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ただの欠陥魔術師ですが、なにか?  作者: 猫丸さん
二章 魔導学論展編 下編
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金と銀

 魔導学論展の最中。

 突如として襲いかかってきた"再生者"の刺客を躱して、会場の外へと避難を果たしたフレアとルーノは、一息をついていた。


「ふぅ。まさかこんなことになろうとはねぇ」

「魔導汽車を襲撃されて、都市アルディーラ内で騒ぎがあって、大方は予想がついてたでしょ? 何を今更」

「まさしくその通りだ。しかし嘆いてもおかしくはないだろう」


「何より私の愛娘を会場に取り残してしまった」と。

 よよよっ、と泣き真似をするルーノの姿にフレアは思わず肩を竦めてしまった。

 ちなみに愛娘というのは、あの魔力動力炉のことを指している。


「案外余裕そうじゃない」

「そうでもない。これでも体力のなさには自信があってね。もうこれ以上は走れそうもないのさ」

「自慢げに言われても腹が立つだけだから止めてくれる?」


 いちいち危機感のないその口調と態度にもはや何度目かわからない溜息が漏れ出てしまう。

 ともあれ無事に会場から出てこられたことに安堵を覚えつつ、フレアは周囲に視線をやった。


 会場を取り囲むような人集りができているが、その全員が一目散に危険な場所から避難しようと会場から遠ざかるように走っている。

 それを追う形で魔獣が追随しているが、それを騎士達が食い止めているのが現状だ。


 会場から出られたとしても、ここに留まっているのは愚策である。

 自身はともかく、早くルーノをどこか安全なところに連れて行かねばと思考するその時、背後から声をかけられた。


「――ルーノ殿。ここにおられたか」


 背中からの声に振り向くと、そこに立っていたのは赤い髪の騎士。

 蒼翼の騎士団(ノーブル・ソード)、副隊長ジーク・ノート。


 今この場にいる中でも最高戦力に数えることのできる人材であった。


「ジーク氏か」

「ご無事で何よりです。して、そちらは?」

「彼女は学園生徒で、私の護衛役を任せている。生徒といえども"五本指"に数えられる実力者だ。戦力に数えて大丈夫さ」

「なるほど。それは心強い」


 チラリと覗かれる、切れ長の瞳。

 自身の内側まで見透かされているような印象すら受けるほど、観察されているのがわかる。


「私はジーク・ノート。蒼翼の騎士団(ノーブル・ソード)の副隊長を務めている」

「フレアよ。それよりも、あなたは会場の中に入らないでいいの?」

「会場の中とは」

「まだ襲撃者がいる。戦ってる人もいる。騎士なら、それを援護するのが仕事なんじゃない?」


 脳裏にチラつくのはユウリの姿。

 彼もまだここに戻って来ていないということは、中で戦っているのだろう。

 もしかしたら起こるかもしれない、最悪な展開は想像しない。あのどこか飄々とした男が簡単に殺られるとはどうしても思えないから。


「ごもっともな意見だ。しかし、私はここを離れるわけにはいかない」

「どうして?」

「あそこを見てもらえれば理解できるはずだ」

「――」


 ジークによって指差されたその方向は、会場の真上へと向けられた。


 存在しているのは、巨大な鋼鉄の怪鳥。


 否。あれを鳥などと、生き物などと形容していいのだろうか。

 音を立てて回転するプロペラが前後にあり、地面から水平に向けられた巨大な羽は全く動かない。

 鳥というよりは、鳥の形をした鉄が浮いている。そう形容する方が正しい。


「――噂でしか聞いたことがなかったけど、なるほど。あれが浮遊理論か」

「どういうことか、ルーノ殿」

