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第八話Aパート 動く礼拝堂 A Moving Chapel

慎二視点。


 ある程度休憩をした僕たちは、あらかじめ分けられたチームでの探索をすることになった。


「桐生君。どんな順番で東館を回る予定なのかしら?」


 僕はいきなりの発言に驚いてすぐに返事をすることが出来なかった。そんな僕の様子を見て朝倉はため息をついた。


「まったく……桐生君は私たちの中では一番年上なんだからもっとしっかりしてくれないと……」


 僕は普段なら言い返すであろう事でも今は不思議と心地よく感じていた。半月以上朝倉と離れていたこともあったのだろうか。普段当たり前だったことをもっと大切にしたいと思えてきていた。


「どうしたの桐生君?ひょっとしてちょっと言い過ぎたかな?」


 朝倉は少し申し訳そうに僕の顔を見ている。それに気付いた僕は「大丈夫だ問題ない」とだけ返した。


「桐生さん、朝倉さん、そろそろ出発しませんか?毛利君たちはもう行ってしまいましたよ?」


 僕がそんなこんなことしている間にすでに小鳥遊たちの方は出発したらしい。


「そうだね、そろそろ行こうか。後回る順番としては地味ではあるけれど一階から片端に探していくしかないね。それで構わないか?」


 僕が確認を取ると三人は軽くうなずいた。それから僕たちは東館に続く扉を開け、東館に移動を始めた。



 東館のエントランスは全体的に置物こそ質素であるけれども、本館以上に毒々しい赤に染まっていた。僕たちは周辺を警戒しつつ、エントランスを探索した。


「これってやっぱり骨董品なのかな?高本君はどう思うかな?」


「いや……俺に言われてもな……あんまり分からないんだよな……こういうの」


 片山さんと、高本君はエントランスの真ん中の暖炉らしきものの上に置いてある古そうな置物を見ていた。僕はその近くにある本棚を確認してみることにした。


「何かめぼしい本は無いか……これは……?」



「東館に来た生存者へ……この東館には二つの特徴がある。一つとしてはこの屋敷には移動する礼拝堂が存在することである。この礼拝堂はこの異空間の中では例外的な場所であり、怨霊や妖魔は入ることが出来ない。ただ逆に神聖すぎるその場所に長居することは逆に命に関わることである。故にこの礼拝堂に引きこもるということは不可能である。もう一つは、この東館の何処かで【赤い騎士団】と黒騎士の死体のある部屋があるらしい。この部屋は今まで見つけ出されたことは無いが、見つけ出せれば何かあの怨霊騎士たちへの対処法を入手できるかもしれない。どちらを探すにしても、稀に東館を探索しに来る赤い騎士に気を付けてくれ……」



(赤い騎士……ひょっとして小鳥遊と一緒に逃げこんだ西館にいたあいつらのことか……?だとしたら気を付けた方がいいな)


 本を本棚に戻した後、僕は三人を呼んで本に書いてあったことについての情報を交換した。



「あの黒騎士……仲間がいたのかよ……」


 高本君が驚いた様子であった。片山さんも似たような様子でさらに顔を青くしていた。


「桐生君は赤い騎士を見ていて、高本君たちは黒騎士の方に遭遇しているのよね?外見や気配の特徴は何かないかしら?」


 朝倉の質問に僕は他の二人にも分かりやすいように可能な限り言葉を選んで答えた。


「僕が物陰から見た時は赤い騎士は着ている甲冑や持っている武器は普通の形をしているんだけれど、連中は赤い霧のようなものを纏っているんだ。後、確証があるわけじゃないけれど霊感がある人や十字架ならこいつらが近づいてきたら察知できると思うんだ。だからこいつらが近づいてきたときは可能な限り何処かの部屋に隠れるようにしよう」

 

僕がそういうと、三人は軽く了承してくれた。もう少し話し合いをした後に奥の部屋を探索することにした。



 廊下に出てみると、僕がさっきまでいた西館には劣るけれども、どこか禍々しい気配がした。


(ここは気を付けた方がいいな……)


 僕は高本君に最後尾を任せ、一番近くの部屋に入ることにした。中は特別な部屋でこそなかったけれども……



 奥には明らかに怨霊と分かる真っ赤なオーラを纏った子供が体育座りをしていた。



 僕は一瞬固まってしまったけれども、すぐに扉を閉めた。あまりの光景に僕が固まっていると扉の向うから声がした。


「お兄ちゃんたちは開けてくれないの?僕一人ぼっちでさびしいなぁ……お兄ちゃんたちは僕と遊んでくれないの?さびしいよ……」


 僕は恐怖から咄嗟に開けようとしてしまったけれども、その時に片山さんが僕を止めた。


「ダメ!!扉を開けたらダメ!!」

 

僕は慌ててドアノブにかけようとしていた手を引っ込めた。すると扉がすごい勢いで叩かれ始めた。



「開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ開けてよ」



 あまりの恐怖から僕たちは走ってその場から逃げるように去った。


 

走ってさっきの部屋の前から立ち去り、東館のエントランスに戻っていた。


「怖かった……」


 朝倉はその場にへたり込んで震えていた。顔を見ると今にも泣きだしそうな顔をしていた。


「なあ片山。さっきの怨霊はどれぐらい強いんだ?」


「霊力は強くないけれど、多分知能が高いんだと思う。あの手の怨霊は人間の情に訴えかけたりするから逆にたちが悪いんだよ。実際にさっき桐生さんも付け込まれかけていたんだから……」


 高本君と片山君はお互いにさっきの怨霊について話し合っていた。一度怨霊に殺されかけたらしいが、吹っ切れたのだろうか?


 それからしばらく休んだ僕たちはしばらく休んだ後に、再度一階を探索することにした。さっきの部屋を無視して一階の奥の部屋を探索したけれども、特に目ぼしいものは無かった。


「一階には無かったわね。じゃあ二階を探すしかないわ。地下室とかもなさそうだったし……」


 僕たちが二階に行こうとした時に誰かが三階に行こうとしていた。


「誰だお前!?」


 高本君は慌てて追って行こうとしたが立ち止まって僕たちに追うかどうか確認してきた。


「桐生さん!今の生存者かもしれないし、俺は追った方がいいと思うんですけどどう思いますか?」


 僕も内心追ってみるのもいいかもしれないと思っていたのもあって、全員追おうと言った。朝倉も片山さんも特に否定することもなかったのでそのまま僕たちは三階に向かった


                           続く


 どうもドルジです。

 今回はまた更新が遅くなってしまいました。自分でも恥ずかしい限りです。


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