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ただの欠陥魔術師ですが、なにか?  作者: 猫丸さん
三章 実地研修編 後編
93/106

そして欠陥魔術師は一歩を踏み出す

 ユウリの行動は早かった。


 いくら"加護持ち"であるフレアだからといって、いくら圧倒的な力を有するフレアだからといって。

 岩竜を始めとした膨大な数の魔獣や、"汚染"の名を持つ災厄とさえ言われるゾフィネスを相手にすることは不可能である。


 情報が間違っていることをただひたすら願いながら、マリーか悪夢の中で眠る布幕のもとへと急いで足を動かした。


「フレアッ!」


 鋭い声と共にユウリはその布幕の中へと足を踏み入れた。

 中から、悪夢を見る被害者に付き添っていた者達の視線がユウリへと集中する。しかし今のユウリにはそのような些事を気にしている余裕はなかった。


「――」


 いないのだ。

 フレアが。


「――」


 ふと、歩き出す。

 向かう場所は一つ。オルカの遺したたった一つの遺産である、少女のもと。


 赴いて、暴れて息も絶え絶えなマリーの手のひらを眺める。そこにはフレアが彼女からもらったはずの髪留めの紐が握らせられていた。


「――ッ」


 ユウリは確信した。フレアはここを去ったのだと。


 そう気付いた時には再び足を忙しなく動かしていた。


 次の行き先はステラの眠る布幕だ。

 レオンならば何かを知っているかもしれない。そんな淡い願いを抱きながら、彼のもとへと向かって。


 そして。


「――何をしてるんだよ。レオン」


 立ち止まった。

 立ち止まらなければならなかった。


 ユウリの視界の先に探していたレオンがいるから、ではない。

 その彼が荷を背負って、腰に剣を掛け、いかにもこれから戦地へと赴く兵士の表情を浮かべていたからだ。


「ユウリ、か」

「何をしてるんだよ。レオン」

「……本当は、誰にも気付かれたくなかったんだがな」

「いいから答えろ。何をしてるんだ、レオンッ!!」


 鋭い声が。

 自分でも驚くほど鋭い声が出た。

 けれど内心の驚きを表情には出さず、ただ真っ直ぐとレオンへ視線を向ける。


 そんなユウリの様子に、レオンはどこか諦めたような表情で口を開いた。


「ステラを救いに行く」

「――」

「王宮騎士団の到着は一週間後。確かに彼らの到着を待つのが一番賢明だろうが、それではステラは間に合わない」


 "汚染"の呪術から覚めるまでの期間はおよそ一週間ほど。そうすれば呪術の効力が切れて、時期に目を覚ます。

 けれどそれまでにステラの体が保つ可能性は、限りなく低い。例え持ち堪えたとしても気が狂っていることも十分考えられる。


「覚えているか、ユウリ。授業で習った呪術の解除方法」

「――確か、一つ目は呪術自体を受けないこと、か」

「そうだ。しかしすでにステラは受けてしまってる。二つ目の治癒魔術も"汚染"の呪術は解けないと言われた」

「三つ目は呪術の上書き。でも呪術師なんてここには存在しない」

「だから四つ目だ。強制的に呪術師の意識を断つ」


 覚悟を秘めた視線と共に、その言葉が口にされた。それはつまり、意味するところは――。


「"汚染"ゾフィネスを、倒す」


 レオンは腰に掛けられた剣の柄を握って、その目から漏れる金色の光をユウリへと向けた。

 強い。強い。強い覚悟を込めて。


「無理だ」

「どうしてわかる」

「無理だろ。相手はA級傭兵すら簡単に殺す奴だ」


 現に何人も彼女の犠牲者が出た。

 聞く話によると、"雨降らし"と恐れられた、元A級傭兵にしてギルド支部長を務めていたラディーネが、遺体として発見されたそうだ。

 殺した者は当然、ゾフィネス。

 先ほどあったマリウスの話では、魔術師担当の教師をしていたロベルト・ディアヌスも彼女の手によって殺されたそうだ。


 どちらもユウリが手の届かない猛者である。

 それを簡単に殺してしまうような犯罪者を、学生であるレオンが相手にできるはずもない。


「だから……」

「――数値。見た目。表面上のものだけで人の価値をわかった気でいると、足元を掬われることになる」

「――」

「確か君は、僕にそう言っていたな」


 覚えている。


 ユウリが学園に入学してから、まだ間もない頃のこと。

 魔力測定の際にユウリが学園最低値を叩き出したことで、レオンがそれについて指摘した時、ユウリ自身が口にした言葉である。


「今でも僕の心には、この言葉が刻まれている。あの時の僕はなんて思慮の浅い人間だったのだろうと、自覚させられた」


 その言葉を、彼は今でも一言一句違わず覚えていた。心の中で刻み付けて、それを己の糧としていた。


「だから、戦うんだ」

「戦う……?」

「ああ。君の言う通り、僕程度の力では到底及ばないかもしれない。でも、それはまだ確定じゃない。実際にやってみなければわからないということは、君との模擬戦で学ばされた」


