表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/59

第五話Aパート 激闘 A Fierce fight

朝斗視点


 赤い鎧が徐々に迫りくる中俺はこの部屋を脱出するために有効な何かを探して周りを見渡した。


(おそらくこの扉はオカルト的なもので開かなくなっているはず。それをどうにかすることが出来れば勝機はある)


 俺はふとさっき読んでいた本にしおり代わりに挟んでいた紙切れを思い出した。


(そういえばあれはお札に似ていたな……まさかとは思うが、試してみる必要はあるな。)


決心した俺は、赤井さんにまだ動けない篠原のことを頼むことにした。


「赤井さん。俺が注意を引きつつ、さっき気になったものとってくるので、その間篠原のことを頼めますか?」


冷静さを取り戻した。赤井さんはほほ笑んだ後に、一つ付け加えつつ了承した。


「彼女を守り通すというのは構いませんが、付け加えて言うと、奴等は霊感の強い僕と彼女を狙ってくると思いますので、あなたが囮のような真似をするのではなく、むしろその隙に君に活躍してほしいですね」


 赤井さんはそれだけ言うと、篠原を担いで立ち上がった。鎧に憑りついた怨霊達もだいぶ近くまで接近していた。おそらくチャンスは一度だけだろう。


「今です、毛利君。右に走ってください!」


 一番近くにまで来ていた鎧が届くか届かないかの距離でハルバートを振り下ろそうとした瞬間に赤井さんがそう叫び、篠原を担いだまますさまじい速度で鎧の間を走り抜け、怨霊の背後を取りそのまま、さらに逃げられるように身構えた。


「ヌオッ!?」


 赤井さんがとった奇抜な行動に鎧が気を取られているうちに俺は走ってさっきの本のところまで戻った。


「あった。この本だ。」


 俺は本ごと手に持った後にしおりを抜き出してよく見ると……それはお札だった。


(お札?これならひょっとすると奴らを倒せ……いや、今は脱出することが先決だ)


 俺は赤井さんにお札を手に入れたと叫びつつ扉の前まで向かうと赤井さんも手に何か棒状の物を持った状態でこちらにとんでもない速さ走ってきた。


「よくやってくれました。いくら動きが鈍くてもあの数ではさすがに長時間は逃げ切れませんからね」


 赤井さんは冷や汗をかきつつ笑っていた。その後俺はお札を部屋の扉に張ってみた。すると扉から黒い煙のようなものが少し出てきたと思うと、扉が開くようになっていた。俺たちは急いで扉から出て、廊下を走ってその部屋から離れようとした。



 ある程度部屋から離れたところで、俺たちは廊下に座り込んで少し休むことにした。


「あれ……ここは……?」


 さっきまでほとんど動けなかった篠原がようやく目を覚ました。


「さっきの怨霊ならもう大丈夫なはずだ。ここまで来ればさすがに……」


 俺がそう言いかけるのを篠原が制止した。


「待って、さっきと同じ気配が近づいてきている……」


 篠原が顔を青ざめさせながらそう言って指を指した方向を見ると、さっきの赤い鎧がゆっくりとこちらに歩いてきていた。


「まさか、部屋の外を出たのか……厄介だ」


 赤井さんは冷静さを保ちつつもどこか今までの柔らかい態度とは何処か違う冷たい何かを感じる態度だった。


「この先になら一階への階段がありますけれど……それじゃあ下の階を探索している高本君や、春子が……」


 篠原はこの先の一階に逃げても安全ではなく、むしろ健二たちを危険にさらすことになると分かっているらしい。


「下の階を探索している友人がいるのですか?……それは都合がいいですね」


 赤井さんは何かをボソッと喋った後に俺にお札を貸してくれと言った。俺は不思議に思いながらもお札を貸すと赤井さんはおそらく、さっきの部屋で回収したであろう手に持っていた日本刀の柄にお札を張った。


「あなたたちは下がっていてください。ここは私がやります」

 

