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第十一話Aパート 殺意 Murderous intent

慎二視点。


 岡山さんが階段を下りてきたのを見た僕たちは岡山さんに話しかけた。


「岡山さん。天邪鬼は?」


 岡山さんは柔和な笑みを保ったまま答えた。


「大丈夫だよ。天邪鬼は僕が倒しておいたから」


 よく見るとさっきまでは鞘に収まっていたはずの妖刀は鞘から抜かれていた。


「その刀を使ったのですか?」


 片山さんは岡山さんに聞くと、岡山さんは複雑そうな顔をして頷いた。


「その刀。多様は危険ですから気をつけてください。妖刀は使い手を取殺すと言われていますから」


 片山の言葉を聞いた岡山さんは苦笑いしつつ、「覚えておくよ」と答えた。そんなやり取りの途中で、妖刀が岡山さんに話しかけた。


「おい貴志。さっきから言おうと思っていたんだが……囲まれているぞ。相手は多分さっきの天邪鬼の仲間だろうな。あいつらは仲間意識だけは意外に強いからな」


「何!?」


 妖刀の発言を聞いた岡山さんは慌てて周りを見回した。僕も驚いて周りを見回している時に、片山さんが顔を青くして周りを見渡していた。


「周りに怨霊がいる……かなりの数の……」


 岡山さんは真剣な顔をして僕の方を見ると「桐生くん。君は他のみんなを連れてここから逃げてくれ」と言った。それを聞いた高本くんは岡山さんに言った。


「そんなことは出来るかよ!全員で逃げ……」


「ダメだ!こんな状況なら誰かが足止めをする必要があるし、僕は元々死んでいるし、ある程度は抑えることができる。だから僕が抑えているうちに本館に逃げるんだ。十字架は回収したんだろう!?」


 岡山さんの言葉を聞いた高本くんは一瞬躊躇したけれども、頷いた。


「いいかい。今から走って本館まで逃げるんだ。僕がここを囲んでいる連中を押さえておくから」


 岡山さんに促された僕たちはここから一旦本館に戻ることにした。


「岡山さん大丈夫かしら?」


 本館の扉を開けようとすると朝倉は心配そうに言った。僕は答えるのに少し困ったけれども、すぐに僕は答えた。


「大丈夫だよ朝倉。岡山さんも何かしらの勝機がないのに足止めをするなんて言う筈が無いさ」


 僕の言葉を聞いた朝倉は少し心配そうな様子で岡山さんを見た後に僕たちについてきた。



貴志視点


「おいおい。かなりの数だぞ。お前一人で全部相手できるのか?」


 妖刀がどこかおもしろがるかのように僕に声を掛けてきた。僕は不快に思いながらも答えた。


「出来るかどうかじゃない。やるか、やらないかだ」


 僕の答えを聞いた妖刀は笑い始めた。


「ヒャッハハハハハハハハハハハハハハハ!!お前のそういう所は俺も結構好きだぜ。どうしても必要なら俺の力も貸してやるぜ」


「ああ。分かっている……」


 僕と妖刀がそう話していると周りから小柄な何かが複数飛び出てきた。


「おいおいこいつらは」


 妖刀が驚いたような様子であった。僕たちの周りに居たのは天邪鬼だった。さっき僕が倒した個体とは明らかに異なっていることが肌の色や角の数から見て取れた。そのうち二本角の赤い肌をした個体が前に出てきた。おそらくこいつがリーダー各だろう。


「お前が俺たちの仲間を殺したのか?」


 僕はその問いかけに特に答えることなく妖刀をより強く握った。


「答えないということは認めるのだな。ならば今逃げていったお前の仲間にも死んでもらう必要があるな」


 僕はその言葉を聞いて一瞬驚いたけれども、すぐに驚きは全く違う感情に変わっていた。


「そうか。ならお前たちをここから先に行かせるわけにはいかないな。それでも通るっていうなら……お前たちを僕は殺す」


 僕の中にあった感情は明確な殺意だった。肉体が死に絶え、妖刀を手にして以来希に心に巣食うようになった感情だ。天邪鬼たちも僕の殺気に気づいたのか改めて身構え始めた。


「貴様。俺たちを殺すつもりか?たかが下級の妖刀もどきを手にしているだけの人間霊風情が」

 

