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ただの欠陥魔術師ですが、なにか?  作者: 猫丸さん
一章 学園入学編 前編
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測定結果

「新入生徒の中にも総会という存在を知っている者もいるとは思いますが、一応説明させて頂きます。総会とは王立ルグエニア学園のあらゆら行事の運営、警備、その他の項目についてを担当する総合組織です」


 鈴のように綺麗な声が会場内に浸透していった。


 ルグエニア王国第二王女、セリーナ・ルグエニア。


 輝いているように感じられるほど美しい金色の長髪を垂らし、深緑の瞳は自身を見つめる新入生達へと向けている。

 容姿だけを見ても大陸屈指の美貌。しかし声を聞けばまるで天使が言葉を発しているかのような印象をも抱かせるという。


 相手を魅了する上でこの上ない逸材と言える、恐るべきカリスマ性の持ち主であった。


 彼女の口から説明されるのは、学園総会というものについて。

 学園総会というのは生徒が生徒自身によってあらゆる学園行事の運営を行う組織のことだ。

 学園行事の運営や学園都市の警備はもちろん、学園の方針にも携わることができる。ゆえに総会というのは学園においての地位が非常に高く、また学園を卒業した時にキャリアとして活用できるものでもあった。


「総会には本部と実働部の二つが存在しています。主に本部は司令を、実働部は司令を受けての行動を担当します」


 内部構造は単純なもの。

 司令を出す本部と実行に移す実働部の二種類に分けられる。

 数はおよそ、実働部は五十人程度。そして本部員は五人。これらの人数で学園総会を運営していく。

 学園総会の実働部と本部を合わせると、メンバーは全員で六十に届くかどうかといったところだ。


 これは多いのか少ないのか。そう問われれば、多くの者は少ないと答える。

 学園生徒の人数は五千人を超える規模を誇る。更に言うなら、学園都市ロレントの全般的な警備などを担う部分もあるため、実質的に言うと人手不足と言わざるを得ない。


「以上が簡単な学園総会という組織の説明です。新入生の皆さんがすぐに総会という組織の全容を知るのは難しいでしょうが、次第に理解していかれると思いますのでご安心を」


 そのような学園総会。

 要するに、学園を取り仕切るために生徒が持てる最高権限を所持することが許されている組織、ということである。


 言葉にするだけなら簡単だが、もちろん苦労するべき点が山のようにあるのだろう。

 しかし目の前のセリーナはそれをおくびにも出さない。第二王女はただ、新入生へと輝くような笑顔を向けるばかりである。


 彼女のことを、ユウリはほんの少しだけ知っている。

 なにせつい昨日、目の前の彼女本人と直接言葉を交わしたのだから。


 あの時の佇まいや雰囲気から只者ではないとら思っていたが、しかしこの国の王女様だとは夢にも思わなかったというのがユウリの本心である。


(言葉遣いとか全く気にしてなかったけど、打ち首とかにならないよな……?)


 今更ながらに少しばかり不安が込み上げてきた。


「前置きが長くなりましたね。では私からの挨拶を述べさせて頂きます」


 ルグエニア学園における学園総会という組織の説明を終えて、セリーナはすぐさま話を自らの挨拶へと戻す。


「このルグエニア学園では、能力が問われます。家柄、地位、権力。そのようなものはここでは役に立たなくなる」


 地位を軽く見るような発言を、他ならぬ王国の王女の口から発せられた。

 それには流石の新入生達も驚いたのか、目を大きく見開いている。


「それはすなわち誰にでも上へと上がる権利があるということです。今のあなたに絶望することはありません。未来のあなたに誇れるようになれれば」


 吸い込まれるような、深緑の瞳。

 いや、事実大半の生徒は彼女に釘付けである。

 その光景に、ユウリは少しだけ背筋を震わせた。


「在学中ではありますが、私はあなた方が頂きへと登ってくることを待ち望んでいます。それでは皆さん、ルグエニア学園において己を切磋琢磨に研ぎ澄ませていけるよう、頑張ってくださいね」


