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第十三話 別館 Annex

健二視点。


 俺たちが別行動をしていた朝斗たちと合流してしばらく休んだ後に、これからの方針について決定するための話し合いを始めた。


「これからはどういう風に行動するかは考えている人はいるかな?僕はこの調子なら別館に行ってみるのもとも少し考えているんだけれども……」


 桐生さんは言葉を詰まらせていた。何故言葉を詰まらせているのか疑問に思った俺は桐生さんに声をかけた。


「どうしたんですか?何か別館に問題があるんですか?」


 俺の言葉を受けた桐生さんは複雑そうな顔をしつつ答えた。


「いや……さっきあの兄妹に別館行こうと考えている事を伝えると二人共に危険だからやめろって止められてね。だから行くにしても十分な用意をした後じゃないとダメだって思ったんだ……今の僕たちはとてもじゃないけどその準備に関しては不十分だ。仮に全員で別館に行ったとしても赤井さん一人で僕たち全員を守るなんて不可能だからね……」


 桐生さんの言葉を聞いた俺は納得しつつも何かを忘れているような気がした。


(そういえば別館への扉は鍵がかかっていてどこかの館に鍵があるって聞いたぞ……)

 俺が何かを思い出そうとしているとき、片山が俺に声を掛けてきた。


「高本くん。さっき思い出したんだけど、確か別館って鍵がかかっていて、鍵は東館にあるってあの執事さんが言っていた……」


 片山の言葉を聞いた俺は完全に思い出した。


(そうだ……あのセバスチャンって執事が言ってたじゃないか。東館の何処かに別館への鍵があるって)


 俺は慌てて別館の鍵についてのことを全員に説明した。俺が思い出すことが遅れたことを謝罪すると周りは許してくれた。


「なら……誰かが東館に行かないって事だよな……どうするんだ?」


 誰が東館に行くかとう話になった時に赤井さんが発言した。


「だったらすみませんけれども、別館には私一人で行きます。

そろそろ決着を付けないといけませんしね……」


 赤井さんはそう呟いた後に柔和な笑みを浮かべて確認してきた。


「それでよろしいですね?皆さん出来るだけ此処にそのまま居てくださいね」


 赤井さんはいつも柔らかい様子でそれだけ言うと桐生さんたちにも釘を刺すようにここに居るように言った。


「わかった。俺たちもここに居るようにする」


 小鳥遊さんがそれだけ言うと、桐生さんも朝倉さんも同意し始めた。


「わかってくださったなら幸いです。それからこれからの方針ですが、私が別館に居る危険な怨霊を始末した後に皆さんが別館を探索するということでよろしいですね?」


 赤井さんの提案に俺たちは特に反対することも無く頷いた。俺たちの様子を見た赤井さんはどこか今までに見せたことのない嬉しそうな、しかしどこか真剣な様子で再度口を開いた。


「では私は先に失礼しますね?少々野暮用も残していますからね……別館は本館の奥の食堂のさらに奥にある扉から行けますけれども、私が戻ってくるまでは入ろうと考えたり鍵を探しに東館に行ったりしないでくださいね?」


 それだけ言うと赤井さんは本館の奥の方に進んでいった。赤井さんがいなくなったあとの俺たちは赤井さんが来るまでエントランスで待つことになった。



「そういえば此処だけ何で安全なんだろうか?」


 朝斗は考え込むような様子でそう呟いた。俺は特に気にするほどの事じゃないだろうと返すと朝斗はなおさら拒否した。


「いや。それこそありえないことだ。こんな危険な空間にさっきお前たちが行ってきた礼拝堂ですあることが珍しいのに、ここまで安全な空間があるなんておかしい」


 確かに言われてみればそうだった。確かにここはこの血のように真っ赤なこの世界と館の中ではまだ赤みが弱い場所ではあるが完全に真っ赤ではないというわけではない。流石に俺も少し疑問に思って考え込んでいると篠原が慌てた様子で俺に声を掛けてきた。


「高本くん。春子がこんな書置きをしていて……」


 俺は震えている篠原の手から書置きをもらった。


「真紀ちゃんへ。私は赤井さんが会おうとしている女の子の幽霊に会いに行ってきます。でも心配はしないでください。赤井さんの方が先についていると思うし、私が一人で幽霊と話をするわけではないので、心配しないでください」


 俺は顔が青くなった自分でも分かった。


(あの馬鹿。仮にも自分を一度殺そうとした幽霊に会いにいくなんて何を考えてやがるんだ!)