それだけを言うと赤井さんは凄まじい速度で怨霊の軍勢に飛び込んだ。赤井さんが近づくことに気付いたメイスと盾を持った怨霊がメイスを振り下ろそうとするよりも早く、


「ハッ!!」


 居合の要領で鎧の腹に相当する部分から切り裂いた。切り裂かれた鎧はその場で倒れ、動かなくなった。次に槍を持った鎧が襲いかかってきた。赤井さんは冷静に槍の軌道を見切り、槍の引き戻しの隙をついて鎧の手を切り裂く。


「ムグッ!?」


 鎧に憑りついている怨霊は驚愕の声を上げた次の瞬間、赤井さんは飛び上がり、重力を利用してその鎧を上から切り裂いた。

残った一体がハルバートで横に薙ぎ払うのもその場にしゃがんで回避しそのまま逆に距離を詰め、刀で肩のあたりから横に切り裂こうとしたが、今度は怨霊がハルバートを捨てて回避した。その時に怨霊の鎧の兜が取れ中身が見えた。中は赤いガス状の何かが充満していた。おそらくあれが怨霊の本体だろう。赤井さんは対峙し再度切りかかろうとした瞬間、先ほど切り裂いた鎧から赤い靄のような何かが伸びてきて、赤井さんの動きを封じた。赤井さんを拘束して調子づいたのか、怨霊はいきなり喋り始めた。


「「「生きた人間の癖に生意気な……なんでお前たちのような奴らが生きていて、我々はこのような空間で死ななければならないのだ。理不尽だ」」」


 怨霊は殴り捨てるように叫ぶと、先ほど倒した鎧が持っていた槍が突然宙に浮いた。それは見た篠原は何処か焦った様子で赤井さんに叫んだ。


「【ポルターガイスト!?】そのままじゃ危険です、逃げてください!」


 怨霊に拘束され動けない赤井さんは、そんな篠原の言葉を聞いても何処か飄々としたような様子で立っていた。そのまま怨霊の方を向くと口を開いた。


「そんなくだらない嫉妬でなぜ他人を殺めるのですか?大体あなたたちごときでは人間を一人二人殺した程度では霊力にすることも出来ない癖に……効率という言葉を知っていますか?今のあなた方が最も気にすべきことですよ」

 

赤井さんが、俺からしたら、少し恐ろしいことを口にした。

(一人二人殺したところで大した霊力にならない?それならたくさん人間を殺すことは意味があることだって言うのか?)

 

俺のそんな思案をしているさなかに、赤井さんの言葉でぶち切れた怨霊達は槍だけでなく、その場にある武器すべてを赤井さんの方に向けて飛ばした。


 俺たちは赤井さんが血まみれの死体になると思い、目をそむけたが、いつまでも武器が人を貫くような音がせず、気になって目の前を見てみると、



赤井さんが立っているはずの場所には、赤いスーツと対照的な白い仮面と、スーツの上から赤いシルクハットと……【赤いマント】を付けた男が立っていた。



「「「そんな……お前はまさか……」」」


怨霊は俺たちが思い至った結論と同じことを考えたのか、声が何処か震えていた。


「おやおや、先ほどのポルターガイストで私を殺せると思っていたのですか?だとすればお前達はよっぽどの馬鹿だな」


 赤いマントの男からは赤井さんの声がしていた。間違いなく、赤井さんが赤マントだったのだと確信した。赤マントは、そのまま自分を拘束していた怨霊を振り払うと、先ほどとは違う飄々とした態度で怨霊に話しかけた。


「お前たちは、【赤色】と【白色】と【青色】ならどれが好きだい?」

 

怨霊達は赤マントの【都市伝説】に気付いたのか、答えずに逃げ出そうとしたが、


「返答はなし……じゃあ【赤色】でいいかな?」

 

