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第十八話Aパート 散花 Fall Flowers

赤井視点

 

「私の敗北?何を根拠にそう言っているのですか?あなたは、まだ私に一度たりとも直撃を与えていませんよ」


 黒騎士は、私に一度たりとも決定的な一撃を与えていない。むしろ今の段階だけ言うならば既に再生されているとはいえども私はすでに浅い一撃ならば黒騎士に入れている。


「いや。貴様の負けだ。お前では私の霧剣、霧の刃を防ぐことはできない」


 それも事実である。数合切り結んだだけで、剣と槍の刃がまとっている霊力が異質であることは分かっていた。


「確かに。ただ、どうやらあなたの霧の刃は、普段纏っている霧の盾、いや第二の鎧とでも呼ぶべきかな、それを攻撃用に変換させているものだ。」


 私の指摘を黒騎士は黙って聞いていた。そのまま私は続ける。


「つまり、今のお前は攻撃力を跳ね上げさせている代わりに実質的な防御、鎧を捨てているも同然の状態だ。違うか?」


 黒騎士は私の言葉を聴き終えると淡々と答えた。


「然り。確かに今の私は、持てる霧を全て剣に回している。故に貴様は分かるであろう」


 黒騎士の言わんとしていることも分かる。私ではおそらくあいつの霧の刃を一撃でも受ければ確実に死ぬ。対して相手は、例え私の一撃を受けても、すぐに回復してしまう。人間とは違い頭を狙っても対して違いはない。


「あの小僧共は意図してかは知らないが、ここに近づいてきている。故に殺す。貴様のような怪異などを斬り殺しても我が恨みは晴れん。言わんとすることは分かるであろう。どけ」


 黒騎士はそれだけ言うと、最後通達のごとく剣をこちらに向けてくる。だが答えはもう既に決まっている。


「お断りだ。私は、俺はお前と決着をつけなければ先に進めない。お前が生きている人間を殺したいのと一緒だ」


 私の言葉を受けた黒騎士はただ一言だけ言う。


「そうか。ならば死ね」


 黒騎士は、凄まじい速さで跳躍して斬りかかって来る。力では勝てない私は、相手の斬撃を躱し、素早く作った血で出来た刃を相手の胴体に向けて投擲した。しかし黒騎士はそれを左手の霧の爪で掴み、そして砕いた。しかしそれだけでは終わらない。


「血霧」


 私の号令に合わせて、砕かれた刃の破片は霧状に変化した。黒騎士はさほど気にする様子もなく剣を構えた。


「どうした。それで目くらましでもしたつもりか?それともいつぞやみたいに霧を無数の刃にでも変えたりするつもりか?」


 黒騎士は情けないと私、を非難するかのように言う。もちろん目くらましも兼ねているが、それだけではない。私自身を変化させるための時間稼ぎも兼ねている。


「行くぞ、黒騎士。貴様にこの動き見切られるか。」


 肉体の変異の準備を終えた私は、低く身を構え一言呟いた。



「走れ、紫【飯綱】」



 次の瞬間、私は、自らを高密度かつ小型の血の刃に変化させ、黒騎士に向けて疾走し、左腕を切り落とす。


 この飯綱こそが、私の生み出した不死身の黒騎士を殺すための最後の奥の手である。自分自身を刃に変えることは、他のことよりも遥かに簡単な事である。故に私は考えた。自らを如何にして効率よく、そして迅速に敵を殲滅する事が出来るのかを。その結果が、この小型化する程の密度と強度と音速に迫る程の速さを誇る刃へと自分自身を変化させることであった。


「何!?」


 左手を再生させようとしながらも、黒騎士は振り向く。血霧も回収しより強固になった私、飯綱は、再度黒騎士に飛びかかった。音速に迫る速度で飯綱は、黒騎士の体を切り刻んでいく、しかし、黒騎士もただ無意味に斬られ続けるわけではなく、霧剣の霊力を全て普段纏っている黒い霧、つまり防御に回しダメージを最小限にとどめている。


「これで止めだ」


 黒騎士を複数回切りつけた私は、僅かに助走を取るために距離を取ると黒騎士のボロボロの体を真っ二つに両断するために襲いかかる。


「まだだ!!」


 しかし、それを待っていたかのように、黒騎士は飯綱を回避し、その側面に霧剣を叩き込んだ。


「ガハッ!?」


 側面から切り込まれた私は、広間の端まで飛ばされていった。一方黒騎士も霧剣の元となっていた剣が渾身の一激に耐えることができず、砕けてしまった。


「やはりな。貴様は最後に強力な一撃を放つと踏んでいた。強力な力ほど隙も自ずと大きくなるもの。分かるな。それが貴様の敗因だ」


 黒騎士は、特に何も感慨も無い様子で私を見る。それは一瞬ながらも怨念に埋もれ、血に飢えた亡者の目ではなく、自分自身に肉薄した強者を見る目であった。だからこそ感慨がないのだろうと、私は思った。彼にとっては、自分に挑みそして死んでいった戦士がいることは生前から当たり前の事であったことが伺えた。


「まさかお前にそんな感情があったとはな……」


 私は、思っている事がそのまま口に出てしまった。その言葉を受けた黒騎士は特に感慨も無い様子で答える。


「何。少しだけだが昔を思い出しただけのこと。強者が戦い、より強き者が勝ち残ることは至極当然。故に赤マントよ。貴様はここで死ね」


 すると黒騎士は霧を腕から伸びる非物質の剣へと変え私に斬りかかる。


「ダメっ!!」


 しかしその瞬間私の目の前に沙織が現れ黒騎士に斬られた。


                         続く


お久しぶりです。ドルジです。

 今回はやっと更新することが出来ました。暫くはある程度更新ペースを戻すことができそうです。これからもよろしくお願いします。

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