 俺が本館のドアを開けようとしたら桐生さんに止められた。


「待つんだ高本くん。一人で飛び出すのは危険だ。行くなら僕も一緒に行こう」


 桐生さんがそう言うと、今度は朝倉さんも前に出てきてついてきてくれると言った。


「あなたと片山さんには恩があるから……だってあのままだったら私はあのままあの部屋から出ようともしないで桐生くんとも小鳥遊くんとも再会できなかったわ。」


 それだけ言うと、朝倉さんは篠原さんに「必ず片山さんを連れて帰ってきますから」と言った。そして俺と桐生さんと朝倉さんの三人は片山を連れ戻すために本館の奥に向かった。



赤井視点


 本館を奥に進むとそれなりに強力な気配がした。私が食堂の方に進むと、彼女は立っていた。


「赤マント……?」


 見るからに怨念に近い彼女の禍々しい気が、驚愕からであろうが、私の姿を見ると僅かながら収まるのを感じることが出来た。


「何で今更此処に……?」


 一度は衰えた禍々しい気を再度放出しつつ彼女は私に問いかけてきた。私は静かに答えた。


「沙織。あなたがこの世界に監禁され、そして殺されたことは私も以前から知っていました。私はあなたの死体をこの目で見ましたからね……」


 私の言葉を受けた彼女は少し気を収めつつ話し始めた。


「今更都合が良すぎる……っ!!私……学校から帰っている途中に気がついたらこの屋敷にいて……それであの黒い騎士に見つかって……赤マントが助けに来てくれると思ってたけれど、来なくて……死んだ後もそのことを考えると他の生きている人まで妬ましくなったの……それなのに……分かっていてくれたならどうしてすぐに会いに来てくれなかったの!?」


私は黙って所々めちゃくちゃになっている彼女の言葉を聴き続けました。


(片山さん……あなたが言っていた向き合うべきだというのも間違ってはいなかったのですね……今までのやり方では彼女の気持ちを無視し続けていただけだったのですね……)


 彼女は私を嗚咽混じりに罵倒し続けた。私は全ての罵声を受け止めた。数時間ほどすると彼女がまとっていた禍々しい気は目に見えて弱まっていった。


「私……ずっと寂しかった……あなたに会いたかった……」


「ええ。今まで一人ぼっちにしてしまってすみません……これからは私も側に居ますから……」


そんな会話をしている時に別館に通じる廊下の奥から声がした。


    

       「どうして……私を撮り殺しておいてまさか今更良い者にでもなる気なの?」



 声の方向を向くと、彼女以上の怨念をまとった若い女性の怨霊が立っていた。


(どういうことだ!?普通の人間霊のはずだろうに怨念によって生み出される妖力ならあの黒騎士にも迫るほどだぞ!?)


 私が驚愕しているとその怨霊は彼女に声をかけた


「ひどいですよ……私には諦めさせておいて自分だけ手に入れるつもりなんですか?精神が半壊して体も餓死した私を仲間にしてくれたのはあなただったのに……」


 私が臨戦態勢に入ろうとした時に思いもよらない乱入者が現れた。


「赤井さん大丈夫ですか!?あの女の子は救うことができましたか!?それに急にすごい禍々しい気配がし始めましたし……」


 私がエントランスで待っているように言ってあった片山さんが目の前に現れたのだ……


「何故あなたがここに居るのですか!?エントランスで待っておくように言ったはずですよ!?さては隠れて見ていましたね!?」


 私の言葉を受けた片山さんは申し訳そうな顔をしつつ言った。


「いいえ……ただあの娘を説得するのに赤井さんだけだと心配になって……」


 私は彼女の言葉に呆れつつも相手に注意をそらすことなく片山さんに返した。


「随分信用がないんですね……まあ仕方ありませんね。私は人間の感情はあまり理解できていませんからね……」


 私は沙織と話をするようになってからは少し気にするようになっていた部分を少し自虐的に返した。片山さんは慌てて「信用していないわけではない」と言っていた。


「いつまで私を無視しているの?大体私が一人だと本気で思っていたの?」


 すると別館の方から複数の怨霊がぞろぞろと流れ込んできた。


「決まった場所以外を移動している……またイレギュラーな行動をする怨霊か……」


 私は心の中で舌打ちしつつ片山さんに返した。


「片山さん一刻も早く逃げてください。流石にあなたを守りながらこの数を倒すのは難しいです」


 片山さんは怨霊の気に当てられたのか顔を青くして座り込んでいたけれども、私の言葉を受けるとハッとしたように立ち上がりそのままエントランスの方に走っていった。


「沙織……彼女のサポートをお願いできますか?」


「うん……私の罪がそれだけで消えるとは思っていないけれど、出来るだけのことはするね」


 それだけ言うと彼女はそのまま片山さんの方を追いかけていった。


「では始めようか数十程度の数で……俺を止められると思うなよ?」


 迷いがなくなっていた自分は今までにないぐらい体が軽くなっているのを感じた。

                        

続く



 どうもドルジです。

 ごめんなさい今回はあまり突飛つして書く事がありません。

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