「あれは魔導機械の一種ですよ。魔導汽車と同じく、巨大な魔力動力炉を搭載して、風魔術を応用することにより空中を駆ける」

「――」

「名は確か、飛行船といったか」


 ルーノの言葉にフレアは絶句した。

 今の言葉が正しいのならば、あれはつまり乗り物だということになる。


 初めて知るその存在に、思わず視線を細めて警戒した。


「それを"再生者"の輩が所持しているというのは解せんが……」

「確かにねぇ。その出自は気になるところだよ。場合によっては、あれを作った魔導研究者は歴史に名を残すことにもなるだろうに、どうして彼らに受け渡したのか」

「はたまたは奪われたか」

「帝国の方で浮遊理論は完成していたから、決して製作は不可能なことではないけれど。ああいった物を見ると血が疼くよ」


 ふふふ、と笑うルーノはいつも通りのご様子。しかしフレアはそれに対して何かしらの反応を示すことはなかった。

 ただ、じぃっと飛行船と呼ばれる鋼鉄の塊を眺めるばかり。


 それは目の前の圧倒的存在感に息を呑んだわけでも、気圧されたわけでもない。

 チラッと伺えた、黒い影。それがこちらまで降って来ていたからだ。


「――何か、来るわ」


 呟きは二人に届いたのか。

 それを確認する前に、彼女達の(もと)に一匹の巨大な魔獣が、着地の間際に発生した地響きと共に現れた。


 黒々とした肌には、盛り込まれた筋肉や血管がドクドクと脈を打ち、肩の部位には鋭利な棘が浮き出ている。

 赤色の双眼は魔獣の憤怒を表しているようで、口元から覗ける牙は剥き出しにされていた。

 二本足で立つ、人の身の何倍もあろう巨躯。人の胴の倍よりも太さを持つ目立った腕は、足よりも数段太い。それゆえに体型が歪なものとなっている。

 握られる両の手に目を向ければ、生物をやすやすと切り裂ける剣のような爪が全ての指から生えていた。


 暴虐の黒鬼、グラーノス。

 危険度A−級に認定される極めて危険な魔獣である。


「なぜここにグラーノスがいる……ッ」


 その姿を収めて、ジークは目を見開いた。

 決して都市の中で姿を拝めるような魔獣ではない。それこそ魔素の濃い地帯に赴かなければ、生涯の内に会うことすらないような存在だ。

 それがどうしてここにいるのか。


「あの飛行船から降ってきたようだね。ヘルハウンドやハウンドックの群れといい、魔獣を手懐ける強力な呪術師がいるようだ」

「しかも、まだ来るわよ」


 冷静に目の前の脅威を観察するルーノに、フレアはそう告げた。

 ヒュッと風を切る音と共に、四つ足の魔獣が姿を現わす。

 黒い体毛を宿した魔犬、ヘルハウンドだ。


「二体か」

「ふぅん。それなりに面倒な展開じゃない」


 その脅威の中で。

 しかしフレアは余裕を崩さない。それは己の内にある加護の確かな力を理解しているからである。


 そして何より。


「それで、どうしてあなたがここにいるの?」

「――だって偶々近くを通っていたら、大きな魔力を感じたもの。確認するのは当然のことじゃないかしら」


 スッと隣に現れた、ルグエニア王国第二王女の姿。

 ルーノは突然姿を露わにした彼女の存在に目を丸くしているが、隣のジークの方は気付いていた様子で、さして慌てる様子を見せなかった。


 金色のロングストレートが風に舞って揺れている。

 深緑の瞳はただ目の前の脅威を観察していた。

 セリーナ・ルグエニア。"加護持ち"の王女様。その存在がこの場に舞い降りる。


「護衛役の先輩はどうしたのよ」

「会場内の人の誘導を頼んだの。先ほどまでは私を護衛している騎士といたのだけれど、逸れてしまって」


 話を聞くに、どうやらスイ・キアルカは未だ会場の中にいるようだ。あの場はかなり危険な戦場であるはずだが、フレアは彼女の実力を知っている。