 真っ直ぐと。

 ただ真っ直ぐと。


「君は魔導社会において手足を捥がれたに等しいハンデを抱えている。普通なら誰もが君にまともな期待など抱くはずがない。それでも、君は僕に勝った」

「――」

「"暴れ牛(オックス)"を下した。再生者の刺客をなぎ倒した」

「――めろ」

「誰でもできることじゃない。それを、一番不可能にすら思える君がやったんだ。ならば今度は僕もそうありたい」

「――やめろ」

「例え勝てない可能性の方が限りなく高くても、ゼロじゃないんだ」


 光が。

 強い光が。

 ユウリを襲う。


「だから――」

「――もう、やめてくれ」


 その先を、ユウリは言わせなかった。

 力なく項垂れるように、脱力する。


 レオンの浄化の如き光を、ユウリは拒んだ。


「……俺は、そんな大層な奴じゃない。魔力は碌に扱えず、武術の才能もない。魔術師相手には滅法弱くて、魔戦士相手にも武具で押し切られる」

「そんなことは」

「そんなことある。あるんだよレオン。魔導社会にまともに溶け込むことのできない欠陥品。それが俺、ユウリ・グラールだ」


 ははっ、と。

 諦めたような笑みを、ユウリは溢した。


「欠陥魔術師とはよく言ったもんだよ。そうだ。俺は欠陥魔術師なんだ」


 開き直る、というにはあまりにも悲壮感が漂って来る。

 この言葉に含まれるのは、この先の暗闇に絶望するユウリの心だ。


「魔術師を目指したくても目指せない、欠陥品。高みにいる爺さんにだって……」


 側にあった壁に、背中を押し付ける。

 一人では立てない。何かに縋りつかなければ立つことすらできない。


 だから、何かに頼るしかない。


「……どんなに憧れてても、どんなにあの後ろ姿を追いたくても。俺にはそれをする権利さえないんだ」

「――」

「それが欠陥品である俺の運命なんだよ」


 肩を落とす。

 重く息を吐き出す。


 ユウリを覆うのは、圧倒的な諦念だ。


 彼は自らの可能性を、諦めている。


「憧れたかった。あんな風になりたかった。目指したかった。でも、無理なんだよ――俺は欠陥魔術師だから」


 殻が破れる。

 ボロボロと、感情の殻が砕けていく。


 己の中に募った想いが――漏れ出ていく。


「俺にはどれだけ努力したって限界がある。普通の人よりも遥かに低い限界が」

「どうしてわかる?」

「わかるに決まってる。魔力はロクに使えない。魔力をロクに受けてはならない。こんな欠陥を抱えた俺に、これ以上どうしろって言うんだよ」


 そうだ。

 どうしろと言うのか。


 ユウリは己の限界が近いことを悟っていた。

 魔力総量はどれだけ魔力を消費しても伸びず、魔力抵抗力は大陸中の中でも断トツで最低値。


 間違いなく。

 誰がどう見ても。

 救いようのない欠陥品。


「なのにお前は俺を理解したような目をする。マリーやメルだってそうだった。俺はこれ以上、どうすることもできないってのにさ……」


 今でも痛い。

 目の前のレオンの期待するような視線が。

 記憶の中のオルカが、マリーが、メルが。


 自分を憧れの視線で見つめてくる。

 その事実が。


 自分は上に見られるような人間ではない。

 ここが限界地点なのだ。後に残るのは停滞の毎日だけだ。


 だからこそ、ユウリは己を欠陥魔術師と馬鹿にされても、軽蔑されても、何も思わない。


 事実、そうだから。

 自分はこれ以上登ることのできない欠陥魔術師だと、自分自身が諦めているから。


「わかっただろ。俺はお前らが思うような人間じゃない。本物の欠陥品――欠陥魔術師なんだ」

「――」

「この分じゃ、俺は誰にも何も言える資格なんてなかったんだよな。だから――」


 肩を落とす。


 レオンによく、偉そうなことを言えたものだ。その資格を自分は持っていないはずなのに。


 他の誰にだって、ユウリ・グラールよりも遥かに可能性を残した者しかいない。

 ユウリ・グラールほど、可能性を潰された者などいるはずもない。


「俺に期待しないでくれ」

「――」

「俺を放っておいてくれ」

「――」

「俺は誰よりも弱く、小さく、惨めな――これから先がない、欠陥魔術師なんだから」


 ユウリには憧れがあった。

 目指したい場所があった。

 届きたい背中があった。


 けれど魔力門がない。

 魔力抵抗力がない。

 ユウリの特異な体質が、巨大な障害となって前へと立ちはだかる。


 前を通ることはできない。

 大きすぎて登ることもできない。


 だから、諦めた。

 ユウリは諦めたのだ。


「――だったら」


 諦めた、はずだった。


「だったら、なぜ努力することを止めないんだ?」

「――は?」


 突然の声。

 沈みかけていた体が、一度浮上するような錯覚すら覚えた。

 ユウリはゆっくりと視線を上げる。


(なんで……)


