四話:Let's野試合
普通の女子高生として生きていきたい加奈と、ファイターとして加奈と一緒に戦いに明け暮れたい紗綾、紗綾を何とかしないと自分の女子力は底辺のままだと確信した加奈は紗綾を説得する事にしたが。
無事入学式を終えた加奈と紗綾は案の定同じクラスで簡単なホームルームと自己紹介をこなし帰宅の途につく事になった、加奈は女子力が高いお嬢様達とお近づきになり自信の女子力を高めたいと言う強い思いがあったが、それよりも今日至急解決しないといけない案件が本日午前の入学式寸前に発生したのだ…勿論紗綾の事で有る、あの戦闘狂は事あるごとにボディーランゲージという名前の荒々しい拳を降り注いでくる、中学生時代は加奈もそれが楽しくてしょうがなかった、授業の休憩時間のたびに空手対ボクシングと銘打って3分2Rのスパーリングを行ったりもしていたし周囲もそれを楽しんでくれいたと思うギャラリーは日に日に増え、丁度女子の総合格闘技団体ワルキューレの試合がテレビ放送で始まった流行の流れも有り中学生時代の加奈と紗綾は船崎中学校のアイドルファイターという栄誉あるポジションに君臨していた、紗綾はその外見もあって同性からの支持が強く加奈も紗綾の普段の外面の良さと王子様的なルックスであればそれは仕方がない事だと納得していし紗綾も満更でもなさそうだった、紗綾が女性ファンを自分が男性ファンをと加奈は照れながら考えていた紗綾は男性的だが自分は女性的だと…そう加奈は慢心していたのだ、そんな加奈は中学3年の夏の日、一人の女子生徒に告白された、こんな事は紗綾なら日常茶飯事の出来事だったのかもしれないが加奈にとっては驚天動地の出来事だった、てか怖かった目がマジな同性の後輩に愛を呟かれるのは恐怖以外の何物でも無く加奈は全力で逃走した本気で怖かったのだ、こんな出来事をしょっちゅう綺麗に受け流し
てる紗綾は本当に凄いと思った、この事件がこれで終わればそれはそれで怖い思い出は残る物の加奈にとっては苦い体験ってだけの事だったのかもしれない、しかし現実はいつだって慢心した物を絶望の縁まで追い詰める、加奈が後輩の女子生徒に告白されたという噂は次の日にはクラスで既に充満していた、加奈にとって別にそれは大した問題では無かったしそれが自分の評判を貶める物でも無い、むしろ自分の人気に箔が付くんじゃないかぐらいの事は思っていた…慢心していたのだ、しかし加奈は聞いてしまったのだ男子達の会話を。
「加奈が後輩の女子に告られたってさ」
「あぁ聞いた聞いた、あれ本当かよ?」
「本当らしいぜー、まぁあいつカッコイイからな、何て言うの男らしい?」
「まぁ女だけどカッコイイよな、俺も女にモテたいなぁ」
「だなぁ~、紗綾は隠れた所に女子っぽさが有りそうだけど加奈って何か本質的な所が男って感じするじゃん?」
「解る解る!普段サバサバしてる紗綾の方が何か実は女性っぽい面が有りそうって言うかね!」
「だなぁー」
「加奈さんマジ兄貴!」
「馬鹿、加奈さんに聞かれたら殺されるぞ」
「やっべぇえ」
「マジやっべぇ」
「加奈さんやべぇ」
加奈はそんな会話を盗み聞きしながら激しく戸惑った
(ちょっと待て、紗綾が私より女性っぽくて私が男性っぽいて如何いう事?そ…それより私が兄貴ってどういう意味だ!何が加奈さんマジ兄貴!だ殺すぞ吉井!!!!)
お調子者なクラスメイトの吉井が加奈が自分を見てる事に気がついて話しかけてきた
「兄貴お疲れ様です!後輩の女性徒から告白されたらしいですな、流石男前えは違いますな!憎いよ色男!」
「ダッシャッコラァァァ!」
空手少女のはずの加奈が獣の雄叫びと同時にやけに打点の高いドロップキックで吉井を吹き飛ばしていた、次の日から加奈は男子から尊敬と畏怖を込めて「加奈兄貴」と呼ぶようになった、勿論思春期なのに彼氏はできずそれどころか男子生徒の大半は加奈を兄貴と呼ぶしまつ、余りにも青春からかけ離れた自分の立場に枕を濡らした加奈は何としてでも女子力を取り戻し魅力的な女性になるのだと心に誓い、近所ではお淑やかなお嬢様が多い事で有名な豊蘭女子高に地獄のような猛勉強をして入学したのだ、空手の道場にも週末は通ったりしているがそれはあくまで趣味の範疇で有り自分がこの3年間もっとも学ばなけれえばいけないものは女子力だと加奈は考えている、それなのに…それなのにだ花川紗綾が現れた、彼女は早急に手を打たなければいけない危険な存在だ、このままでは花の女子高生生活が拳と拳のぶつかり合いで浪費されかねない、それは正に悪夢だ自分は女子力を高めるためにこの高校を選んだの決して紗綾との殴り合いを楽しむために選んだわけじゃない。
「紗綾、話が有るの、今日暇?」
「おぉ加奈やん、夜は親父がアタシの入学祝いをジムでひらくって言ってたけど、それまでなら暇だぜ」
「じゃぁ少し付き合ってくれるかな」
「愛の告白とかじゃないなら全然構わないぜ」
「バ~カ」
二人が連れ添って到着したのは加奈と紗綾が小学生時代によく遊んでいた神社だった、勿論行き先を指定したのは加奈だった、とにかく此処で紗綾を説得しなければ自分の女子高生として歩き出したばかりの青春という名の果てしない坂が未完になってしまうからだ!
