「宝」
「ここには宝が眠っている」
父はそんな嘘を言って、よく私をからかったものだ。
なぜ嘘だと分かったのか。
それはその宝の場所を掘ろうとしたら、怒ったからだ。
掘ると、そこには宝がない事が分かってしまうから。
だから子供ながらに、私はその言葉が嘘だと気付いた。
もう何十年も前の話。
そんな話を最近になって、よく思い出すようになった。
なぜか?
答えは簡単だ。
もう何十年も会っていなかった父の姿を久しぶりに見たからだ。
子供が私を呼ぶ。
「ママ。今日もあの人映ってるよ」
連日ながれるニュース。
連続殺人犯、ついに捕まる。