 変わらず、強い瞳を向け続ける。

 眩いばかりの輝きを残すレオンが、そこにはいた。


「君は自分の限界はここだと、諦めていると言ったな」

「……ああ。そうだよ」

「なら、どうして君はまだ足掻くんだ?」

「足掻く……? 足掻いているように見えるか」

「足掻いているだろう。魔術を覚えるために、深夜にも関わらず君は修行を続けている」


 言われて。

 息を呑んだ。


「魔術だけじゃない。マリー、メルクレアだったか。彼女らのことについても、君はどうにかしたいと思ってる」

「なんでそんなことがお前にわかる……ッ!」

「昨日の夜、君が彼女達の側でずっと立ち尽くしているのを見たからだ」


 ハッとレオンを見る。

 見られていることに対する驚きもそうだが、その心を見透かされたことにも驚きを示した。


「君は全てのことをどうにかしたいと思ってる。まだ諦めたくないと思ってるんだ。違うか?」

「違う……。だって俺は……」

「君は欠陥魔術師なのかもしれない。だけど、それがなんだというんだ。そんなもの、ただの言い訳だ」

「言い訳……?」


 レオンの言葉が、突き刺さる。


「言い訳、って。今、言ったのか?」

「ああ。言った」


 再度問い直しても、結果は変わらない。

 レオンは変わらぬ姿勢で、ユウリの前にあり続ける。


 この時点でユウリが浮かべた表情は、怒気を含ませたものだった。


 憤怒の感情が湧き上がってくる。

 この欠点の所為で、これまでどれだけの苦労を背負わされたのかを。

 この欠点の所為で、諦めたくないものまで諦めなければならなかったことを。


 この目の前の男は知っていて、それを口にするのかと。


「お前。下手にそれ以上口にしたら――」

「させてもらう。君は欠陥魔術師を言い訳にしている、ただの臆病ものだ」

「――ッ!」


 殴った。

 咄嗟の動きでレオンへと肉薄。

 その後、魔波動の力も《身体強化》も使わず、ただの拳で彼を殴りつけた。


 が、受け止められた。


 直情による一撃は、レオンの手のひらにしっかりと受け止められていた。


「――ッ」


 ピクリとも動かない。

 《身体強化》すらも忘れたユウリの拳は、レオンに受け止められたまま、離すことができない。


 目の前の彼が力を込めて握っている。

 離さないと、ばかりに。


「君は確かに、開始地点は他の人間より劣っているのかもしれない。君が欠陥魔術師だと自分で認めるなら、そうなんだろう」

「――」

