進学
「千ヶ峰高校」…… 文字に起こすとやたら荘厳で雄大な名前の高校。今、僕はその正門前に立っている。まあ、名前以外は何の変哲も無いただの進学校だ。当然、生徒たちも見たところ普通な人が多い。
僕は学生服とマフラー(4月はまだ寒かった)に身を包み、高校の中に一歩、また一歩と足を進めていった。
周りの生徒を普通だ、と語る僕にだって別に変わったところも無い、ただの高校生だ。
そして数十分後、1年3組の教室に僕を含めた30人が集まった。窓を眺めながら待つ。教室内では、面識があるのだろう2~3人がおしゃべりをする程度で、基本的には静かだ。まあ、何の面識も無い奴にわざわざ話しかけに行く方が不自然だろう。
「! ………?」
何か視線を感じるぞ? いや、まさかそんなことがあるわけがない。友達がいるならまだしも、このクラスの中に僕を知っている人はいないはずで――――
「よーし、全員揃っているな。席につけー。」
教室に入ってきた人物の声で僕は思考を中断させる。このクラスの担任だろうか。
(………子供?)おそらくこのクラスの全員が思ったであろう事を頭に浮かべる。いや、確かに担任らしき声はしたけども、まさかこの年端いかない少女なわけが―――
「? なんで君たちはそんな呆けた表情をしているんだい?ああ、私はこのクラスの担任となる『巡野 聖』だ。よろしく」
担任だったああああ!?しかも合法ロリだああああ!?さっき聞こえた着席号令と紛い無い声で語る僕たちの目の前にいる幼女は間違いなくこの教室の主であるようだ。
合法ロリ教師との邂逅から数分後、恒例の自己紹介タイムが始まった。
「―――――です。好きな食べ物は―――です」 「――――です…趣味は―――です」など、さまざまな自己紹介を聞きながら自分の番を待つ。そして…
「出席番号28番。」幼女…いや巡野先生に呼ばれて僕は自分の席から立ち上がり、教壇に立った。
「雪宮 創です。 ええっと…趣味は読書です」