リーダー格の天邪鬼が前に出てきて小馬鹿にしてきた。僕は奴の言った妖刀もどきという発言の意味を気にしていると妖刀が言い返し始めた。


「ケッ。てめえの言うことも確かに間違っちゃいねえが。てめえらは今からその妖刀もどきと人間霊に負けるってことをよく理解しておくんだな」


 天邪鬼達は今の妖刀の挑発に遂に我慢できなくなったのかこちらに一斉に飛びかかって来た。


「おい貴志。一度に全部を相手にするな。一旦包囲から抜けた後に各個撃破しろ」


 僕は言われるまでもなく天邪鬼をすれ違いざまに二、三体首を刎ねつつ包囲から本館のドア側に抜け出した。


「何!?貴様……っ!!」


 天邪鬼のリーダーは驚きと苛立ちが混じった様子でこちらを再度見てきた。僕はその視線を無視しつつ近くにいる天邪鬼に切りかかり、再度首を刎ねた。


「っち。コイツ!!」


 別の天邪鬼が爪で引っ掻こうとしたのを側転で回避した後、そいつの腹のあたりを肩から妖刀で切り裂いた。


「この野郎!!」

 

後ろから飛びかかって来た数体の天邪鬼を今度は振り向くのと同時に横に一閃することで首を刎ねた


「たかが人間風情が!!」


 次に飛びかかってきたのは手に刀を持った比較的上位らしい個体だった。そいつは僕に飛びかかりざまに斬りかかってきた。そいつは僕が攻撃を回避したことを確認すると、斬りかかった時の勢いを殺すことなくこちらに前転しつつ近づき、そのまま今度は下から斬りかかってきた。


「っく!」


 僕は思わぬ反撃に一瞬驚いたが、すかさず妖刀で防いだ後に相手を蹴り飛ばし距離を取った。


「こいつは出来るな……」


 僕は内心焦っていた。最初に勢いに任せて複数の天邪鬼を斬り殺すことは出来たけれども、まだ半分近く残っている天邪鬼を僕一人で殺しきれるかはかなり怪しかった。


「妖刀。力を貸してくれ。」


 僕は何としてでもみんなを守らないといけない。そのためにならどうなっても構わなかった。


「俺はいいぜ。でもいいのか?こいつを使うとお前はお前じゃなくなるかもいれないんだぞ。本来俺の妖力で魔性化を抑えているんだ。言ったらその妖力ごと戦闘に費やすってことなんだぜ」


 妖刀に問いかけられた僕はすぐに答えることが出来た。


「ああ構わない。僕一人じゃこの数は殺しきれない。でもお前なら出来るだろう?」


 僕の言葉を聞いた妖刀はケケッと笑った後に答えた。


「いいぜそういうのは結構俺も好きだぜ。せいぜい俺の力や魔性化に飲まれるなよ」


 次の瞬間妖刀から強烈な赤い妖力が流れ込んできた。


「俺はさっきの天邪鬼が行っていたように正式には妖刀じゃない。正確に言えば俺は付喪神なんだよ……まあ今はそんなこと関係ないか」


 どこか自虐的にそう言ったのを聞いた瞬間僕の体に変化が起きた。体に流れ込んできた赤い妖力が日本古来の甲冑思わせるような姿へと変化していった。


「本来の俺は甲冑の【付喪神】でな……今は俺本来の力は使えないがその状態ならそいつらぐらいなら倒せるはずだ。上手くやれよな」


 僕がその言葉を聞いた時には全身を妖力で出来た赤い甲冑が覆っていた


                           続く


 お久しぶりです。ドルジです。

 今回は予定していたよりも一週間以上更新が遅くなってしまいました。おそらくこれからは以前の更新ペースに戻せると思うので、また続きを読んでみてください。


用語説明

付喪神

 付喪神とは、日本の民間信仰における観念で、長い年月を経て古くなったり、長く生きた依り代(道具や生き物や自然の物)に、神や霊魂などが宿ったものの総称で、荒ぶれば(荒ぶる神・九尾の狐など)禍をもたらし、和ぎれば(和ぎる神・お狐様など)幸をもたらすとされる。

 「付喪」自体は当て字で、正しくは「九十九」と書き、この九十九は「長い時間(九十九年)や経験」「多種多様な万物(九十九種類)」などを象徴し、また九十九髪と表記される場合もあるが、「髪」は「白髪」に通じ、同様に長い時間経過や経験を意味し、「多種多様な万物が長い時間や経験を経て神に至る物(者)」のような意味を表すとされる。

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