 B級傭兵のユウリと遜色ない実力の持ち主であるならば、あの場でもそう心配なことはない。


 それよりも。


「まずはこの魔獣達の駆除ね。そうでしょう、ジーク副隊長?」

「はっ。ここらで撃破せねば、市民に被害が及ぶ可能性もありますゆえ」


 頭を垂れるジーク。相手が王族ともなればこの反応が当然であり、ユウリやフレアのようにズケズケと会話が出来る方がおかしい。

 だがフレアはそれを全く気にする様子もなく、ただ魔獣の動きを警戒している。


「――」


 黒鬼グラーノスの方は、新たな戦力の存在に警戒を示すように動きを止めていた。

 しかし逆に、魔犬ヘルハウンドは警戒を強めるよりも獲物が増えたことによることから、真っ先に三人へと向かっていった。


 俊敏な動きは瞬発力もさることながら、どんどんと加速していく。もしも距離が遠く離れていなければ、すぐに懐に入られたはずだ。

 加速、加速、加速。そして遂に辿り着いた魔犬は、まずはか弱い少女の(もと)へと飛びかかり――。


「あらあら。もう少し落ち着いて」

「ふん、身の程を知りなさい」


 氷と炎。

 その二つに身を滅ぼされた。


「――やぁー。これはなんと凄まじい光景だねぇ」


 思わず口笛を吹いてしまうルーノ。


 左半身は内まで凍りつき。

 右半身は内まで焼き尽くされ。


 目の前の脅威たる魔犬ヘルハウンド。その存在は僅か一秒にも満たぬ邂逅の間に、絶命した。


「これが"加護持ち"。その力か」


 ルーノは思わず感嘆の息を吐く。

 この齢にして、この強大な力。

 危険度B−級の魔獣すら、そこらの雑魚でも相手にするような圧倒的殲滅力は、それこそ国が欲しがるのも納得する。


 残るは、暴虐の黒鬼のみ。


「ジーク副隊長。あなたにはルーノさんの護衛を任せても大丈夫かしら?」

「……何を」

「この魔獣は私と――」

「私がやるわ」


 前に並び立つ、二者。

 一人は金色の氷魔術師。

 一人は銀色の炎魔術師。

 二人の女傑がそれぞれ前に佇む巨大な存在を目にして、しかしその瞳を揺らすことなくただ前を見据える。


 二人の"加護持ち"。

 それらを見据える、グラーノス。

 静寂の間は僅か数秒ほど。


 その終わりに。

 両者の魔力が膨れ上がり、同時に黒鬼は突撃を開始した。



 ★


 ギィッン。

 そんな衝撃音が、天井の一部が崩落した会場内に響く。


 魔波動を発したユウリの踏みつけるような足蹴りとツヴァイの真横一文字に振られる鉄の棍棒の衝突。それが振動を生むほどの衝撃となって、辺りの空気を撫でた。


 衝突後、一秒にも満たない刹那の間にて。ユウリは側面を回るようにしてツヴァイの背後を取ろうと動く。

 速度だけで言えば一級品。

 持続性こそ並みのそれだが、瞬間的なトップスピードならば両者の差は素人の目で見ても明らかとなるほど違いがわかる。

 首を回して、そんなユウリの姿を追いかける白髪の狂人。

 残像すら残りそうな速度の中、速さでのハンデを経験で埋めつつツヴァイはやっとこさ視界に収める。


 だが。

 彼が黒髪の少年の姿を捉えた時には、眼前にユウリの拳が迫っていた。


「ッァア!!」


 体を真後ろに倒して衝撃を殺す。それがツヴァイにできる精一杯の自衛手段であった。


「――ッ。相っ変わらず身軽な動きをしてくんなぁ!」

「そっちこそ、瞬間速度が速いからやり辛いだぁーよ!」


 鼻っ柱に鈍い痛みが伴い、しかしそれに苦悶の表情を浮かべながらも怯むことなく行動を進める。

 "軽業師"の名に恥じないアクロバティックな動きで近接していたユウリとの距離を取るのは、棍棒を武器とするツヴァイと素手での体技を得意とするユウリとでは戦闘範囲(リーチ)が違うためだ。


