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第十九話Bパート 闇 Darkness

健二視点


 俺たちは、騎士に促された通りに、さっき騎士が通ったであろう道を走り続けた。後ろからは、鉄と鉄がぶつかるような音が、時々響いてきている。そんな中を逃げ続けている中で、篠原が口を開く。


「それにしても、あの騎士の言っていた、この屋敷の主にとっての大切なものを探せというのはどう言う意味でしょうか?」


 篠原は、考え込むような様子で走りながらそう言った。俺自身も正直、どういうことなのかはあまり分からなかった。そんな時、桐生さんが口を開いた。


「僕の見立てに過ぎないけれど、あの屋敷の主の生前の部屋らしき場所で見た、屋敷の主の妻と子供じゃないかな? あの時の残留思念を見ただけでも、あの屋敷の主は、妻子のことをとても大切にしていることはわかったからね」


 桐生さんの言葉に続くように、今度は朝斗が口を開く。


「桐生さん、その場合は、別館にいるらしい屋敷の主の妻子を発見することがまずやるべきことですよね?」


 朝斗の言葉を受けた桐生さんは、コクリと頷いた。二人のやり取りを聞いていた俺は、驚きつつも、これからするべきことを見据えることができた。他のみんなも、俺とは少し違う形ではあるが、これからどうすればいいか分かったようである。


「つまり、あの騎士が言っていたように、この奥から屋敷の別館に向かって、別館にいるこの屋敷の主の奥さんと子供を探すことが私たちの次にするべきことということね。」


 朝倉さんは、俺たちの中でのそれぞれが考えていることの細かい齟齬に感づいているのかは俺には分からないが、俺たちの中での考えの齟齬を改めさせるためかのように、そう言った。朝倉さんの確認事項に桐生さんが真剣な面持ちで答える。


「うん。その為にも、まずは、誰ひとり欠けることなく別館に向かわないといけないんだ」


 桐生さんの「誰一人欠けることなく」と言う言葉を聞いた俺たちは改めてこれからやるべき事の重要性を再認識することが出来た。


 それから先に進んでいると、俺は、奥の方に二つの扉を見つけた。


「みんな。奥の方に扉があるぜ」


 俺たちは、そのまま奥にある扉に駆け寄る。


「こっちは開かないな」


 右側にあった黒い方の扉のドアノブを回そうとするが、扉を開くことはできなかった。


「もう一つの方は開いたぞ」


 俺たちはそのままあけることのできたもう一つの方の扉の奥へと向かった。

 そこからは、あまり長くないもののようであったが、下へと進む階段が伸びている。中は錆びた血の様な酷い匂いが充満していた。


「何……この鼻が曲がるような酷い匂い。ひょっと、してこれって血?」


 片山は、花を抑えながらそう言った。周りの全員が不快そうに顔を歪めながら鼻をつまんでいる。


「とりあえず。下に降りてみようぜ」


 俺は、今にも吐き出しそうな口をなんとか動かして、そう言うことが出来た。他の全員も、花をつまんだままで頷いた。


 下に降りてみると、そこには、下水道の様な場所が広がっていた。そして、この異臭の正体が分かった。


「何だよ。この水路……」


 下水道の水路は、赤黒い血の様なものが流れ続けていた。周りにも、血が飛び散ったかのように、壁を黒く染めている場所が目に見えるだけの範囲でも多く存在した。


「うっ……こんなところは早く通り抜けてしまおう。それにここは何だか居心地が悪い」


 朝斗は、どこか顔を青くしつつそう言った。俺たちも、そのまま特に否定することなく、そのまま朝斗の言うとおりにこの下水道を通り過ぎようとした。


「なあ。何か水が迫ってくるような音がしないか?」


 俺たちが先に進もうとしたその時、小鳥遊さんが、とんでもないことを言い始めた。それを聞いた朝倉さんは、明らかに起こった様子で、口を開く。


「ちょっと。こんな時に縁起でもないこと言わないでよ」



  ドドド



 朝倉さんが、小鳥遊さんを怒鳴っている間に、俺の耳にも、水のような何かが迫ってくるような音が聞こえた。


「嘘……」


 朝倉さんも気づいた様子で、俺たちは、慌てて元きた道を戻ろうとした。しかし、さっき通ったはずの扉が開かなかった。


「嘘でしょ!?」


  ドドドドドド


 扉が開かなくて慌てふためいている俺たちを、小鳥遊さんが、叱咤するかのように口を開く。


「こうなったら、下水道の奥までイチかバチか走ってみるしかない」


 小鳥遊さんの言葉を聞いた俺たちは、一瞬慌てこそしたものの、すぐに、それが今できる最善の方法であることが、すぐに分かった。


「分かった。今は奥まで行ってみよう」


 桐生さんの言葉と同時に、俺たちは再度階段を下り、奥に向かって走り始めた。


ドドドドドドドドド


 半分ぐらい走り終わった時に。ふと俺は後ろを振り向いた。そこには、俺たちのいた側の下水道の下にある水の通るための入り口から赤黒い【闇】が溢れようとしていた。それが、俺たち全員を飲み込むのには、十分なモノであることが何故か見た瞬間に確信することができた。


「おいおい。なんだよあれ」


 俺は思ったことがそのまま口に出てしまった。俺の発言を聞いた他の全員一瞬であるが、後ろの【闇】を見た。全員があの闇がどんなものかが分かったのか、俺も含めて、今までよりも走るペースが一層増した。



 さらに走り続けると、奥の方に、上に伸びた階段と扉を見つけることができた。


「みんなもうすぐだ! あともうひと踏ん張り頑張ってくれ」


 桐生さんがそう言うと、ペースが少し落ち始めていた他の全員も、力を振り絞るかのように、階段まで一気に走り抜け、そのまま階段を駆け上った。


 扉の上からふと後ろを見ると、既に闇が階段の下まで溢れかえっていた。ただ、様子を見ていると、これ以上闇が上まで来ることは内容である。


「みんな……万が一のこともあるから、このまま奥まで進もう」


 みんなは、俺の言葉に賛同するように、それぞれが扉を開いて別館へと続く通路へと向かった。最後に俺が通る時に、後ろを振り向くと、先ほどよりも、濃度が低下した【闇】の中に複数の人影がうごめいているように見えた。俺は、今見たイメージを頭から振り払い奥へと進んだ。


続く



おはようございます。ドルジです。

 三月中に投稿すると言っていたのですが、四月初日の朝となってしまいました。申し訳ありません。

 次の更新はいつできるかは少しわかりませんが、少しでも早い更新をしたいと思います。

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