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晶獣行(3)

【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。

 圭がベッドで目を覚ました時、まず気になったのは異様な寒さだった。

室内をゆっくりと見渡してみるが異常は無い。

上着を羽織って窓に歩み寄り、顔を近づけると近所中、積もった雪で白くなっているのが分かる。

圭は狼狽しつつも、この異常現象の原因について考えを巡らす。


 巨獣の夢を見る為に早めに床に就き、今夜も一家族の命を奪ってきた。

もう一つある変身能力とは違い、氷の力は覚醒時に使う事が出来ない代わりに、自分の肉体を私室に置いたまま行動できる利点がある。

一仕事を終えて帰ろうとした所、強力な気配が近づいてきたため、確かめに出た。

そして強力な気配の主である人狼との戦いに突入し、頭に血が上った自分は吹雪を思い切り放った。


(あぁ、私がやったのか)


 納得した瞬間、圭の意識に冷たい気配が入り込んだ。

私室を飛び出し、一階を目指して氷のようなフローリングの上を駆ける。

気配の出所は浴室。脱衣所の扉を開けると、冷気が吹き付けてきた。


 洗面台の前に立った圭の全身が白い光に包まれる。

身体と着衣が溶けあい、10代前半の潤いのある肌が黄色の外皮に変化する。

まもなく圭はバッタと人間を混ぜ合わせたような、四本腕の怪人に生まれ変わった。

これが冷気を統べる獣と共に得た、圭のもう一つの力だった。


「お父さん」


 浴室の戸を引き裂く様に開ける。

父親が浴槽に浸かっていた。凍りついた湯に肩から下を埋めて。

青白くなった肌には霜が降り、生命の温かみが失われているのが見て取れる。


 その頭上。

浴室の天井近くに白い煙のようなものを纏った頭蓋骨が漂っている。


「お父――」


 右の前腕を浮遊する頭蓋骨に叩き込む。

砂に手を突っ込んだような感触が腕に走り、頭蓋骨が床に落ちた。

消滅を見届けることなく、圭は浴槽に歩み寄る。


「おとうさん…おとうさん」


 揺すってみるが首から下が動かない。


「おかーさーん!!」


 母親を探しに浴室を出た圭はリビングに向かった。

まもなく、寝巻を脱ぎ捨てて床に寝転がっている中年の女を発見した。

こちらに向けた顔はとても穏やかで、その旅立ちに苦痛は無かったらしい。


「お母さん!」


 揺すると言うより、転がしても母親は目を覚まさない。

触れた肌はやはり冷たく、脈は完全に止まっている。

両親の死を理解した圭は、母親の傍に座り込む。


 自分はやられたからやり返しただけだ。先に手を出したのは向こう。

皆が手を出して来なくなるなら、それで卒業までやり過ごすつもりだった。


 氷の獣に変身すると、腹の底から押し殺していた怒りが湧き上がってくる。

気が済むまで暴れて目を覚ますと、心が少しだけ軽くなった。

だから今日に至るまで、胸がむかつく夜は獣になって町を彷徨っていたのだ。

思うが儘、湧き上がる怒りに任せて暴れ狂ったそのツケが今、圭に降りかかってきた。


 これからを考えると、胃の腑が重くなる。

可笑しなことを言っている自覚はあるが、それでも怖いものは怖い。

この家ではもう暮らせないのだろう。保護した大人達は自分の秘密に気が付くだろうか。

親戚の家で暮らすのか、それとも施設に送られるのか。


 圭は変身を解くと母親の亡骸の傍に横たわった。

仰向けになり、ゆっくりと目を閉じる。警察や消防署に通報することすら億劫だ。

だから自分を取り巻く流れに、黙って身を任せることにした。


ありがとうございました。

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