第三話Bパート 探索 Search
健二視点
朝斗達と別れた俺と片山は一階の探索を始めることにした。片山はだいぶ落ち着いたのか震えも止まっていた。
「片山……もう大丈夫か?」
俺は心配になって片山に声をかけた。片山は一瞬キョトンとした顔をした後にハッとした顔をして慌てたように返してきた。
「大丈夫だよ。もう変な気もしないし」
片山は答えた後も「大丈夫だよ」と何度も言っていたので、俺は片山に大丈夫ならいいと言うとう漸く安心したのか片山はようやく大丈夫と繰り返すのをやめた。俺たちがそんなやり取りをしている間に最初の部屋の前にたどり着いた。俺は片山を背中に隠した後に扉のドアノブに手をかけた。
「ありがとう高本君……扉開きそう?」
俺は手にかけていたドアノブに力を入れて回してみると……簡単に扉は開いた。
「開いたな……俺が入ってみる。片山は廊下の所で待ってろ」
中が危険かもしれないと考えた俺は片山に外で待っているように言ったが片山は何処か不機嫌そうな顔をしていた。
「私も一緒に行く。高本君一人じゃ心配だから。」
俺は片山を説得しようと思ったが、片山の真剣な目を見て正直説得するのは無理だと思った。前から気づいていたがこいつは普段は大人しい性格だが妙に頑固な一面も併せ持っている。こうなった片山を言いくるめるのは不可能だ。
「……俺からあんまり離れるなよ」
俺が付いてくることを許可するとどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
「どうした?さっさと中に入るぞ」
俺が声をかけると片山は走ってついてきた。
中は客間のような大きなソファーや机がある大きな部屋だった。応接間だろうか?俺たちは部屋に入った後、一通り部屋を探索することにした。部屋の中には特別な物は無く、気になったのは本棚ぐらいだ。
「本は……調べた方がいいか」
俺が本棚から手近な本を手に取ろうとすると
「ダメ!!その本は読んじゃダメッ!!!」
片山が顔を真っ青にして叫んだ。俺は驚愕しつつも片山のいう通りに取ろうとした本を取るのを止めた。
「どうしたんだよ突然。いきなり叫ぶからびっくりしたぜ」
俺が本を取るのを止めたのを確認した片山はこちらにやって来て話した。
「その本……とても強い怨念を感じたの……その本を読んだだけでも取り殺される可能性もあるから止めたの……」
事情を聴いた俺は寒気が走った。下手をすると自分自身が死ぬかもしれない。そう考えただけで思考が恐怖に支配された。
(駄目だ……俺が片山を守らないといけないのに……何弱気になってんだよ……)
俺は心の中で自分自身に喝を入れていると片山が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。俺は片山に心配をかけないように再度意識し、探索を続けるために部屋を後にした。
探索を再開してから三十分後俺たちは一回の応接間周辺の部屋の探索が終わり、もっと奥の方を探索することにした。俺たちが奥に進む途中に一つ派手な装飾の施された扉があったのだが、俺たちは二つの要因からその部屋は後回しにすることにした。一つ目の要因はなぜか鍵が掛っていて入ることができなかったからだ。もう一つの要因として、片山曰くこの扉の向うの気配は屋敷の外の黒騎士並みに危険らしい。俺たちは奥の方にある部屋を探索しているうちに膨大な本を貯蔵しているような部屋にたどり着いた。
この部屋で探索をしていると片山が何かを感じ取ったのか当たりをキョロキョロと見回っている。
「どうした?何かいたのか?」
俺が話しかけると俺の方を向いて複雑層に話しかけてきた。
「何ていうか……この部屋幽霊がいるみたいなんだけど・・・・・気配がエントランスで会った兄妹の霊とそっくりなの」
俺は片山の言葉を聞いてあたりを見渡していると後ろから
突然声をかけられた。
「少年たちもここに閉じ込められたのかい?」
後ろを振り向くと青白い光を纏った凛とした顔をしたかなり高齢の執事服を着たじいさんが立っていた。そのじいさんは俺たちの方に近づいてくるとさらに話しかけてきた。
「お主達は随分と若いようじゃが、ここに幽閉されたということは……おそらくもう二度と出ることは出来んじゃろう……ここはそういう場所じゃ」
じいさんは俺たちをどこか憐れむような表情で眺めていた。その途中で片山が何かに気付いたのかじいさんに質問し始めた。
「おのお爺さん……突然ですみません。随分とこの館に詳しそうな口ぶりですが、ひょっとするとあなたはこの屋敷が生まれる原因に何か関係があるんじゃないでしょうか?」
片山はかなりストレートにじいさんに質問し始めた。じいさんは何か複雑そうな顔をして片山の質問に答え始めた。
「なるほど、そこの娘さんは霊力を持ち合わせているだけでなく中々賢いようじゃな……確かに私はこの屋敷が異界となる以前から生前この屋敷で働いておった」
俺はじいさんの衝撃の発言にかなり驚いた。正直この世界にも何かもとになる何かがあったということは分かったからだ。
「お爺さん。生前にこの屋敷で何があったのかを私たちに教えてくれませんか?」
片山に話の続きを話してほしいと頼まれた爺さんは……
「すまん……これだけは何人たりとも話すことは出来ん……下手人話すとこの屋敷の主と……」
「屋敷そのものの怒りを買う」
じいさんの発言を聞いて俺たちは唖然とした。この屋敷そのものに意思があると言っているのだ。俺は屋敷の怒りという得体の知れない何かを知りたいという気持ちと、屋敷の主なんて訳の分からない奴に閉じ込められた怒りからじいさんに怒鳴りつつ問い詰めてしまった。
「じいさん!屋敷の怒りを買うってどういうことだよ!?それに屋敷の主って!?」
俺がじいさんを感情の迫ってしまったが、片山が慌てて俺のことを止めてくれた。
(何で止めるんだよ!?せっかく屋敷の秘密について分かりそうだってのによ)
(霊を怒らせるようなことをしちゃだめ!本人が言いたくなさそうにしてるんだから、せめて今どんな形であれ貰うことの出来た情報だけで我慢しよう?)
