第四話Aパート イレギュラー Irregular
朝斗視点
赤井さんのいきなりの発言に俺たちは驚愕した。赤井さんは柔和な笑顔のまま話を続けた。
「みなさんはそもそも赤マントとはどういう存在か知っていますか?」
質問された俺たちは、俺はどもってしまったが篠原が代わりに答えてくれた。
「赤マントは昭和初期に語られた都市伝説が起源で、内容は赤いマントを付けた怪人が幼い少女を誘拐して殺すという内容です。また派生として【赤い紙、青い紙】という都市伝説も存在していますが、内容的には異なっていて、私の聞いた話では赤い紙か、白い紙か、青い紙かと聞かれて、【赤い紙と答えると鎌で切り殺されて血まみれになって】、【白い紙と答えると体中の血を抜き取られて】、【青い紙と答えると血の海で溺れて窒息死する】という話らしいです」
篠原の話を聞いた赤井さんは感心したような目をして篠原を見ていた。その様子は何処か嬉しそうだった。
「詳しいですね……正直感心しましたよ」
赤井さんは何かを考えるような様子で思案した後に、俺たちに赤マントの詳細について話をし始めた。
「赤マントはこの屋敷を探索しつつ何かを探しているらしいのですよ……生存者に力を貸すかどうかについてですが、まず赤マントは生存者を発見した後に、その生存者を監視しつつ、その人間が力を貸すに見合うかどうか見極めるらしいんですよ」
赤井さんの説明を受けた俺たちは、今までの行動を赤マントが見ていた可能性に思い至った。内心驚愕している俺たちをよそに赤井さんは続きを話し合った。
「驚いているところ悪いけど、話を続けるよ。赤マントが力を貸す人間の基準は簡単に言えば、【並みの怨霊相手なら逃げ切ることで生存できること】と、【赤マントの目的に邪魔ならない人間】というこの二つ目ですよ。この二つを守るためには僕の思うに……まずこの屋敷自体をより知ることですね」
赤井さんは冷静に言っているが、正直かなり難しいことだと俺は思った。いくらなんでもさっきの黒騎士より弱い相手でも怨霊から逃げ出せないと助けないというのはかなり身勝手だと思う。
「赤井さんに言うことではないですが正直自分勝手すぎませんか?」
俺がそういうと赤井さんは柔和な顔を崩し苦笑いをしていた。
苦笑いをしたまま赤井さんは返事をした。
「確かに私も内心そう思いますが、彼にも目的があるのでしょうし、それに何処で見ているかわかりませんから、あまりそんなことは言わない方がいいですよ」
赤井さんの忠告を受けた俺は内心やってしまったと思った。篠原も俺の顔を見て苦笑いしている。
「毛利君……幽霊や妖怪ってどんな形や理由であれ自分の悪口を言われることが大嫌いますから、あまり下手なことは言わない方がいいですよ」
俺は霊的なことの理解度の低さを改めて痛感した。正直今もオカルトなんて信じたくないけれど今はそんなことを言っている場合じゃない。
「……ここで長々と立ち話をするのも危険ですし、とりあえず私も同行しましょう。今は生存者どうし固まっていた方がいいと思いますし、どうでしょうか?」
俺たちは赤井さんからの提案を聞いて少し話し合うことにした
「毛利君、私は賛成なのですけれど、あなたはどう思いますかか?」
「俺も今は赤井さんの提案には乗っても問題ないと思う。ただ……」
「ただ……どうしたのですか?」
正直不安もある。赤井さんが万が一普通の霊の振りをしている怨霊や妖魔だったらどうなる?間違いなく俺たちは殺される。そこが俺は不安だが……
「いや……何でもない……」
俺がそういうと篠原は赤井さんに提案を受けるという俺たちの意向を伝えていた。赤井さんは俺たちの返事を聞いた後に何処か嬉しそうな表情を浮かべて俺たちに話しかけてきた。
「提案をお引き受けしていただきありがとうございます。後まず確認して起きたいのですが、二階の部屋はどれくらい探索しましたか?」
俺たちは鍵が掛っていて部屋が二つ三つほどあって入れなかったことと、それ以外の部屋は調べたことを伝えた。
「なるほど……ならちょうど私も二階の部屋で使う鍵を一つ持っていますので、まずは私の持っている鍵の部屋に行きましょう」
俺たちは赤井さんの意見に特に反対することもなく賛同し、そのまま書斎から出た。
赤井さんが言っていた部屋は思っていたよりもさっき俺たちがいた部屋から近く、俺たちは扉の鍵を開けて中に入ろうとした。
「そういえば赤井さん、この部屋の鍵を前から持っていたということはこの部屋には入ったことが有るんですか?」
篠原が何気なく聞いた一言に赤井さんは笑みを崩すことなく答えた。
