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第零話 血濡れ Blood Covered

??視点。


 健二の頭に何かとてつもないモノが流れ込んできた後に見えたものは一つの大きな屋敷だった。


「ここは……まさか昔のこの屋敷なのか……?」


 健二が周りを眺めていると屋敷の中にいつの間にか場所が写っていた。屋敷の廊下には複数の使用人達が忙しく歩き回っていた。その光景を眺めているとエントランスの方から一人の紳士が現れた。それを見た使用人達はお辞儀をしつつこの屋敷の主であろう中年ほどの整った容姿の紳士を迎えた。


「あれがこの屋敷の主なのか?……それにそもそもこの映像は一体」


 健二は少し冷静になった頭で考えていると、屋敷の主らしき男は口を開いた。


「いつも出迎えありがとう。私のことは構わないから皆は各自の仕事に戻ってくれ」


 主がそう言うと並んでいた使用人達は一斉に散って各自の巣ごとに戻っていった。


「お帰りなさい。旦那様……」


 使用人達が戻っていった後に比較的若そうな女性が主の方に歩み寄ってきた。女性の主への呼び方から主の妻だろうか。


「いつも済まないな淋しい思いをさせて。だが今回の商談が成功すればお前や子供達との時間も取れるようになるはずだ……だからあと少しだけ待って欲しい……」


 主の言葉を受けた女性は頷いた。しかし彼女の様子がどこか不自然だった。それからしばらくするとまた場面が切り替わった。



「貴様……私の妻に何をしている?」


 次の場面は地下室らしき薄暗い部屋だった。


「へへっ悪いね。あんたはそこで見てるんだな。お前らこいつを抑えていろ」


 館の主の他にはさっきの場面では見た覚えのない下衆みたいに笑っている男とその部下と思われる男たちと主の妻であろう女性が立っていた。


「貴様、離せ!!」


 主が必死で高速を外そうとすると男が主を見下すような目で見つつ口を開いた。


「ウゼェなあんた。そんなんだから自分の女房をほかの男に取られるんだろう?つかお前邪魔だから死ねよ」


 男がそう言うと腕に持っていたレイピアらしき剣を抜き取り茫然自失としている主の喉に目掛けて突き立てた。レイピアを突き立てられた主はその場に倒れた。主が倒れた場所には大量の血が広がった。


「イヤァ……あなた……」


「っへ。これでこいつの資産も何もかも俺様のモノ……」


 男がそう言って地下室から出ようとすると、レイピアを喉に突き立てられて死んだはずの主が突然立ち上がった。


「何で……確かに喉を指して死んだはずじゃ……」


 男が困惑してその場から逃げようとすると主が男の手を掴んだ。すると掴んだ所から赤黒い闇が男の体を侵食していった。それだけではなく主の体もまた闇に侵食されていった。


「ヒッ!何だよこれ!!体が……!俺の体が!!」


 男が叫びながら主の手を振り払おうとしたけれども、男の体は確実に闇によって蝕まれていき、そして体の全てが真っ黒に染まった時、男の体はまるでガラスのように砕け散った。



主が気がつくと屋敷の一室に立っていた


「何故私はこんなところにいるんだ……?そうだ妻は?子供は?」


 主が部屋の端を見ると、そこには真っ黒に染まった愛する妻と子供の変わり果てた姿があった。

「そんな……ウソダ……ウソダソンナコトーーーー!!」


 主がしばらく歩き続けると回りには似たような真っ黒に染まった死体が複数倒れていた。


「みんな私が……?セバスチャンも……他の使用人も……みんな……」


 主が本館のエントランスに到着するとそこにはさっきの男の部下らしき男たちが玄関のドアを開けようとしていた。


「クソ!急げ!早く開けねえとあの【バケモノ】がこっちに来るぞ!!」


 主は部下が言った【バケモノ】という言葉によって何かが壊れた。


(そうか……私はあの瞬間からもうすでに人間ではなかったのか……ならば別に……)



(人間のたかが十億人や百億人程度を殺しても問題ないな)



「ハハッ、フハハハ……」



「フッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 主は狂ったように高笑いを始めた。高笑いに気付いた部下たちは青ざめた様子で主の方に振り向いた。


「ヒッ!来るな……来るな!!」


 部下たちが叫びながら扉を開けようとするけれども扉が開く気配が全くなかった。


「喧シイ俗物ドモガ。安心シロ……痛ミハ一瞬ダケダ……」



 気がつくと俺はさっきまでいた書斎に戻っていた。


「健二大丈夫か?お前しばらく意識がなかったぞ」


 朝斗に声をかけられた俺は改めて周りを見渡して重大なことに気がついた。


(ここってさっきまで俺が見ていた場面に出てこなかったか?確かあの主の奥さんと子供が死んでいた場所じゃなかったか……?)


 俺が慌ててさっきの映像で奥さんと子供の死体が倒れていた場所を見るとそこには小さな熊のぬいぐるみが落ちていた。


「こいつは一応持って行っておくか……」


 俺がぬいぐるみを手にとっているのに気がついた周りは少し驚いた様子で俺に声を掛けてきた。俺は少し落ち着いてさっき見たことも含めて説明した。



「嘘……じゃあこの屋敷の主って元々はむしろただの善良な人間だってことでしょう。それがそんな強力な怨霊になるってことは……」


 朝倉さんは顔を青くしつつ震えていた。そんな朝倉さんに桐生さんは声をかけた。


「朝倉。怖いのは分かるよ。高本くんの言う通りならこの屋敷の主はこの世の人間全てを呪っているってことになる。」


 桐生さんの言葉の後に片山がさらに付け加えた。


「確かにすごく危険な怨霊なんだってことは分かります。でも今このまま何もしないでいるよりは少しでも前に進むべきだと思うんです。だからもっと色々な所を探索するべきだと思うんです。」


 片山の言葉を受けた朝倉さんは頷いた。


「そうね……今ここで何もしないでいるよりも少しでも何かをした方が絶対にいいわよね……」


 朝倉さんの言葉を受けた小鳥遊さんが口を開いた。


「じゃあまずこの部屋をもっと探索しようぜ」


 俺を含めた全員がその場で頷き再度この部屋を探索しなおすことになった。

                           続く


お久しぶりですドルジです。

 今回は以前の更新から一ヶ月近く時間が空いてしまいました。今後はある程度は更新のペースを可能な限り戻していきたいと思います。

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