第十七話Bパート 騎士の思い Thought of the knight
騎士の思念
赤く染まった世界に驚いた騎士たちは慌てて各々の武器を手に持って周りを警戒し始めた。動揺隠せないでいる騎士たちを白騎士が落ち着いた様子で押しとどめる。
「皆慌てるな。ここで何が起きているのかは私にもわからないが、ここで慌てれば何が起きるかはわかったものではない。ここは部隊を3つに分割し、内2部隊が近隣を探索。残り1部隊は拠点に待機。探索をする2部隊は二刻経っても何も見つからなければそのままこの拠点にまで戻ってくる。探索部隊のリーダーは私とブライアンが、残りの舞台はラルフが勤めてもらいたい。依存はないな?」
白騎士が周りに確認すると他の騎士たちは特に反論することなく頷いた。確認したらすぐさま動くかのように、騎士たちはそれぞれの舞台に分かれて始める。
一瞬視界にノイズが走ったと思うと場面が入れ替わっていた。場所こそ同じな書であるけれども、そこにはおそらく拠点に残っていたのであろう騎士たちの死体が転がっていた探索から戻ってきたと思われる騎士たちは明らかに驚愕している様子である。
「騎士長!これは一体!?まさか悪魔の仕業じゃ……」
一人の騎士が白騎士に問い詰めるかのように問いかけた。白騎士は明らかに動揺している様子で答えた。
「私にもわからない……ただ一つ言えることは私がここで彼らを待たせていたせいで彼らを死なせてしまった。全責任は私が負う。いまはとにかくこの危険な森を抜けねばならない」
白騎士の言葉を受けた騎士たちは一様に頷いたが、一人の騎士が白騎士に訪ねた。
「彼らの墓はどうしますか?」
白騎士は意表を突かれた様子で騎士を眺めた後に答えた。
「申し訳ないがやむを得ない。彼らはこのままおいていこう。墓を作ってやるにも時間がなさすぎる」
白騎士の言葉を受けた騎士たちも納得した様子である。騎士たちは現在の状況が異常であることを肌で感じていた上に仲間の死体を見たことで現状の異常さを再確認し、ある程度は冷静さを取り戻したのだろう。
「ここに留まるのは危険だ。この拠点、及び拠点の備品は食料と最低限の武器以外の全てを破棄する」
白騎士がそう言った次の瞬間再び視界にノイズが走った。ノイズが晴れると、そこは洞窟の入口だった。そこには三人の騎士が立って話し合いをしていた。
「この洞窟入ってみるか?」
一人の騎士が、特徴を言うなら鎧に十字架が描かれていた騎士に話しかけた。おそらく先ほど俺たちと話をした騎士だろう。
「正直危険すぎるが……だからと言ってこのまま何もせずにいるわけには行かないからな……」
十字架の騎士の言葉を受けた騎士は明らかにどこか怯えたような様子である騎士は十字架の騎士に対して怒鳴るように答える。
「ふざけんじゃねえぞ!そうやって調べようとしてさっきもザイードのやつが死んだんだぞ!お前は俺たちの命をなんだと思っているんだ!」
錯乱して大声を上げた騎士を別の騎士が制止した。
「おい馬鹿。今大声を出したらどうなるかわかったもんじゃないぞ」
仲間の制止を受けたけれども、騎士は悪態をつくことを止めなかった。
「うるせえ!!だったらコイツだけ死ねばいいんだよ!ひょっとしたらこいつが俺たちを罠にはめたかもしれねえんだからな!!この裏切り者!!」
次の瞬間錯乱した騎士は腰から剣を取り出し十字架の騎士に向ける。
「待ってくれ。私は仲間を裏切るようなことはしない信じてくれ」
十字架の騎士が懸命錯乱した騎士に説明しても剣を収めようとせず、むしろ十字架の騎士を斬ろうとした。
「くたばれ裏切り者!!」
次の瞬間先ほど錯乱した騎士をたしなめていた騎士が錯乱した騎士を槍で貫いた。
「ガフッ」
槍で鎧の隙間を貫かれた騎士はその場に蹲って二度と動かなくなった。
「おいお前……」
十字架の騎士は呆然とした様子でもう一人の騎士を眺めた。騎士は十字架の騎士に答える。
「済まない。こうするしか私には思いつかなかった。急ごう。ここに長くいるだけで気が狂うみたいだ。まるで地獄そのものだよ」
騎士は飄々とした様子で十字架の騎士にそう言うと槍を肩に担いで洞窟へと向かっていった。その後を十字架の騎士が「済まない」と付いていった。
再び視界にノイズが走ったと思うと、暗い洞窟を先ほどの十字架の騎士がフラフラとした足取りで歩いていた。
「奴らはまだ追って来ているのか……」
騎士はそうつぶやくと後ろを振り向いた。騎士が振り向いた方を見ると、赤黒い人ともにつかぬ存在がひしめき合っていた。俺から見ても身の毛のよだつほどの禍々しさだった。
「私もここまでか……剣も折れ食料も尽きた……もはや奴らに飲まれるしかないのか」
十字架の騎士がそう呟きながら歩いていると、石につまずき転倒した。しかも運が悪いことに騎士が転倒した先には深い穴が空いていた。騎士はそのまま何もなかったかのようにその穴へと飲み込まれ、しばらくすると何かが潰れるような音がした。
「嘘だろ……」
やっと出た言葉はそれだけで俺はその場に呆然と立っているだけだった。周りにいた赤黒い怨念の塊みたいなものは俺が最初からその場に存在しないように去っていった。その瞬間俺の意識が急速にその場から引き戻されていった。
続く
遅れながら新年明けましておめでとうございます。ドルジです。
今回はかなり更新が遅くなってしまいましたけれども、おそらく今月はこの小説をもう更新できないと思います。誠に申し訳ありません。
続きは来月書きたいと思います。