第三話Aパート 赤の名を持つ男 Having a name of RED man
朝斗視点
健二と別れた俺たちは、赤マントを探すために二階の探索始めた。屋敷の内装は、荒れてこそいないが天井や床に至る全てのものが真っ赤に染まっていた。俺たちは正直目がちかちかして痛いのを我慢しながら歩いた。
「あの……毛利君。ちょっと確認したことがあるのですがいいでしょうか?」
二階の最初の部屋の扉を開けようとした時に篠原が声をかけてきた。俺は何処か素っ気ない様子で要件を確認した。
「どうした?」
俺が返事したのを見た篠原はどこか複雑そうな顔をして話を続けた。
「どうして二手に分かれることにしたのですか?私は最後まで反対だと言いましたよね?」
確かに篠原はさっきの方針を決めるための話し合いの最中、俺が提案した二手に分かれるという意見に最後まで反対していた。理由としては四人の方が生存率が高いかららしいが、俺にも俺なりな考えがあって提案したのもあるし、正直このまま不満を持たれたままでは探索にも支障が出だろう、ここは話し合いの時には言わなかった理由も説明もした方がよさそうだ。
「理由としてはいくつかあるが、第一に俺はあまり信じられないけど、ここまで来て心霊現象を否定することもできないし、この場合心霊現象の知識のある篠原なら赤マントの特徴が分かるはずだから赤マントの探索にはお前が一番適任だということと、次にこれは俺の推測だがエントランスに遠ければ遠いほど危険度が高いんじゃないかと俺は思う。だからこそ霊感皆無の体育会系の健二や、逆に霊感が強すぎる片山には赤マントの探索は難しいと判断したからだ」
俺の理由を聞いた篠原はどうやら理由自体には納得したようだが、どうやらまだ何か不安があるらしく俺のことを睨んでいる。正直篠原は俺に何か恨みでもあるんじゃないかと考えていた。ここで探索に支障が出るのもまずい判断した俺は篠原にその点を確認してみることにした。
「篠原、さっきから俺にかなり食って掛かるけど、俺に何か恨みがあるのか?恨みがあるにしても今ここでそんな私情に囚われていたら、生き残ることは難しいぞ」
俺の発言にハッっとしたような顔をして顔を伏せていた。
「ごめんなさい。別に恨みがあるわけじゃないんですけど……ただ私は生き残ることの方が大切だと思いましたので、その点を優先しただけだったのですが……」
以外にも篠原は謝罪をしてきた。いつも毒舌で周りから浮いていても特に気にすることなくクラスで淡々とオカルトについて調べたりしている姿からは想像できない光景だった。
「謝ることが意外とでも思いましたか?私でも悪いと思ったことは素直に謝ることぐらい出来ますよ。ただ……あまり気を悪くして欲しくはないのですが……」
篠原は何処か申し訳なさそうかつ言いづらそうに何かを言おうか言わないかを考えていた。俺はもったいぶられるのはあまり好きではないのもあって正直に言いたいことがあるなら言ってくれと言った。
「正直……こんな状況で、少しでも効率がいいとしてもリスクの高い選択ができる毛利君の態度を見ていて……正直冷たいと思ってしまいまして……」
篠原の口から出た言葉は正直自分でも想像の付くような内容だった。俺自身自分が覚めた人間だということは十二分理解できていたし、言われ慣れていることでもある。
「大丈夫だ。正直言われ慣れている。それよりも早く探索に戻るぞ」
篠原が俺の言葉に頷いたのを確認した後に、ドアを開けようとしたけれど鍵が掛っているのか開かなかった。
次に俺は右隣にある部屋を調べることにした。扉を開けようとすると扉は開いた……
ドアの向うは客室のようなベッドが二つある部屋だったが、二つ大きな違いがあった。一つはさっきまでと同様の真っ赤な部屋であることだったことで、二つ目は……
部屋に入ってすぐの俺の足元に白骨化した死体が転がっていたことだった。
「なっ!?」
俺は驚愕のあまり一瞬後退さった。俺の後ろから部屋を覗き込んでいた篠原も白骨死体を見ていたらしく手で口元を覆って悲鳴を出さないようにしていた。
「そんな……これは……本物の死体ですか……?」
篠原は部屋の前の廊下でうずくまってガタガタと震えていた。俺は震える篠原の肩をつかんで軽く揺すりながら話しかけた。
「この部屋は多分危険だ。ここから離れるぞ。」
篠原は震えながら返事をした後に立ち上がって俺たちと一緒にその場を離れた。
「本当に死体が……」
まだ恐怖が抜けていないのか篠原はだいぶ落ち着いてきてはいるけれども……まだ震えていた。
