第五話Bパート 生存者 A Survivor
健二視点
片山の十字架が破壊されていることに気付いた俺は、自分自身が情けなくなった。俺が片山にキレたりしなければ片山の十字架は無事だったかもしれないのに……
(そういえばエントランスで子供が言っていたな……「これを持っていたら万が一の時に一回だけ悪霊や邪悪な妖魔を払ってくれるから……」って……ということはあの十字架を持っていなかったら片山は今頃……)
俺が考え事をしていると片山は俺の顔を覗き込んできた。いきなり目の前に顔があらわれたのもあってか、驚いて変な声を出してしまった。
「あっ!ごめんね……びっくりしたよね?」
片山はどこか申し訳なさそうにしつつ顔を引っ込めた。片山が顔を引っ込めた後、俺は今後どうするかについて再度考えた。
(銀の十字架が一回だけでも身代わりになるとして、やっぱり十字架を確保しておくことは重要だな。となると、まずエントランスに戻ってさっきの子供の霊から再度もらった方がいいな)
俺はある程度思案した後に片山に一旦エントランスに戻ろうと提案した。片山は特に反対することなく賛成したのもあり、そのまま俺たちはエントランスに移動し始めた。
エントランスまで目の前に近づいた時に曲がり角の向うから人の気配がした。俺は片岡を背中に隠した後に息を潜めた。
(高本君?)
(静かにしろ。誰かいる)
俺の言葉を聞いた後に片山は今まで以上にどこか真剣な顔つきになって息を潜め始めた。俺たちは息を潜めつつ曲がり角を覗き込むことにした。
(そういえば片山。今霊か何かの気配はするか?)
俺の問いに片山は首を横に振った。
(正直の人の気配はするけど、霊の気配はしないよ。ただ誰だか分からないし、今は慎重に動いた方がいいと思う)
片山の言葉を聞いた俺はより慎重に曲がり角を確認することにした。曲がり角の手前まで来た俺たちは覗き込んでみた。するとその先には……俺たちより少し年上ぐらいのどこかやつれている男の顔が目の前にあった。
「「うわっ!!」」
俺とその男は大声を上げながら後ろに尻餅をつきつつ倒れこんだ。片山と向うの連れらしい男がそれぞれに駆け寄って来た。
「高本君大丈夫!?」「桐生無事か!?」
俺ともう一人の男はそれぞれの同行者に声を掛けられたが、どうやら互いに生存者であると理解したことによる安堵感からか何故かその場からしばらく動くことが出来なかった。
俺と桐生という名前の男が動けるようになってからしばらくしてから互いの身元と置かれている状況と知っている情報を交換することにした。
「さっきはビックリさせてゴメン。僕は桐生慎二。M大学の経済学部所属の二回生だ」
最初に曲がり角で出会った比較的まじめそうな男性が自己紹介をしてきた。次に桐生さんの後ろにいた髪を茶髪に染めている男が自己紹介を始めた。
「俺は小鳥遊雄介だ。桐生と同じM大の経済学部の二年だ!」
二人が自己紹介を終えた後、俺と片山も軽く自己紹介をし、その俺たちが得た、【この屋敷には主が居ること】と【この屋敷そのものにも意思があるということ】などの情報と、一階の厨房の近くで怨霊に襲われたことで片山の十字架が壊れたことを説明した。二人は厨房で怨霊に襲われたという下りを聞いたところでこちらに確認してきた。
「そいつって女子高生の怨霊じゃないか?」
小鳥遊さんの質問に俺がその通りだと答えると今度は桐生さんが話を続けた。
「僕たちも、もう一か月以上前の話だけど奴らに襲われたのだ。その時は運良く逃げ切れたけど、その時に一人はぐれてしまったのだよ」
桐生さんの言葉の後に小鳥遊さんがどこか苛立たしそうにしゃべった。
「一体全体アイツは何なのだよ。あいつに襲われたせいで朝倉ともはぐれちまうしよ」
朝倉……?友人だろうか?そんな思案をしていると片山が朝倉とは誰かと桐生さんに聞いた。
「朝倉は僕たちと大学の女子生徒だよ。僕たちと一緒にここに連れてこられたのだけど……さっき言った怨霊に襲われたときに逸れてしまったのだよ。俺たちもそいつが本館の厨房の前に怨霊が居るのもあって、西館の厨房の方に行っていたのだ。そこで何とか食料を確保して今本館に戻ってきたのだ」
桐生さんはどこか後悔しているような様子で話をしていた。仲間を探せずにいることが歯がゆいのだろうか?