 言葉を言い募り、一礼。

 優雅なその動作に誰もが最初は息を呑み、そして大きな拍手を彼女に送った。


 その中で一人、ユウリ・グラールは――。


「誰にでも上へと上がる権利、か。それは欠陥品(このオレ)にも言えることなのか。第二王女様」


 ――まるで夢から覚めたような、どこか冷ややかな視線を送っていた。



 ★


 学園総会本部長、セリーナ王女の言葉が終わり、いくつかの注意事項を聞かされて入学式は終了した。


 本格的な授業は明日から始まる。

 ということで今から行われるのは、自分の所属する教室の確認と宿泊先の寮への案内のみ。


「俺の所属は――獅子組っと」


 手渡された一枚の紙には獅子の絵が描かれていた。


 クラスは十以上もあり、その中の一つに生徒は割り振られる。

 噂によれば、割り振られる基準というものはないらしい。ランダムに選ばれて学園側によって担当クラスを決められる。が、果たして本当なのかはユウリも知らない。


(さぁて。どんなクラスなんだろうな)


 獅子組は学園の敷地内にある校舎の中でも最奥地の校舎に教室が用意されているので、他の校舎と比較すると講堂からの距離は遠い。

 歩きながらも多少なり億劫になっているところで、ユウリは遂に教室へとたどり着いた。


「――」


 獅子組。

 どこか威圧的な獅子の絵が刻まれた扉がユウリを出迎える。

 廊下側にある窓から薄っすらと中の様子が覗けるが、ほとんど全員が着席を済ましているようだ。


 後ろを覗くとちらほらと人がこちらに向かって来ている。あれらも自分と同じく、この獅子クラスに割り振られた生徒だろうかと視線を向けていたところ。


「――あれは」


 ユウリは一つ、見覚えのある生徒に目が止まった。


 白銀色のセミロングヘアーを靡かせ、やや吊り上がりがちな目の中にサファイアのような碧眼が覗ける。

 他の生徒と同様、黒を基調とした制服の姿にまさかとは思ったが。


(なるほどな)


 フレア。

 記憶違いでなければ確か、それが彼女の名前だったはず。

 学園都市ロレントへの街道のど真ん中で飢えに耐えかねていたユウリに対し、干し肉を分け与えてくれた人物。

 そういえば彼女は学園都市を目指しており、ここの新入生になるのだと口にしていた。


 どこかで会えるかもと密かに思っていたが、クラスが同じになるとは予想外である。


「――あんたは」

「よっ、久しぶり」


 少女もこちらに気付いた。

 というわけで、ユウリは旧友の再会のように馴れ馴れしく彼女へと近づいていく。


「ユウリ、だっけ」

「そうそう。まさかこんなところで会えるとはな」

「それはこっちの台詞よ。まさかここの新入生だったなんて」

「あれ。言ってなかったっけか」

「聞いてないわね」


 そこでユウリは自分の中にある記憶を探っていく。

 探す。探す。探す。

 数秒と間が空く。


 結論が出た。言った記憶がない。


「なるほど。まあそういうことで、これからよろしく」


 言ってないのならばここで言えばいい。そんな軽い考えのもとから、ユウリは少女に対して手を差し伸べる。


 友好の証、つまりは握手を求めた。


「――」

「ん?」

「……あんた、あんまり私に関わらない方がいいわよ」


 差し出したその手は、少女の手と交わされることなく。

 フレアはそのままユウリの横をするりと通り過ぎて、教室の中へと入っていった。


「今の――」


 彼女の表情。

 複雑な思いが絡み合って生まれたような。

 感情がごちゃ混ぜになった、そんな顔であった。


 先ほど見せたフレアの表情に、疑問を膨らませるユウリは少し、首を捻る。


「おい君。前を通れないからそこを退いてくれないか?」


 少女について、思考の渦に飲み込まれそうになっていたところ、ユウリは背後から聞こえた一つの声に我に返った。

 ふと後ろを見ると、これまた見覚えのある顔が――。


「――誰だっけ?」

「……まあ、名は名乗ってなかったな」


 目の前に立つ金髪の少年は、何やら額に手を当てて溜息を零している。

 自分が何かをやらかしたかと、最初こそそう思ったがそのような記憶は一切ない。


 いや。


(そういえば、さっきの……)