「すまない。オカルトが好きだったからこういうのは慣れているのかと思って拝領が足りなかった。」
篠原は真っ青になった顔で見上げ、震えるような声で話し始めた。
「私……実際の死体や自分が心霊現象に逢うのはダメなんです。信じられないかもしれないですけど、小さな時から金縛りにあったりしたこともあって……話を聞く分には好きなのですけど……」
俺は篠原の意外な告白に内心驚いた。篠原の普段の言動からはとても想像の出来ない一面だったからだ。俺が驚いているのに気付いたのか篠原は目を伏せて
「やっぱり可笑しいですよね?私がこんな風だって知って正直引きましたよね?」
「いや……驚きこそしたが引いたりはしていない。自分のどうにもできない部分を悪く言われる苦しみは分かるからな……」
篠原が俺の言葉に一瞬驚いたように目を見開いたことに気付いた俺は、言い過ぎたことに自分で気づいた。俺は慌てて篠原に今言ったことは忘れてくれと言った後に俺は震えも止まった篠原に立てるかどうかを確認した。篠原はコクッと頷き、それを確認した俺たちは移動を始めた。
二階を改めて探索した俺たちは、一部鍵が掛っている部屋があることを発見した。どうやら篠原は持ってきていたルーズリーフに簡易的な二階の地図を描いていた。どうやら片山と話し合って地図を描くことを分かれる前に決めていたらしい。
俺たちは北側にある最後の部屋のドアを開けて中に入った。
中は本棚と机と椅子しかなく、おそらく書斎だと思われる。ふと本棚近くを見ると一人の男が本を読んでいた。黒い髪に黒一色のスーツを着ているその姿から一瞬怨霊ではないかと考えたが、少年と少女にもらった銀の十字架は怨霊に反応するらしいが、特に何も変化がなかったこともあり、俺たちは生存者ではないかと考え話かけることにした。
「すみません。あなたもここの生存者ですか?」
篠原が話しかけると本を読んでいた男は振り向いてきた。男の瞳は血のように真っ赤で、俺は一瞬危険ではないかとも考えたが、男はにっこりほほ笑むと
「あなたたちもこの館に閉じ込められたのですか?私も……友人と一緒に閉じ込められたのですがはぐれてしまって……」
男は柔和な笑みを絶やすことはなく俺たちに接してきた。男は本を俺たちに見せながらこうも続けた。
「ああ、そうだ。まずは自己紹介をしておきましょう。私は【赤井 龍之介】と申します。以後お見知りおきを。後ここにある本は一部かなり危険な本もありますけれど、大半は死んだ犠牲者の念が乗り移ったのかこの屋敷に関連した情報も載っていますので読んでおくことをお勧めしますよ」
赤井さんはそういうと俺の手に本を握らせた。タイトルは【生存者へ……】となっている。俺は本を一通り読んでみることにした。
「怨霊には気をつけなくてはならない。奴らの生者への妬みは凄まじい……怨霊に絶対同情してはいけない……目を合わせてはいけない……声を掛けてはいけない……然もないと……【奴らに取り殺されるぞ……?】」
俺は少し怖くなって本を読むのを止めた。赤井さんは苦笑いしながら俺が返そうとした本を受け取った。本を受け取った赤井さんは本を棚に戻して話しかけてきた。
「少々無気味ですが、読んでためになる情報も多いですからぜひ他の本も探して読んでみることをお勧めしますよ」
赤井さんは笑顔を崩すことなく俺たちに話しかけてきた。俺はふと赤井さんに聞きたいことを聞くことにした。
「あと一つ聞きたいことがあるのですが……よろしいでしょうか?」
俺が疑問に思っていることを聞くと、赤井さんは快くどのような質問であるのかを聞いてきた。
「赤マントを探しているのですが何か心当たりを知りませんか?」
赤井さんは一瞬真顔になったと思ったらさっきまでの柔和な笑みに戻り話しかけてきた。
「赤マントですか?ええ会い方も知っていますよ」
続く
どうもドルジです。今回から探索パートに突入しました。
今回から健二と朝斗のパートを交互に書いていきたいと思います。あと今回から生存者や幽霊や妖魔などの新情報が出次第、登場人物をその話で新しく登場したキャラを紹介していきたいと思います。
追加キャラ紹介
名前 赤井龍之介
性別 男
年齢 年齢不詳(20代前半~中頃)
身長 180cm代前半
体重 不明
髪型 やや長い(黒髪)
趣味 不明(読書?)
特徴
毛利と篠原が洋館の二階の書斎で出会った謎の青年。
常に柔和な笑みを崩さず、柔らかな物腰で他人と接っしている。
それなりに長い間屋敷に居る様子で、現在は【逸れた友人】を探している。
イメージCV 小野大輔