話をしながら俺たちはエントランスに向かっていると気が付いたら到着していた。俺たちはエントランスの端になぜか置いてあるソファーに座った。ソファーに座るとふと小鳥遊さんが俺と片山に話しかけてきた。
「そういえばお前らはここに来てどれくらいになるのだ?見た感じだとここに来てからあまり日は経っていないように見えるけどよ?」
小鳥遊さんの質問を受けて俺は自分がどれぐらいここにいるのか気になった。まず携帯電話の時計を確認しようとしたけれど、なぜか画面がバグっていて見られなかった。しかたなく腕時計を見ようとしたが、俺は朝腕時計を忘れてきてきしまったことを思い出した。俺が腕時計を忘れたことを思い至ったのか、片山が代わりに腕時計を見てくれた。時計は【11月3日、17時5分】を指していた。ちょうど俺たちが下校していた時間から丸一日経っている。俺は正直あまり驚きいたりはしなかった。
(そりゃあ、一階だけでもあれだけ探索していればそれぐらいは時間が経つか……)
俺自身これからするべきこととして、片山の十字架を確保できるなら確保することと、桐生さんのはぐれた友人を探すことだろう。ただその二つを探索する前にまずさっきエントランスで会った子供の霊に十字架を確認することと、朝斗達と合流して互いの情報を交換することがまず先決だ。
俺たちが少し待っていると、突然さっきの子供の霊が現れた。
子どもの霊は片山の十字架がないことに気が付いたのか心配そうに片山を見つめつつ話しかけてきた。
「「お兄ちゃん、お姉ちゃんの十字架を使ったみたいだけど何があったの?」」
俺は二人に厨房の前で起きたことを話した。その話を聞いた二人は少し考えた後、十字架について話をしだした。
「「あの十字架は怨霊特有の負の想念に反応するようになっていて、それだけじゃなくて緊急時に身代わりにもなる能力も併せ持っているのだ」」
二人から改めて十字架の特性を説明され、俺を含めた全員が改めて十字架の重要性を再認識した。十字架の重要性が改めて理解できた所、俺は二人にどうすれば改めて手に入るのか聞いた。
「「あの十字架は元々東館にある礼拝堂の奥に保管されていた物に僕たちの霊力を込めることでさっき言った機能を追加した物なのだけど、今は僕たちが持っている十字架を切らしていて東館の礼拝堂にまで取りにいかないといけないのだ」」
俺たちは今の十字架の手に入れ方を聞いた後に礼拝堂が東館の何処にあるのか確認した
「「それが……その礼拝堂は少々特殊で、東館の範囲内でだけど大体二三日に一度移動するのだ……だから具体的に東館の何処にあるのか僕たちにも分からないのだ。ただ僕たちが言った時は二階の奥の方の部屋の扉から礼拝堂に通じたのだ」」
俺たちは礼拝堂についても改めて説明を受けた後に、俺たちは後の話し合いは友人がいるので後にしてくださいと桐生さんたちに説明をした後に今はゆっくりしようとした時、
「「そういえば大きいお兄ちゃんたちのお友達の大きいお姉ちゃんは?さっきから一階で気配はしていたから一緒に居ると思っていたのだけど……」」
その言葉を聞いた途端に桐生さんは一階のエントランスを出るドアから飛び出していった。俺たちも驚いて慌てて桐生さんを追いかけた。
続く
どうもドルジです。
今回はまた更新に間が開いてしまったので、次は可能な限り間が開かないようにしたいです。
キャラ紹介
名前 桐生慎二
性別 男
年齢 19歳(大学二回生)
身長 174cm
体重 61kg
髪型 標準的(黒髪)
趣味 ホラーゲーム
所属サークル オカルト研究部
成績 中の中
特徴
高本たちが屋敷で出会った生存者の一人。
大学生で、比較的落ち着いた印象の青年であるが、はぐれた女子大生、朝倉加奈のことになると
途端に冷静さを欠く一面がある。
オカルト研究会に所属しているのもあり、心霊現象や都市伝説にもそれなりに詳しい。
イメージCV 神谷浩史
名前 小鳥遊雄介
性別 男
年齢 20歳(大学二回生)
身長 176cm
体重 66kg
髪型 やや長い(染めた茶髪)
趣味 カラオケ ボーリング
所属サークル 中国拳法研究会
成績 下の上
特徴
高本たちが屋敷で出会った生存者の一人
大学生で、染めた明るい茶髪や趣味趣向などから典型的な比較的軽い部類の若者に見えるが、
親に習わされたからではあるが、小学時代から太極拳、八極拳などの様々な中国拳法を習得している。
オカルト現象には基本的に興味がない。
イメージCV 木村良平