俺が冷静を取り戻した後片山がじいさんに話しかけた。
「お爺さん、先ほどはごめんなさい。出来たらでいいのですがお爺さんが教えられる範囲でいいので私たちに何かしら情報をくださいませんか?」
片山が謝罪も含めて情報提供をお願いすると爺さんは俺たちにある程度の情報を提供してくれた。
「まず最初にこの館の構造を説明しておこう。この館は四階建ての本館と西館と東館とそれと三階建ての別館の四つの建物がある。別館以外は四階以外に連絡通路があるにはあるが、今は東館の連絡通路は三階、西館の連絡通路は二階からじゃないといけないようになっているんじゃ。別館に入るにはおそらく東館にあるであろう鍵が必要じゃ。」
「危険度としてはどの建物がどれくらい危険ですか?」
じいさんは片山の質問を受けるとそのまま凛とした表情を崩さず答えた。
「安全な順番からいうと、本館、東館、西館、別館じゃな。とくに別館はもうなん百年も前から怨霊の溜まり場になっておるから行くのはかなり危険じゃ。」
俺は次に確認しておきたいことを聞いてみることにした。
「俺も少し気になるんだけどよ、俺たちこの屋敷に入る前にデュラハンっていう怨霊に遭遇して屋敷に入ったら追ってこなかったんだけどよ……あいつってどういう行動パターンで屋敷を回ってんだ?」
じいさんは俺の聞いてきたことに一瞬目を丸くしてこちらを見てきたがその後すぐに俺たちの方を向き直して答えだした。
「奴に出合って無事じゃとはな……それよりも奴の行動の傾向についてじゃが、大体は奴は別館以外の屋敷の建物を適当に巡回してる場合が大半じゃが、たまに外に出てくることもあるのじゃ……外に出るときは何かを探しておるらしくてのう、屋敷まで逃げ込んだ人間は【殺せない」らしい」
デュラハンについての情報を聞いた後、俺たちは爺さんから本は危険な物もあるが、基本的には屋敷で生き残るための情報が書かれている場合が大半だから読むようにと勧められた。特に危険な本の特徴としては赤い表紙に黒文字の英語でタイトルが書かれている本が特に危険らしいと聞いた。
次に警告として、外に出ることと、本館にあるらしい地下室にだけはするなと言われた、外の方は、食料が無いし広すぎて屋敷に戻れなくなるからだと説明されたが、地下室のことについては聞いても「とにかく危険だから」としか説明されなかった。俺たちは深く詮索することもできなかったのもあり、そのまま部屋を出ることになった。
「あともう一つ注意じゃが、今本館には階数ごとに塒を変える下級怨霊がいるらしいから今は一回にいないようじゃが気を付けるのじゃぞ。それと……」
部屋を出ようとした俺たちを爺さんが引き留めた。
「わしは爺さんと呼ばれるほどの年齢ではないし、【セバスチャン】というれっきとした名前があるのじゃから、以後はそう呼ぶように」
続く
こんばんわドルジです。
今回は健二のパートを書きました。次ぐらいには怨霊が出てくる内容を書きたいと思います。
あと今まで紹介できなかった幽霊の簡単な紹介をしたいです。
幽霊紹介
少年 少女
種別 幽霊
思考 温厚(これ以上犠牲者を出したくない)
霊力 やや強力
危険度 青白い(無害)
獲物 無し
原点 日本在住フランス人(明治~大正時代)
イメージCV 五十嵐裕美
説明
健二たちが屋敷で最初に出会った幽霊。十二歳前後の少年と少女の姿をしている。
もともと明治時代から大正時代の日本に住んでいたフランス人の子供であり、約百年前に屋敷に迷い込んだ。死因は餓死。
セバスチャン
種別 幽霊
思考 冷静(可能な限り犠牲者を減らしたい)
霊力 強力
危険度 青白い(無害)
獲物 無し
原点 イギリス人(数百年前)
イメージCV マダオ
説明
屋敷が異界化する以前からつかえていたらしい執事。
屋敷の秘密について知っているらしいが、頑なに話そうとはしない。