 入学式の際中に食事を進めていたところ、この少年から注意を受けたことを思い出した。どうやらこの少年も、ユウリと同じ獅子組に割り当てられたようである。


「まあいい。僕の名はレオン・ワード。普通、学園に通うような連中は僕のことを少なくとも知ってはいるはずなんだが」

「ごめん全く知らない」

「……わかってる。君の田舎臭い態度を見れば予想くらいつくさ」


 レオン・ワードと名乗った少年。

 金色の髪と、同じく金色の瞳を所有している。

 そのような少年は、もはや何を言っても無駄だろうと完全に諦めたような顔をユウリに向けていた。


「とにかくそこを退いてもらおうか。邪魔で通れない」

「ん、ああ」


 一歩、ユウリは足を退いた。

 同時にレオンは鼻を鳴らしてユウリの横を歩いていく。

 ギギッと扉を開いて先のフレア同様、彼は中へと足を踏み入れていく。


「おっと。俺も入んないと」


 彼の後ろ姿を見て、自分もこの教室に用があったことを思い出し、すぐさま教室の中へと入っていった。



 ★


 教室へと入っては、近くにあった適当な席に座る。そして待つこと数分。


 扉が開かれ一人の男が入ってきた。


「――全員揃っているようだな」


 男は扉を開くと、まずは着席する生徒を一望。

 次いで、そのまま教壇の上へと進む。そして口を開いた。


「では紹介をさせてもらう。この獅子クラスの担任を務めさせてもらうことになったズーグだ、よろしく頼む」


 ボロボロに擦り切れた灰色のローブ。それを身に纏った中年の男性である。

 ズーグと名乗ったその男はこのクラスの担任教師であることを宣言した。


「入学式にも言われた通り、お前らは門を潜ったのではなく叩いただけだ。その門を開くことがてきるかどうかはお前達次第。決してこの学園に入学できたからといって、気を緩ませるようなことはしないよう心掛けろ」


 やんわりと整えられた茶髪に鋭さを残す茶色の瞳。

 中肉中背のその姿は、見た目だけなら至って普通の容姿だと言えよう。


 だが、ズーグから発せられる雰囲気が歴戦の猛者を思わせるそれであった。


「――ッ」


 獅子クラスにいる生徒全ての視線が彼へと集中している。それはユウリとて同じこと。


 最初こそ普通の教師が入ってきたと思い込んだ。

 しかし今は違う。


(やっぱ大陸一の学園ともなると、教師もすごいのな)