「ええ。確かこの部屋は甲冑やら武器やらが貯蔵されている部屋で、本棚がありますが危険な本もあからさまなのが一冊しかありませんからね。あと怨霊は基本的には決まった部屋に引きこもっている場合が多いですし、廊下にいる場合も、部屋に逃げ込めば大体追ってきませんしね。ここまでほとんど怨霊と遭遇しなかったお二人は【大体一か月で死んでしま人の多い】かなり幸運だと思いますよ」
俺は内心その言葉を信用できない部分もあったがそのまま部屋に入ることにした。
部屋に入るとそこは観賞用か知らないが、真っ赤に染まった武器や甲冑が貯蔵されていた。俺は鎧には目もくれず本棚を探すことにした。
「あの……赤井さん。この鎧……動いたりしませんよね?」
篠原が恐る恐るという様子で赤井さんに尋ねていた。赤井さんは苦笑いしながらも答えた。
「それは安心ですよ。後それはフラグというものですから、気を付けてくださいね」
赤井さんが篠原を嗜めるように言うと、篠原は冷や汗を掻いていた。そんなやり取りをしている二人をよそに俺は本棚を漁ってみることにした。
本棚の端に一冊だけ明らかに禍々しいオーラを出している本が一冊存在した。その本の隣の本をなんとなくとみるととんでもないタイトルだった。
【赤マントについて】
俺は驚きつつもその本を読んでみることにした。
「第一前提として赤マントは誰かを探しているらしい。赤マントの目的を邪魔になる存在は状況によっては排除しようとするだろう。第二に、赤マントはこの異界を単独で脱出することが出来る。はっきり言えば人間に力を貸す必要性はほとんどない。赤マントを味方につけるためには、赤マントにとって生きていて特になる存在であると印象つけなければならない。」
「前置きが長くなったが、赤マントの接触方法だが、まず赤マントは屋敷の人間と【同じ人間を装って接触をはかってくる】。接触した人間が自分にとって有益になるかどうかを最終的に判断するためにある程度ともに行動し、有益となる場合は、正体を明かして力を貸してくれるけれども……障害になりうると判断された場合は【怨霊に襲われたときにそのまま見捨てられる……】」
俺は驚愕すると同時にあることに気付いた。
(そういえば赤井さんは、この館に詳しすぎるような……それに部屋に入る前に言っていた【大体一か月で死んでしま人の多い】という言葉……どう考えてももっと長い間この屋敷に居ないと分からないはずだ。まさか赤井さんは……)
俺が思案していると、まだ本に続きがあるということが分かった。
「実はあまり知られていないが赤マントは大体人間として接する時は決まった名前を名乗る場合が多いその名前は……」
俺が続きを読もうとした瞬間声がした。
「あれ?鍵が開いているはずなのに扉が開きませんよ?」
篠原が何度も扉のドアノブを動かそうとしている。俺は近くになぜかあった紙切れを栞代わりにして本を閉じた後に俺は篠原と赤沢さんのところに向かった。
「どうした?」
俺は無意識に素っ気なく聞くと赤井さんが今までにないぐらい真剣な顔をしていた。
「正直これはまずいですね……」
赤井さんが何かをつぶやいた後に篠原が突然顔を真っ青にして伏せてしまった。
「どうした篠原!?」
篠原はガタガタ震えながらなんとか言葉を出そうとしていた。
「何か……寒くて気持ち悪い何か……が近づいて……きてる……早く……ここから離れないと……っ!」
篠原が震えながら声を出した後に俺はエントランスでもらった十字架が光り始めたのを見た後に何かの気配を感じて気配をした方を向くと……
先ほどまで武器を持って立っていただけの鎧がこちらを向いていた。しかも一体だけじゃなく、三、四体はこちらを向いていた。
次の瞬間そいつは動き始め俺たちの方にゆっくりと近づいてきた。
「なぜ下級の怨霊がこれだけ集まっているのですか!?そもそもさっきまでこいつらは居なかったはずですよ!?」
赤井さんもかなり焦っていた。どうやら移動しないはずの霊が移動して現れたことに驚いているらしい。
「「「「イキタ……ニンゲン……ニクイ……ウラメシイ……コロス……オマエタチモナカマニナレ……!!」」」」
幸い奴らは動きがかなり鈍い、この部屋の中でも逃げ回ろうと思えば短時間なら逃げ回れる。なんとかして脱出方法を考えないとな……
続く
どうもドルジです。
今回は話の分け方を変更することにしてみました。全体的にこの方が僕としては見やすいとも思いますので、今後はこの形式で行きたいと思います。
幽霊紹介
移動する怨霊
種別 怨霊
思考 危険(生者への怨念と憎しみに満ちている)
霊力 普通
危険度 赤(危険)
獲物 憑りついた甲冑
特殊能力 今までの怨霊ではありえない行動パターン
原点 不明
6月11日追記
章のタイトルがダブっていたので訂正しました。