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第十話Aパート 天邪鬼 Perverse person

慎二視点。


 僕たちは岡山さんに案内されるまま二階に向かうと、片山さんが奥に気配を感じると言った。それを聞いた岡山さんは頷いて、


「分かるんだね。それが天邪鬼の気配だよ。多分近くにいるはずだから気を付け……」


「よく周りを見ておかねえと天邪鬼に食い殺されるぜ。ヒヒヒヒヒヒ」


 岡山さんの言葉を遮って妖刀が話しかけてきた。片山さんは食い殺されるというフレーズに少し恐怖したらしく顔が引きつっていた。


「おいてめえ!片山が怖がってるだろうが!!」


 高本君が片山さんの前に出て庇うようにすると妖刀はケラケラ笑いながらなお話し続けた。


「おうおう。今度は血の気の多い方の小僧か。俺はお前みたいな血の気の多い奴は好きだぜ。ただ相手だけは選んだ方がいいな。大体人間のお前が俺に勝てるわけねえだろう」


 妖刀はどこか挑発するような様子で高本君に言った。高本君は明らかに怒りを抑えている様子だった。


「お前いい加減にしろ。さっきから煽って怒らせてばかりでなにがそんなに楽しいんだ!!」

 

岡山さんが遂に怒って怒鳴ると、妖刀は面倒くさそうに答えた。


「おいおいそんなに怒るなよ貴志。俺はただ自分に降りかかりそうな火の粉を払ってるだけだぜ。」


 妖刀は今までの神経を逆なでするような態度を崩すことなく岡山さんに言い返した。その様子を見た岡山さんは僕たちに一言謝った。それを見た僕は岡山さんが謝るほどのことでは無いと返したけれども、岡山さんは謝るのを止めなかった。僕は妖刀への嫌悪感を増しつつも先に進むことにした。


(妖魔っていうのはみんなこんな連中ばかりなのか……正直この先上手くやっていけるのだろうか……)



 僕が妖魔その物への不信感を募らせつつ礼拝堂を探しつつ奥に進んでいった。もう四か所以上は部屋を調べたけれども、どれも礼拝堂ではない普通の部屋であった。廊下の真ん中あたりまで進むと、奥から明らかに何者かの気配がした。


「この先に天邪鬼が居る……僕があいつを引き付けておくから、しばらく待った後にこの辺りにあるはずの礼拝堂への扉を探すんだ。」


 岡山さんはそれだけ言うと、奥の方に走って行った。それから岡山さんに言われたとおりにしばらく待った後に


「今のうちに礼拝堂を探しましょう。この辺りの部屋のどれかが礼拝堂に続いているはずだから。着いて来て」

 朝倉がそう言うと、奥に進んで行った。僕は高本君と片山さんといっしょに朝倉について行った。


「岡山さん大丈夫かな……」


 片山さんは心配そうな様子で朝倉に話しかけていた。朝倉は真剣な表情で答えた。


「大丈夫よ。岡山さんだって何かしら自信がないと自分を囮に何てしないわ」


 そう答えた朝倉は近くにあった扉を閉めて部屋の中を確認した後にすぐに扉を閉めた。


「ここじゃないわ。次を探しましょう。ただ奥に行き過ぎると天邪鬼に出くわすから気を付けて」


 そういうと、朝倉は次の扉を探し始めた。それから僕はすぐ奥にある扉を開けた。


「これは……」


 そこには今までの真っ赤な世界とはまるで違う純白の空間が広がっていた。今までの真っ赤な空間とはまるで違う純白の世界に僕は一瞬目がくらんでしまった。


(ここが礼拝堂か……)