 対峙するだけでこのプレッシャー。

 自然と視線が鋭くなっていくのを自覚させられる。


「ではさっそくだが、今から魔力測定を行ってもらう。一般試験を経験して入ってきた者も再度、正確な情報を測るためにも受けてもらう」


 ズーグは言葉と共に、一つの魔導機械を取り出した。


 魔導測定器。

 魔術師や魔戦士にとって必ず必要となるべき二つの項目、魔力保持量と魔力抵抗力を測るための機械である。


 魔力保持量とは、体内に保持できる魔力総量のことを。

 魔力抵抗力とは、魔力に抗うための抵抗力の強さのことを指す。

 どちらもこの魔導社会を生きる上では非常に重要な項目だといえるものだ。


「知っての通り、魔導社会と謳われる現在では魔力というものは非常に重要なものとなった。魔術を扱うことを生業とする魔術師はもちろん、一般人にもそれは当てはまる」


 教師の言葉。

 それは今では周知の事実となっており、反対する者など誰もいない。

 魔力というものはそれだけ今の時代には必要不可欠なものとなっている。


 この世界には魔素というものが大気中に含まれており、生物はそれを魔力に変換して体内に取り込む。

 魔術の扱いを生業とする魔術師はこの魔力をいかに多く保持しているかが特に重要視される者達だ。が、普通の民間人でさえ生活魔術の使用のために多少の魔力は必要とされる。


 今の時代では、魔力を消費することが当たり前となっている。


「当然のことだが、魔力はより多く持っていた方が有利だ。そしてそれは魔力抵抗力も同じ。抵抗力が大きければ敵から受ける魔術のダメージ、及び影響を低くすることができる」

「――」


 教師の言葉にユウリは黙り込んだ。


 彼とてその程度の知識は知っている。

 否、ここにいる全ての生徒が知っていることだろう。

 それを敢えて彼が口にしているということは、魔力を待つものにとって二つの項目がいかに重要であるのかを強く物語っていた。


 魔導社会における魔導機器。そして魔術。

 魔導機器というのも、結局は魔術の応用だ。

 生活の基盤というものは突き詰めると、魔術の恩恵によるものがかなりの割合を占めている。


「ではその二つの項目を測ってもらうことにしよう。そこの君から順に、前へ」

「あ、はい!」


 指名され、右側の席の前から順番に教壇の方へと呼び出される。つまり皆が見ている中で自身の魔力保持量と魔力抵抗力を測られるということ。


 魔力測定器から伸びる線は腕輪に繋がっており、それを生徒に嵌めて測定の準備をする。合図と共に生徒が魔力を込め、その結果が示された。


「――魔力保持量、93、Cランク。魔力抵抗力、92、Cランク」


 そのまま、読み上げられる。


 最初の生徒は魔力保持量と魔力抵抗力、共にCランクであった。

 これは一般的な人間の中ではそれなりに高い方であり、魔術の使用を生業とする魔術師にとっては平均程度であることを指す。


 学園の生徒であればこれが一般的なレベルなのだろう。

 他の生徒は驚いた様子もなく、次の生徒へと視線を向けた。


「次。――魔力保持量、56、Dランク。魔力抵抗力、123、Bランク」

「……はい」


 次の生徒は先ほどと比較すると、魔力保持量が低く魔力抵抗力が高い数値を計測される。

 魔力保持量のところで「うっ」と恥ずかしげに呻き、魔力抵抗力のところで周囲から驚嘆の声が上がったことから、この学園の平均はCランク程度なのだろうとユウリは予想をつけた。


 なるほど、こいつは――。


「次。魔力保持量、113、Cランク。魔力抵抗力、78、Dランク」


(――まるで公開処刑だな)