「だけど、だからなんだ? 欠陥魔術師が高みを目指してはいけないと、誰が決めたんだ?」

「ぁ――」


 高み。

 高みを目指す。


 師であるフォーゼ・グラールに拾われて、あの人のように他人に手を差し伸べられる男になりたいと思った。

 自分を救ってくれた"――"のように、他人の側で笑える男になりたいと思った。


 自分ではなれないと。

 半ば諦めていた彼らの背中。


「ユウリ・グラール」


 しかしレオンは。


「君は確かに欠陥魔術師なのかもしれない。誰にもない欠陥を、君は抱えているのかもしれない」

「――」

「しかし、ただの欠陥(・・・・・)だ! 君が夢を諦める理由にはならないッ!」


 ただの欠陥だと。

 レオンはそう言った。


「君は今までだって、その欠陥を抱えながら歩いてきただろう!」

「それ、は」

「今だって、その欠陥を抱えながら歩いているだろう!」

「――」

「ならば! これからだって欠陥を抱えながらでも歩いていけるッ!」


 簡単に言ってくれる、と。

 ユウリはそう思った。


 所詮は人の気持ちもわからない者の戯言だと、切って捨てたかった。


 実際にレオンも体験してみればわかるはずだ。

 ユウリの体質が、どれほどの障害になることかを。


「僕の知るユウリ・グラールはこの程度の――ただの欠陥(・・・・・)如きに屈する男じゃないからだ!」


 なのに。


 どうして彼の言葉に耳を貸す自分がいるのか。


 どうして彼の言葉を聞きたいと思う自分がいるのか。


「例え欠陥魔術師だろうと、ただの欠陥を抱えただけの(れっき)とした魔術師」

「――」

「他の者と何も変わらない。憧れる権利がある。目指す権利がある。違うか?」

「でも、どうしようもないだろ……ッ!」


 障害はあまりに大きい。

 果たして自分に登れるのか。自信なんて湧いてくるはずもない。


 目指すことなど、到底できるはずが――。


「本当に、君はそう思うか?」


 しかしそれすら否定される。


「君はいつだって何とかしてきたはずだ。大きな障害を抱えようと、諦めずに足掻いてきた」

「でも、これ以上は登れない」

「別の道を行けばいい。先に進むために、障害を乗り越える必要はない」

「乗り越える必要が、ない?」


 どういう意味なのかと、ユウリは問う。


 返ってきたのは。


「剣で駄目なら魔術で。魔術でも駄目なら他を探せばいい。そしてもしもお前の中でまだ駄目じゃあないと叫ぶものがあるなら、まだ進んでみればいい。――この言葉は、誰の言葉だったか覚えているか?」


