。出血は瞬く間に収まった。
健介は大きく踏み出し、大猿に向けて火炎の鞭を放つ。
火にまかれた大猿は両腕を振り回しながら健介から離れ、広場のあちこちを走り回る。
大猿が雑木林に逃げ去った直後、砂利から焦げた腕が複数突き出た。
「涼葉!アイツを呼べ!」
「あ、わ、うん!」
秀人に呼び掛けられ、涼葉が叫ぶ。
突如、紅蓮の柱がその場に出現した。
色と言い、太さと言い、楠高校の近所に立つ大鳥居によく似ている。
円柱は広場を横切っていた健介の横を通過し、地中から現れた焼死体達を薙ぎ払っていく。
直後に突風が広場に吹き荒れ、現れたコープス達は姿を消した。
見上げた健介の目に映ったのは、飛行機を思わせる大きな影。
機影の先端には爬虫類を思わせる巨大な頭。
《よそ見をするな、坊主》
「…おわぁあ――!」
ドラゴン。あるいは龍。
洋の東西問わず語られる幻獣の代名詞。
その巨躯を覆う真紅の鱗は小型の盾のようであり、逞しい大顎は変身した健介すら思わず不安にさせる。
「ドラゴンさん、あっちに大きな猿がいて…」
《良かろう…》
涼葉が地上から懇願する。
年季を感じさせる声が響き、真紅の天蓋が遠ざかった。再び風が広場に吹き下ろす。
直後にドラゴンは急降下し、雑木林に突撃。
巨竜は男の腕くらいの鉤爪で大猿を引っ掴み、すぐさま異界の空に舞いあがった。
《ん…これより上には行けぬか》
ドラゴンは唸るとグラウンド近くのアスファルトに降下。
脚に掴んだ大猿を地面に叩きつけ、衝撃によって土煙と礫が舞い上がった。
真紅の巨竜は再び飛び立つと首を下に向けて咆哮する。
魔力の籠った吠え声は無色のブレスとなり、仰向けになった大猿の身体を路面諸共、見る見るうちに摩り下ろしていく。
咆哮は十数秒続き、ドラゴンが口を閉じた時には大猿の姿は既に消え、砕けた地面には灰色の塵が広がっているばかりだった。
健介は空を見上げると同時に身体から力を抜き、巨竜の動きを突っ立ったまま、ぼけっと目で追っていた。
全てが終わり、ふと我に返った健介はドラゴンに背を向けて、涼葉に詰め寄る。
「おまっ…何だよアレ!?」
「ご、ごめんなさい!言うの忘れてて…」
《アレ呼ばわりとはな、間抜けの小僧め》
ドラゴンの嘲笑に苛ついた健介だったが、身体を丸めた涼葉を見て、声の調子を落とした。
「…別にいーよ。ちょっとビックリしただけだから。そんなにビビんなよ」
「そ、そうですか?」
顔をあげた涼葉の元に、翼の異形が近づいてきた。
「気配が薄れましたね…」
「あー、そういえば、ちょっと涼しくなったな」
周囲に漂う妖気が消えている。
完全に消えたわけではないが、表の吹上公園よりも気配が薄い。
空気中の湿度が下がり、深呼吸をすると少し爽やかな感じがする。
大猿がこの場所の主だったのでしょう、と千晃は結論づけた。
安堵した健介は変身を解き、涼葉はドラゴンを内的世界に帰還させる。
「そーいや、秀人は…」
「先輩、あそこです!」
姿が見えない秀人は、広場の隅で倒れ込んでいた。
外傷はないあたり、気絶しただけらしい。
健介が抱え上げると、すぐに気が付いた。
「お姫様みてーな奴だな」
「ん…敵は」
「もう倒した。帰るぞ」
四人は入口の雑木林に向かう。
「これなら明日は徳川町に行けそうだな」
「俺、部活あるから、午後じゃないと無理だぞ?」
「わかりました」
「じゃあ、また明日」
四人が空間に走る線から公園に戻ると既に夜だった。
園内には相変わらず人が多く、彼らはスマートフォンを構えてあちこち歩き回っている。
その一部は画面を覗き込んで、燥いだり小声で話し合ったりしている。
怪訝に思っていると、遠くから声が掛けられた。
「おーい、マツケン!アンタも心霊写真、撮りに来たのか?」
「は?心霊写真?」
「誰だ?」
携帯を持ち上げたまま歩いてくるセミロングの女は、同じ学年の本田真沙子。
健介が質問すると真沙子は来園者達について説明してくれた。
――曰く、最近の吹上公園は心霊スポットとして噂になっているらしい。
人影は無いのに足音が聞こえるとか、歩いていると身体を触られたとか、突然灰や小石が落ちてくるとか。
また写真を撮ると、しばしば不審なものが映り込むそうだ。
今の時間にスマホ片手にうろついているのは、そういう好事家なのだ。
「マツケンもこういうの興味あったのか?正直意外なんだが…」
「あー、俺らは…」
健介は秀人に目を遣る。
平静としている様だが、視線に落ち着きが無い。
「海野先輩、大丈夫?」
涼葉が声を掛けると、秀人は弱々しい微笑で応える。
よく観察すると、身体を微かに震わせているのが分かる。
「大丈夫だ。自分で決めた事だからな。…今さら心霊写真程度で驚けるか」
健介が視線を戻すと、真沙子が物珍しげに3人を見つめていた。
「初めてみる3人だな…ちょっと興味があるが」
「あー、俺ら、そろそろ帰るけど…」
真沙子は視線を3人から健介に移す。
「それなら、私も帰るわ。キリもいいしな」
5人は吹上駅で別れると、それぞれの家路についた。
ありがとうございました。