 次から次へと測定される生徒を見ながら、ユウリはそのような印象を持った。


「そろそろ君も前に行った方がいいんじゃないのか?」

「ん?」


 測定風景を眺めていたユウリの隣から声がする。

 視線をそちらに向けると、彼の横には金色髪を携えた少年、レオン・ワードが立っていた。


「まさか自信がないから測定を誤魔化そうなんて考えてるんじゃないだろうな」

「その手があったか。頭いいな」

「……」

「あれ、どうしたんだ。頭でも痛いのか?」

「ああ、別の意味でね……」


 頭を抱え出したレオンに対して、ユウリは首を傾げる。その姿にレオンは一つ、溜息を吐いた。


 同時に。


「まあいい。その目にしかと僕の数値を刻みつけておくんだな」


 鋭い視線を飛ばし、レオンは前へと進んでいく。

 どうやら次は彼の番へと差し掛かったようだ。


「次はレオン・ワードか」

「よろしくお願いします」

「ああ――む?」


 計測していたズーグは僅かに驚いたように、眉をピクリと動かした。

 出された数値に彼が驚愕したのは初めてのことである。


「魔力保持量、203、Bランク。魔力抵抗力、289、Aランク」

「ふん」


 出された値はこの教室においては最高値。そしてAランクを叩き出したのも、この獅子組において彼が初めてだった。


「おいおい。Aランクなんて学生の、しかも新入生が出せるランクなのか……?」

「あの人って確か"剣皇"の子息、レオン・ワードじゃないかしら」

「噂には聞いてたが……。数値だけなら本職の魔術師並み、いやそれ以上だな」


 教室の至る所から感嘆の声が漏れる。それだけ彼の数値は高いと言えるのだろう。

 測定を終えたレオンが鼻を鳴らして元の席へと戻って来た。


「さて、次は君だな?」

「――」


 ユウリの横を通り過ぎる時、レオンは呟く。

 彼の次の生徒が測定を始めている光景を目にしたユウリは、そこでゆっくりと立ち上がった。


 彼の言葉通り、次はユウリの順番である。


「それだけ大きな態度を取って来たんだ。最低値のDランクなんて叩き出さないでくれよ?」

「……ふっ」


 レオンの言葉。

 少しだけ得意げに、小馬鹿にしたような言葉が耳へと届く。

 しかしそこですぐに言い返すことをせず、ユウリはただ軽く笑うだけだった。


「あまり俺を舐めない方がいい」

「ほう。そこまで言うということは、自信があると受け取っていいんだな?」

「お好きにどうぞ」


 ユウリはそこで前へと歩き出した。


「ただ、一つ」


 レオンの横を通り過ぎる途中、ポツリと。


「多分俺の測定は、この教室にいる全員が驚いて白目剥くぞ?」

「――なんだと」


 目を細め、訝しむようなレオンの表情。

 対するユウリはそんな彼に不敵な笑み返して、魔導測定器の前へと立った。


「では始めるぞ」


 教師ズーグの言葉と共に魔導機器から伸びる魔力線と繋がった腕輪が、ユウリの腕へと装着される。そこから機械が動き出したのか、己の内に何かが流れてくるような錯覚を覚えさせられた。


「――は?」


 厳格なイメージを持った、獅子クラスの担任のズーグ。

 レオンでさえ冷静さを保っていた彼が、今日、初めて。


「――馬鹿な……」


 この世のものとは思えない、信じられないものを見たとばかりに、口をあんぐりと開けて固まっていた。


 あまりの様子に、「何が起きたんだ……?」と他の生徒が彼の方を覗く。

 そこで教師も我に返ったのか、ごほんと一つ咳払いをして、ユウリを一瞥した。


「……ユウリ・グラールだったな?」

「はい。そうっす」

「その、なんだ。もう一度測り直してもいいか?」

「大丈夫ですけど。結果は多分変わらないんじゃないかなーっと」

「いや、しかしだ。この数値はあまりにも異常過ぎる」


 異常。

 その教師の言葉に場が騒然となった。

 レオンの数値を目の当たりにしても冷静さを欠かなかったズーグが、彼を異常と断ずる。

 その意味を理解できないような生徒はここにいない。


「――」


 視線を向けた先には、レオンがこちらを睨んでいた。

 まさか、そんな、とばかりに驚愕の表情を必死に隠すように。

 対してユウリはもう一度だけ不敵に笑う。


「本当に、変わらないのだな」


 再度結果を調べたズーグが、どこか諦めたようにそう言った。

 言葉と共に、ズーグがその数値を紙に記載して、そして読み上げようとする。

 教室中の生徒がゴクリと生唾を飲み込む中で、しかしユウリは落ち着きを払いながら自分の席へと戻っていった。


 もはや結果は聞くまでもないと。

 不敵に笑いながら。






「魔力保持量、12、Eランク。魔力抵抗力、0、Eランク……?」


 最低値を超える最低値。


 もはや伝説と言っても過言ではない、あまりにも低過ぎる測定結果。それを叩き出したユウリ・グラールの名が学園中へと広まっていくことは、誰にも止められない現象であったと言えるだろう。




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