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第十二話Aパート 貴志

貴志視点。


 妖刀の力を開放した僕は改めて天邪鬼たちの姿を見た。全員が僕のしたことが分からない様子でこちらを見ていた。


「こいつ妖気で出来た鎧を纏ったぞ」


 天邪鬼の一体がそう言うと他の天邪鬼もざわめき始めたけれども、すぐに臨戦態勢に戻った。


「怯むな!所詮は人間霊にすぎない!このようなマヤカシごときで我らを倒せると思って……」


 僕は前で喋っていた天邪鬼の首をすかさず刎ねた。


(今までよりも体が軽いな……)


 天邪鬼たちは突然の不意打ちにとても驚いていた。僕はその驚いている隙を見逃すことなく近くにいる天邪鬼に斬りかかった。


「っち。たかが人間風情が!!」


 天邪鬼は手に持っていた刀で僕の攻撃を回避した後に、後ろに飛んで距離を取った。その瞬間一方後ろにいた槍を持った天邪鬼たちが一斉にこちらに槍を構え突っ込んできた。


「貴志!今のお前なら避けるまでもねえ!俺の妖力の鎧の力を見せてやれ!」


 僕は妖刀に言われるままに敵の攻撃を受けた。驚くべきことに僕自身の体には敵の槍は届くことがなく、鎧によってむしろ破壊されていた。


「なっ……馬鹿な」


 僕はすかさず周りを囲むようにしていた天邪鬼たちを回転するように切り裂いた。


「おのれ。貴様……!!」


 天邪鬼のリーダーらしき男が今度は前に飛び出てきた。手にはふた振りの刀を持っていることがわかった。


「来るぞ貴志。油断するんじゃねえぞ」


 僕は妖刀の言葉にうなづいた後に僕は改めて妖刀を握り直し迎え撃った。


 敵はまず右手の刀で斬りかかって来た。僕は妖刀で受け流しつつ再度斬りかかった。しかし僕の攻撃を敵は左手の刀で受け止めた。僕の攻撃を受け止めた敵はニヤリと笑った次の瞬間敵は飛び上がった上でかかと落としを僕の頭部に目掛けて放った。不意打ちを交わすことのできなかった僕の頭部に強烈な衝撃が走った。


「おい貴志、無事か?」

 

妖刀が珍しく心配するように声を掛けてきた。僕は内心驚きつつも冷静に返事をした。


「ああ問題ないよ。まだやれるさ」


 それだけ答えると僕は再度妖刀を握り直した。敵は再度こちらに切りかかってきた。今度は両手にそれぞれ握ってある刀で不規則に切りかかってきた。僕は二刀から放たれる太刀筋を冷静に対処しつつ捌き続けた。敵もだんだんイライラしてきたのか太刀筋が大雑把になってきた。


(勝負をかけるなら今だな)


 敵が今までどちらかの刀のみで斬りつけていたこととは対照的に両手の刀で挟み込むように切りつけてきた。僕は上空に飛び上がるように避けると今度は敵も飛び上がってきた。しかしこちらの方が先に飛び上がっていることを考え、こちらに有利だと判断した。


「これなら行ける!!」


 僕は重力による自由落下を利用し、上空からこちらに飛び上がってくる敵を切り裂いた。こちらの攻撃を察知できなかった敵は肩口から一気に切り裂かれ、断末魔を上げつつ地に落ちた。


「兄貴!」


 敵の、天邪鬼の仲間であろう一体が肩から斬り裂かれ死んだリーダーの姿を見て悲痛な叫び声を上げた。


「相手にもそれ相応の仲間意識はあるらしい」


 僕がそういうと妖刀が「油断するな」と声を掛けてきた。敵も自分たちの親分がやられたことを考えればこれから先の攻撃は何ふりか待ってこないはずだ。いくら妖刀の力をまとっていても限界はある。


「この姿もあまり持たないはずだ。貴志。このまま一気に決めるぞ」

 

僕は妖刀の言葉にうなずくとそのまま妖刀を構え、怒りに震えている天邪鬼どもの残党に斬りかかった。



「まさかちょうど妖力の鎧が切れるってタイミングで敵をすべて殺し尽くすとはな。俺も流石に驚いたぜ」

 

