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第二十話 真紅 Crimson

健二視点


 後ろから追いすがってきた【闇】から逃れた先には、石造りの大きい上り階段がある。


「また上りかよ……」


 小鳥遊さんが、上までそびえる階段を眺めながら冷や汗を書きながら呟いた。俺自身もそびえ立っている階段を眺めながら、心の中で毒を付いた。


(おいおい。さっき階段を駆け上がったところなのに、また階段かよ)


 しかし、いくら心の中で毒付いたとしても、階段の長さだけは変わらない。階段に毒付いた所で何も意味のないことだ。自分の中で階段のことを整理していると、朝倉さんが口を開く。


「この階段を登りきった先の別館は、危険だと思うし、今の内に少し休憩をした方がいいんじゃないかしら?」


 朝倉さんの提案を受け、俺は、先ほどの闇を思い出し、躊躇してしまった。そして、朝倉さんの意見に対して敬語を崩さないように意見する。


「待ってくださいよ。今は、さっきの闇や怨霊たちが追いついてくるのかも分からない状態なんですから、ここで休むのは危険じゃないですか?」


俺の提案を受けた朝倉さんは、一瞬考え込んだ後に俺の考えに対して答えた。


「確かに、それも考えものね……でも片山さんや篠原さんの体力を考えると、そろそろ一度休んだ方がいいとは思うのよね」


 そう言うと、朝倉さんは、複雑そうに考え込み始めた。俺自身も、慌てて片山と篠原の様子を確認すると、二人は明らかに疲れが溜まっている様子だった。


「なら、間をとってこの階段の先で休むとういうのはどうでしょうか? この先の別館が、どれほど厄介なことになっているのかが分からないですし、だからと言って、先ほどの闇がいつ迫ってくるかも分からないとなると、万が一闇がこの階段の所まできたとしても、すぐに逃げ込める場所にいるしかないと思います」


 俺が思い悩んでいると、朝斗がそう提案した。提案を受けた朝倉さんは、冷静に答える。


「確かに、それならある程度は逃げきれる可能性も出てくるけれど……うん。確かにそれが今できる範囲ではまだ良い方法ね」


 二人のやり取りを確認した俺は、片山と篠原に「体は大丈夫か」と話しかけた。


「私は大丈夫だよ。ごめんね高本くん。心配かけちゃったかな」


「私は大丈夫です。こんなことで、みんなの足を引っ張ることにはなりません」


 二人はそれぞれらしく大丈夫であると答えたが、どう見ても顔には疲れの色が見えている。


「貴志。気持ちは分かるが、今は上に進もう。さっき逃げている時に気づいたことなんだが、さっきの【闇】は水に近い性質のように思えたんだ。」


 俺が二人を心配していることに気づいたのか、朝斗が俺の方に話しかけてきた。


「悪い、ありがとうな――水に近い性質?」


 俺は、朝斗の【闇】に関する発言に驚きを隠せずに突っ込んだ。朝斗は冷静さを失うことなく答える。


「それは移動しながら説明する」


 そう言うと、朝斗は階段を上り始める。俺を含めた他の全員も追いかける用に階段を上り始めた。



「さっきの【闇】は水路から現れた。それだけじゃなく、あれには一定上の質量もあることは、さっき俺たちの手前まで迫っていたことを考えると、何で構成されているかは分からないが、物質ではあることは間違いない。水路から溢れ出用としていた時も、実際の津波に近い動きをしていたからな」


 俺は階段を上りながら、朝斗の説明を聴き続ける。


「ただ、あれが実際にただの水であるとはとても思えない。一目見ただけでも、飲み込まれたら死ぬなんて分かるような水はこの世界に存在するわけがない。あるとすれば、それこそ科学で説明できない存在ということだ」


 朝斗は何処か不快な様子でそう言った。俺はふと、階段手前の扉で【闇】を見たときに感じた違和感について話した。


「そういえば、さっきこの階段に入る前に【闇】を見たときに気づいたんだけど、あれの中で人が蠢いていたように見えたんだけど――」


 俺が言葉を紡ごうとすると、朝斗は顔を青くして止める。


「貴志。それ以上は言わないでくれ。頼む……」


 朝斗のあまりの鬼気迫る様子に、俺は言葉が詰まった。朝斗は顔を青くしたまま続ける。


「非科学的だが、あの【闇】は人間にとっては最大の天敵と言える存在だということだけだ。おそらくその人影は……」


 朝斗はそれだけ言うと、言葉を止める。そこで何が言いたいのかを察した俺は、背中に寒気が走るのを感じた。


(嘘だろ。じゃあさっき見えたあれは全部)


 俺は、こみ上げてきた吐き気を抑え、階段を登る。



そして、階段を上り切ると、そこには少し大きめの扉があった。俺たちは、一度それぞれの顔を確認し、扉を開く。


 扉を開くと、赤黒い別館の廊下らしきものが広がっていた。窓も今までとは違い、黒い何かが凝り固まり、全く外を覗くことができない。


「何ここ。今までよりもずっと気持ち悪い」


 片山は、顔を青くしながらそう呟いた。


 俺自身も、今までとはまるで違う別館の雰囲気に、今までにないほどの不快な感覚を感じた。


「みんな。ここはあまりにも異常すぎる……まず拠点になりそうな場所を探そう」


 桐生さんは、少し顔を青くしながらもそう言った。                       


                                            続く


 どうもドルジです。

 今回は2ヶ月ほど更新が遅れてしまいました。今月はある程度は更新することができると思います。

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