 足だけでなく両の手も足と同様の安定感を誇るようで、逆立ちも倒立回転もお手の物らしい。その動きに視線を細めていたところ、頭上より嫌な気配が漂ってきた。


「――ったく!」


 チラリと上を向けばやはりと言うべきか、蛇の形を模した風の魔術が迫っている。


「『シールド』!」


 真上に右手をやり、魔術を受け止めた。

 足下の弾力性の高い絨毯が凹んでいく感触が伝わる。それだけの衝撃が真上から襲ってきているのだ。


「ッ」


 歯を食いしばって、耐える。しかしそれがすぐに終わるものでないことをユウリは知っていた。

 魔波動の一つ、『シールド』には弱点ともいえるものが存在する。この技は決して魔術を打ち消すようなものではなく、ただ単純に受け止めるだけのものであるということだ。


 つまり今ユウリを襲っている風蛇弾(ウィンドスネーク)、その中に構成されてある【収束】の魔術式が効果を失わない限りはずっとこの体勢を維持しなければならない。

 そしてそれは多対一において大きすぎる隙となる。


「ガラ空きだぁーよ」


 いつの間にかユウリの目の前まで移動していたツヴァイは、棍棒を振りかぶる体勢に移っていた。

 振り下ろされればユウリに防ぐ術ない。

 大上段に構えられた棍棒が、一気に加速してユウリを打つ――その直前で、水流の刀により受け止められた。


「私の存在を忘れないで欲しいですね」


 スッと細められる視線は敵を油断なく観察している。


 スイ・キアルカ。

 ユウリとの共闘を果たしている、学園上位の実力者である。

 彼女の両手に持たれる二振りの水刀、その一本が刃に滑らせ、受け廻した。そして次いで、防衛に回されていなかったもう一本が音もなく動く。


「面倒だぁーね」


 重力という概念を感じさせない軽やかな動きだった。

 足に強化をかけたのか、スイの刀が当たる寸前で真上へと跳躍してそれを回避してみせる。よくよく見ると頬に一筋の血が滲んでいるが、傷とも呼べないほど軽傷でしかない。


「逃がしません!」

「こりゃ――本当に面倒だぁーよ」


 鞭のように伸びる刀が宙に舞ったツヴァイを追う。

 流石の"軽業師"といえど、空中では身動きが取れないらしい。躱すでもなく、しっかりと鞭のようにしなって襲い来る水流の斬撃を観察しては、棍棒で防いだ。しかし衝撃は殺せず、飛ばされる。