それだけ言った後に、次の瞬間、一番近くにいた怨霊が真っ二つになった。仲間が真っ二つにされたことには目もくれず、残りの二人は逃げようとしていたけれども、いつのまにかすぐ横にまで来ていた赤マントが右にいた怨霊の首を手刀で切り落とした後に、残りの一体の首を掴んだ。


「答えろ、お前たちに入れ知恵した奴はどこのどいつだ?」


 赤マントはドスの利いた声で怨霊に問い詰めると、怨霊は話し始めた。


「この屋敷の主だって名乗る野郎が、【屋敷の一か所に固まる必要はない】、【屋敷中を移動すればより多くに生者を仲間に引き込めるぞ】って言われて、そのままいう通りに屋敷中を回れる範囲で回っていただけだ!」


 怨霊の言葉を聞いた後に赤マントはさらに質問した。


「屋敷の主?そいつはいったい何者だ?」


 赤マントの言葉にビクッとした怨霊はそのまま答えた。


「知らねえよ!!本当に知らないんだ!!奴は黒い靄みたいなのに覆われていて、シルエットから長身で痩せ形の男ってことしか分からなかった!!」


 赤マントそれを確認すると最後の質問だと付け加えて質問した。


「これが最後の質問だ……怨霊になった霊を普通の無害な霊に戻す方法を知っているか?」


 それを聞くと怨霊は一瞬あっけにとられたような様子で固まっていると


「お前も知らないようだな……じゃあお前にはもう様なはい、消えろ」


 そういうと掴まれていた怨霊の首が切り裂かれ、、先ほどまでの怨霊同様に霧散して消え去った。

                                              続く


                         


 お久しぶりです、ドルジです。

 今回は少し更新が遅くなってしまいました。次からはもう少し早くに更新したいと思います。

 用語説明

ポルターガイスト

 ポルターガイストとは、そこにいる誰一人として手を触れていないのに、物体の移動、物をたたく音の発生、発光、発火などが繰り返し起こるとされる、通常では説明のつかない現象。

 いわゆる 心霊物体の移動としては、主として建物内部に設置された家具や、家具内に収納された日用雑貨などが挙げられる。住人が就寝中に移動するものもあり、住民が起きている時に移動し、移動する過程が直接目撃されるものもある。激しく飛ぶこともあれば、ゆっくりと移動することもある。現象の一種。


都市伝説

都市伝説の概念は、フランスの社会学者であるエドガール・モランが1969年に著書『オルレアンのうわさ - 女性誘拐のうわさとその神話作用』において最初に使った。

一部には口承の他に、テレビ、ラジオなどのマスメディアや、インターネットを通して広がることもあり、これは古くからの伝説にはない特徴である。インターネット掲示板・ブログ等に由来するものは、とくにネットロアと呼ばれることもある。ネットロアとは「インターネット」と「フォークロア」から造られたかばん語である。

大辞林 第二版には「口承される噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明であるもの」と解説されている。



幽霊紹介

【赤マント】

種別 妖魔【都市伝説】

思考 中立(目的の為だけに異界に来たため自分に有益にならない限り特に他人に関心がない。)

霊力 非常に強力

危険度 中立(敵に回した場合は非常に危険)

獲物 血で出来た自らの肉体

特殊能力 血で出来た自らの肉体を鎌に変えて敵を切り裂いたり、肉体を強化する【赤】

     敵を自らの肉体で貫いた後に血液と霊力を吸い取る【白】

     自らの肉体でもある貯蔵された血を放出、状態変化、加工、操作する【青】

原点 日本(都市伝説)

説明

日本で都市伝説としてよく知られている、妖魔であり、人間のふりをしていた赤井龍之介の正体。

姿は真紅のスーツの上に名前の由来でもある赤いマントを羽織、頭に赤いシルクハットを被り、顔には対照的な白い仮面をつけている。

何かしらの目的のために動いているらしく、ひとつわかっていることは、怨霊を無害な例に戻す方法を探しているということがわかっている。

イメージCV 小野大輔

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