妖刀はいつもの人を小馬鹿にした様子に戻っていた。僕はそれに内心安心しつつも表面的には呆れたように振舞った。

 

 妖力の鎧が切れたのは最後の一体と切り結ぼうとしたまさにその瞬間だった。僕自身の一撃も奴の命を奪ったけれども、奴の刀が僕の左手を切り裂いた。左手はしばらく回復に専念させれば回復するだろう。


「これからどうするんだ。やっぱりあの坊主どものところに戻るのか?」


 僕自身も本当は今すぐ戻りたいと思っているけれども……


「いや……今すぐは戻らない。思ったよりも肉体的にも霊力的にも消耗が激しいし、まず回復に専念したい。それに……」


「あの坊主どもに心配掛けたくないってか?まあお前らしいとは俺もおもうけどよ。ケケケ」


 妖刀はヘラヘラ笑いつつそう言った。僕自身も正直そう思っていた。左手がない状態で行けば誰でも心配するだろうし、今の霊力を消耗した状態がわかるであろう片山さんにはひょっとすると妖刀を多用したことを怒られるかもしれない。


「そういえばお前どうしてあいつらに力を貸したんだ?今まではほとんど外にでてこの世界からの脱出方法を探していたはずだろう?」


 僕は妖刀に聞かれたことを僕自身も不思議に思っていた。死んで幽霊になったあとの僕はあまり他の生存者とは関わろうとしていなかった。それがなぜ急に今になって彼らの力になろうとしているのかはさっきまで僕自身でもわからなかった。


「多分だけど……もうこれ以上自分みたいな人間を増やしたくなかったんだと思う。それに僕はある程度抑えられているとは言え徐々に怨霊に近づいている。もうあまり時間もないならせめて誰かのためにこの時間を使いたかたんだ」


 僕は妖刀と本当の意味で初めて話した時のことを思い出した。飢餓による死を迎える直前に偶然手に入れた刀……アイツから声を掛けてきたことを。



「お前は何がしたい?」

僕はアイツからの問いに「こんなふざけた世界から脱出したい」と答えた。アイツは「いいぜ」と答えた。


「俺もここから出たくて堪らなかったからな。ただはっきりと言っておくがてめえはもう助からねえ。死ぬぞ。死んだあとにはこの世界だとほっておけば怨霊になるぞ。それでもこの世界派から脱出したいか?」


 僕はその問に頷いた。妖刀は意外そうに「ほぉ」とだけ言った。


「僕はこんな世界なんて嫌だし、人を呪うようになるのもいやだ。そうなる前にどんな姿になってでもここから絶対に出てやる。」


 僕の言葉を受けた妖刀は突然笑い始めた。薄れゆく意識の中僕がなぜ笑っているのか疑問に思っていると妖刀が喋り始めた。


「いいぜ。お前のことが気に入った。確か貴志って名前だったか。今は一旦寝てな。次に目が覚めた時から俺が力を貸してやるよ」



「おい貴志どうした。ボーっとしてんのか?」

 

 どうやら昔の事をかんなが得ている間に妖刀からかなり声を掛けられていたらしい。


「大丈夫だよ。昔の事を少し思い出していただけさ。今はそれよりも少しゆっくり休む事にするよ……」

                                            続く


 どうもドルジです。

 あと少しで次の章に入りたいと思います。後、全ての話の行間を調整しました。


キャラ紹介

妖刀

種別 妖魔【付喪神】

思考 中立

霊力 強力

危険度 中立(敵に回した場合は非常に危険)

獲物 日本刀である自分自身

特殊能力 妖気出来た自分自身(妖気で出来た甲冑)をまとわせること

原点 日本(室町時代)

イメージCV 寺島拓篤


岡山が生前偶然入手して依頼手に持っている自称妖刀。

本来は甲冑とセットの付喪神であり、現在は本来の力を発揮できない。

性格は普段は他人を小馬鹿にするような言動が目立つけれども、自分自身の

目的をキチンと持っている相手の事を冗談以外で馬鹿にすることはない。



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