 目を、大きく見開いた。


 覚えている。

 忘れるはずもない。


 他でもないユウリ自身が、(レオン)へと送った言葉だ。


 そうだ。そうだった。

 ユウリはこれまで、障害の先へと進むために何をしていたか。


 迂回していた。

 穴を掘っていた。

 どんな道をも模索してきた。


 ――人間誰もが、何もかも持ってるわけじゃない。当たり前のものですら、持ってない人はいるんだ。


 ユウリが言った言葉だ。


 ――無いなら代わりを探す。探してなければ作ればいい。そうやって――生きてきた。


 ユウリ自身が言った言葉なのだ。


 目頭が熱くなる。

 暗闇の中を彷徨っていた。

 手探りで探してきた、これまでの日々を思い返す。


 どうして気付かなかったのだろうか。

 答えはすでに、自分の中にあったのに。


「さあ。もう言い訳は聞かないぞ。君は障害を前にした時の答えを、すでに持っているのだから」


 逃げ場などないと。

 そのような道を塞いでやると。


 レオンはユウリと視線を結ぶ。


 そして――。


「君に問う」

「――」

「聞くぞ、ユウリ!」

「――ッ」


 声が、胸に響く。

 顔を上げると、光が溢れてくる。


 道が――開けてくる。


「君は今、一体どうしたいんだ!? なれないとか、諦めるとか、そういったものは度外視だ! 君は今、何を望むッ!!」


 求めてもいいと。

 そういった。

 可能性はゼロではないと、彼にユウリが示したように。今度は彼がユウリに示している。


「俺は――」


 あの老人の手を、ユウリは忘れられない。


「俺は――」


 あの"――"の笑顔を、ユウリは微かに覚えている。


「俺は――」


 それらが。それらが。


 自分へと差し出される彼女の手。


 優しさを向けてくれた白銀の少女と重なった。





「オルカの仇を打ちたい」

「ああ」

「メルやステラ、マリーの呪縛を解き放ちたい」

「そうだな」

「みんなで笑い合いたい」

「僕もだ」


 そして。


「フレアに、笑って欲しい」


 記憶の中の朧げな少年、"――"。

 覚えていない。覚えていないはずなのに、微かに覚えている。


 そんな"――"とフレア。

 その笑顔が、酷く重なるから。


「――なぁ、レオン。俺みたいな欠陥品が、何かを求めてもいいのかな……?」


 ポツリと漏れたのは、弱音だった。


 自分は他の者とは違う。

 圧倒的に低い限界値がある。

 だから求めても叶わない。叶うはずがないと心の底で諦めていた。


 しかしレオンは肯定する。

 ユウリを、彼の存在を、肯定する。


「いいに決まってる。何より、それは許可を求める必要がないものだ」

「――」

「君が決めることだからな」

「……そっか。そうだよな」


 言葉にされて、体全体で噛み締める。


 自分が決めることだ。

 彼の言葉は最もである。

 だからこそ、ユウリがやりたいことをレオンは問うたのだろう。


 自分のやりたいこと。

 先ほど溢れ出した本音が、その答えだ。


 ならば。


「――俺も行く」


 ならば、決めた。

 できるかできないか、ではない。

 やるのだ。


「俺も戦うよ、レオン」


 示してくれた道は、茨が生い茂っている。

 進めば必ず無事では済まない。

 でも、決めた。迷うことはもうしないと。


「俺はなるんだ。あの背中のように」


 誰もを救えるわけではない。

 だが、自分が救いたいと思った人を救えるようになりたい。そう強くありたい。


 フォーゼ・グラールのように。

 "――"のように。

 自分が憧れた人のように――。


 一度は諦めた。

 自分ではなれないと思ったから。

 でも心は諦めたくなかった。

 例えそうあれなくても、目指すだけなら誰にもできる。


 その一歩すら戸惑っていたユウリであるが、今は違う。


「メルやステラを、助ける」


 足を。


「マリーを、助ける」


 足を動かす。


「フレアを、助ける」


 どれだけ大きな障害が立ちはだかろうと。


「俺は――俺が、ゾフィネスを倒す」


 ただの欠陥魔術師(ユウリ・グラール)は、一歩を踏み出した。


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