緊張で加奈の頬を汗が一筋流れた、まるでこれから試合でも始まるかのような緊張感が周囲を包み込んだ。
「…紗綾あのね」
「ゴメン!…さっきからずっと考えてたけど、やっぱり愛の告白は受け入れられないぜ」
「だからそれは違うって言ったでしょ!百合ネタで引っ張るの辞めてよ」
「がちゆりだぜ」
「がちかよ!って百合なのかよ!」
「アタシはいたってノーマルだぜ?人の思念が流れ込んできたりは残念ながらしないぜ」
「別に紗綾ってニュータイプ?とか聞いた憶えは無いよ?…もぅいい突っ込みも疲れてきたから本題入るわね」
「受けて立つぜ」
「紗綾、あのね…私もぅ空手は趣味程度にして貴方との他流試合とかワルキューレごっことか、そう言う誰かと戦うのは辞めようと思うの」
「それは駄目だぜ」
「そっか~…駄目かぁ、って駄目?、何で駄目なのよ!」
「それは加奈やんもアタシも戦う宿命の元に産まれたら戦乙女だからだぜ(`・ω・´)ノ」
「今度は厨ニかぁぁ!」
何処までも紗綾の巫山戯た対応に加奈は激しく焦っていた…このまま紗綾のペースに乗せられてしまったら今度こそ本当にワルキューレに一緒に参戦しようとか言い出しかねない、言い出したら一直線な彼女の事だ、気がついたら自分を連れてワルキューレに参戦とか本当にしかねない、もしそんな事になって自分が世間から兄貴呼ばわれされる日が来たら…と加奈の被害妄想は加速して爆発した。
「私はもぅ戦いたくないの、そんな事してたら全然女っぽくならないんだもん、また兄貴って呼ばれちゃうんだもん、あのトラウマを克服するためにも私は女子力を高めて魅力的な女性になるのよ!!」
「み…魅力的な女性か、凄い漠然とした目標だな…流石のアタシも加奈がそんな理由で戦うのを辞めたいって言ってたかと思うと、ちょっと…いやけっこう引いたぜ」
「そんなって何よ、そんなって!とにかく私はもぅ誰かと戦ったりなんかしないの!解ってくれた?」
「いや…何て言うか…」
「解ってくれたわね!」
(この流れで強引に私が二度と戦わないって主張すれば紗綾も引っ込まざるえないはず!…これは勝った!)
このままでは不利と思ったのか強引に話を進めようとする加奈に若干ドン引きな紗綾が、ある提案をしてきた
「解った…解ったぜ、それじゃぁこうしよう、ここで試合をして加奈が勝ったら二度とアタシに付き合って戦ったりしなくてかまわない、アタシが勝ったら一回考え直して欲しい」
「別に何回考え直しても私の考えは変わらないわよ、それでアンタはいいの?」
「別にかまわないぜ、どうしても戦うのを辞めたいって加奈やんを無理やり引き止めるわけにもいかないからな、ただ最後の最後に本気での立会いを望むぜ!これはそう…想い出作りってやつだぜ」
「想い出作り、別にそれはかまわないけど流石に素手で殴り合うって言うのは花も恥じらう女子高生としては」
「加奈やん、その発言は痛いぜ…それとグローブならここに2人分有るから大丈夫だぜ」
「アンタ、普段からいつもそんなの持ち歩いてるの?」
「当然だぜ!いついかなるときに試合を挑まれても良いように常に警戒レベルは5だぜ」
「いや…戦争レベルの技術解除はしないでほしいかなぁ…あと常にってそれは危ない人にも限度が有るわ」
どうしよう友人が歩く凶器だった…そんな凶器がグローブを投げてよこした。
「理想はオープンフィンガーグローブなんだけどね、まぁ紗綾が持ってるグローブって言ったらボクシンググローブよね…まぁこれはこれでケガはしにくいから別に良いけど」
「おぅ、グローブって言ったらボクシンググローブだぜ!」
変な流れになったなと思いながらも、自分の格闘家としての最後の想い出作りと考えると今日この目出度き日に友人と神社で殴り合うのも決して悪い物じゃないなと加奈は思い始めていた、物心付いたときから空手を学び、中学時代の3年間を紗綾や他の格闘技経験者との他流試合に費やした加奈はやはり血が騒ぐのだ。
向かい合う二人の間を春風が吹いた。
「いつはじめるの?」
「もぅ、はじまってるぜ」
自分が読みたい話をそのまま素直に書いてます、小説を書くという事が初体験なので「ここはこう表現したほうが良い」とか「その表現豊富はちょっと違うなぁ」とか教えていただけたら嬉しいです、よろしくお願いします。