「どうしたんですか桐生さん」


 高本君が僕の方に駆け寄って来た。僕は他の二人も呼んで礼拝堂を見つけたことを伝えた。


「このまま入ろうと思うんだがみんなは問題無い?」


 僕が確認すると三人とも頷いた。それを確認した僕は三人を連れて中に入ることにした。



 中は外から見た通りの純白の礼拝堂だった。ところどころに金色の装飾が施され、奥の方には巨大な十字架のようなものがあった。


「とりあえず十字架を探そう」


 僕がそういうと三人は頷いて周りにある椅子や奥の机を探し始めた。僕が机を探していると高本君がさっき入ってきた扉とは違う扉があるのを見つけていた。


「この中に入ってみたらあるかもしれない……先に俺が入って様子を見てきます。」


 高本君が先に入ろうとしているのを一旦止めた後に、声を掛けた。


「待った。僕も一緒に入ろう」


 僕の声を聴いた高本君は一瞬悩んだ後に頷いて返事をした。それを確認した僕はもう一つの扉の前に向かった。ドアについた僕は高本君と同時に扉を開けた後に、部屋の中に飛び込んだ。


「なんだこりゃ」


 高本君のどこか驚いたような声に気付いて改めて部屋の中を見回すと、中は礼拝堂以上に透き通るような気配がする場所であった。ふと部屋の机を調べてみると都合よく一個だけ十字架が置かれていた。


「高本君。桐生さん。大丈夫ですか?」


 外から片山さんの声がしたのに気付いた僕らはそのまま机に置いてあった十字架を手に取って部屋の外に出た。


「高本君大丈夫だった」


 片山さんは高本君に駆け寄ると心配そうな顔をしていた。


「何で心配してんだ?ここは安全なんだろ」


 高本君がそう返すと片山さんは心配そうな様子のままで答えた。


「だってここ。気配がさっきまでと真逆で綺麗すぎるから……」


 僕は彼女の言っていることがよく分からなかったけれども、ここに長居することはあまり良くないことだけは分かった。


「桐生君。出来る限り早くここから離れましょう。岡山さんも今頃天邪鬼を何とかしている頃だと思うし……」

 

僕は朝倉に提案されたことも相まって、この場から一度出ることを決めた。


「そうだね……一旦ここから出よう」


 僕の言葉を聞いた他の三人は頷き、そのまま僕たちは礼拝堂を後にした。



 礼拝堂を出た僕たちは階段の方に急いだ。


「片山!こっちで合ってるのか!?」


 高本君に声を掛けられた片山さんは走りながら答えた。


「うん。廊下の奥の方からさっきまでしていた気配がするから、こっちに行けば天邪鬼は居ないはず」


 それからはしばらく走り続け、東館二階のエントランスまで到着した。


「なんとかついた……」


 僕たちはエントランスの手近な床に座りこんだ。


「桐生君これからどうするの?」


これからのことを聞かれた僕は今は岡山さんを待つことしか出来ないと答えた。


「それもそうね……今は待つしかないわね」


 会話していると、階段から気配がした。


「ごめんね。待たせたかな?」


 手にあの妖刀を持った岡山さんが階段から降りてきていた

          

                                                          続く


 こんばんわドルジです

 今回は更新がかなり遅れてしまいました。二週間ぐらいはあまり更新ができそうにないので、おそらくしばらくの間は今回以上に更新が遅くなりそうです。


用語解説

天邪鬼

 天邪鬼(あまのじゃく、あまんじゃく)は、悪鬼神もしくは小鬼、また日本の妖怪の一種とされる。「河伯」、「海若」とも書く。

 仏教では人間の煩悩を表す象徴として、四天王や執金剛神に踏みつけられている悪鬼、また四天王の一である毘沙門天像の鎧の腹部にある鬼面とも称されるが、これは鬼面の鬼が中国の河伯かはくという水鬼に由来するものであり、同じく中国の水鬼である海若かいじゃくが「あまのじゃく」と訓読されるので、日本古来の天邪鬼と習合され、足下の鬼類をも指して言うようになった

 「人の心を見計らって悪戯をしかける子鬼」とされることから転じて、現代では「他者(多数派)の思想・言動を確認したうえで、あえてこれに逆らうような言動をする"ひねくれ者"、"つむじ曲がり"」「本心に素直になれず、周囲と反発する人」またはそのような言動を指して、「あまのじゃく(な人)」と称されるようになった鬼類をも指して言うようになった。

 

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