「……ッグ!」

「崩れた! まだまだ続けて――」

「――させるわけがない」


 ツヴァイへの追撃を行うことに必死だったためか、左右から迫る風蛇弾に気付かなかった。

 ギュンッと迫る二体の蛇。その内の一体をスイは背後へとステップすることにより躱して、もう一体は両の刀を交差して受け止める。


「――なッ」

「驚いたか? その蛇は追尾性のある魔術だよ」


 だが次の瞬間、それが愚策であることに気付かされた。

 一度目の躱したはずの風蛇弾が、軌道を大きく変えて水の真上から落ちて来たからだ。


「嘘でしょう!? 魔術は一度体外に出れば、干渉することはできないはず! 魔術を操り軌道を変えることなんて……!」

「さて。それが正しいか間違いか。死にゆく者に教えることでもない」


 大きく口を開けて迫る魔術。

 まともに受ければ魔力抵抗力がいかに高かろうとそれなりの手傷は覚悟せねばなるまい。当たりどころが悪ければ、それこそ死ぬ可能性すら考えられる。

 そのような魔術が近づいててきて、一体の対処に追われるスイに為す術もなく――。


「――『シールド』!」


 即座に現れたユウリによって、防がれた。

 受け止められた魔術はやがて消失する。おそらく【収束】に込められた魔力が無くなり、効果が失われたからだろう。


「あぁーあ。シンドイもんだぁーね、お前も」

「僕がそう簡単に通すと思うな」


 背後へと下りながらツヴァイの方に視線を戻すと、先ほど二体の風蛇弾の対処に追われている最中、こちらに襲いかかろうと画策していたようだ。

 しかしそれはユウリ達の後衛を務めるレオンが魔術で妨害していてくれたらしい。彼もまた、しっかりと己の役割を果たしている。


 二対三の現状、戦力は拮抗していた。

 しかしどちらかといえば優勢なのは、ユウリ達の方。


「――ちっ」


 苛立ちを含んだ舌打ちが耳に届く。

 少しばかり息を荒くするレイドスのものだ。その様子から、彼の魔力がそれなりに消費されているのが伺える。


 戦力こそ拮抗しているが、魔術師であるレイドスは一人で魔術による援護をこなしている。その魔力消費量は決して少ないわけではなく、体力もそれなりに消耗しているのが見て取れた。このまま戦闘が長引けば、益々ユウリ達が有利となる。


「このまま行けば、勝利は難しくないな」

「あの風蛇弾の動きに注意する必要はありますが。というか、あの魔術は一体何なんですか」


 勝利への活路を見出したレオンの少しばかりの緊張の解れを、しかしスイはそのように反応して諌めた。

 彼女の言っていることはレイドスの放つ風蛇弾の不規則な動きである。


「こちらの動きに合わせて追うように動いている。まるで本物の生き物のような動きです。魔術は体外に発現させた瞬間から、干渉は不可能になるはずですが……」


 スイの懸念はそこであった。

 魔術にさというものは、本来相手の魔術だろうが自分の魔術だろうが大気中へと発現されれば干渉は不可能。

 例えば炎球(ファイアボール)を発動させて、飛ばした後、それに【爆発】の魔術式を加えることはできない。するのならば、最初に魔術式を加えて発動するしかないのである。


 しかしレイドスの魔術の動きはまるでこちらの動きに対応しているかのようなそれだった。彼女がそれに対して疑問に思うのも無理からぬ話。


 だけれど。

 ユウリはその正体をなんとなく察してはいた。


「――おそらく【追尾】の魔術式を組み込んでる。狙った標的を魔術が消えるまで追いかける効果を付与する魔術式だ」


 ポツリと。

 ユウリは自らが辿り着いた答えを口にする。


「そんな魔術式、聞いたことがありませんが……」

「俺も知り合いに使える奴がいなかったら知らなかったと思う。聞いた話だと、かなり珍しい魔術式らしく普及されていないから、知らないのも仕方ない」

「……なるほど」

「察するに、あの男は帝国の魔術師なんだろうさ」


 ユウリの知っている、【追尾】の魔術式を扱える者はデイン帝国に名を連ねる者だ。

 珍しい魔術式であり帝国でも開発ばかりだと聞いていたが、それを扱えるあの男は帝国に関与していた可能性が高いと考えられる。


 果たして、それは正解なのだろう。レイドスがその口角を少しばかり吊り上げた。


「察しがいい。宮廷魔術師として士官していた経験はある」

「やっぱり。そりゃ強いわけだ」


 首を傾けて、「厄介なものだ」と息を吐く。


「それで、どうするんだ。ユウリ」


 耳元まで口を寄せては、レオンがそう呟いた。

 視線は警戒を怠らないように前へと。いつでも対応できるように剣を構えている。

 チラッと横を見ると、スイもまた同じようにこちらの言葉に耳を傾けていた。


 そのような視線を向けられたところで、思考は変わらない。


「次の攻防で――仕留める」


 断言するかのように、はっきりとした口調で言い切った。




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