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間章 孤独 Alone

奏多視点。

私は地元の私立大学のオカルト研究部に所属しているごくごく普通の女子大生だった。あの日、私は同じオカルト研究部に所属している桐生君と、桐生君の友人の小鳥遊君の三人で赤い洋館についての都市伝説について話していた。ごくごく普通に話していたはずなのに気が付けば周りは一面真っ赤に染まっていた。それから赤く染まった大学の敷地から出た私たちが見たものはさっきまで話をしていた赤い洋館がそびえたっていた。


 私たちは最初こそ入るかどうか悩んだけれども、入ってみることにした中に入ると少年と少女の幽霊が居た。私たちはその霊からこの世界のことについて説明を受けた後に、洋館の探索をすることにした。


 それから一週間近くした時に食料調達をするために厨房に向かった時に事件が起きた。



「お姉ちゃん達はここで何をしているの?どうせ死ぬんだから無駄なことなんてやめた方がいいよ?」


 私たちは厨房の前の廊下にいる赤い少女の怨霊から逃げた。けれども私だけが逃げている最中に桐生君たちとはぐれてしまった。


「これからどうすればいいのかしら……」


 エントランスに逃げ込もうと考え移動し始めた時に私は移動する怨霊を見てしまった。こいつらが居る限り、どこも安全ではないということが分かった私はエントランスに行くのを止め、一番近くにあった部屋に入ろうとした。鍵こそ掛っていたけれども、幸いにも鍵を持っていたこともあって、私はそのまま部屋に入ることにした。


 部屋はおそらく給仕用の仮眠室であった、幸いにもなぜか少量ではあるが食料が置いてあった。私は疑問にも思いながらもここ二、三日はここを拠点にすることにした。


「それにしても疲れたわね……少し寝よう……」


疲れがドッと出た私はそのままこの部屋のベッドを使って寝ることにした。



「……てる……?」



 何か声が聞こえる気がする。



「起きてる……?」



 私は声がするのに気が付いて目を覚ますと、目の前には私と同じぐらいの年齢の眼鏡をかけた女性が私の顔を覗き込んでいた。


「あなたは生きた人間よね?よかった。私ここに来るまで一度も生きた人間にあってなかったの……あっ、私の名前は岸部菜緒よ。あなたの名前は?」


 岸部さんという名前の女性は私の名前を聞いてきた。私は特に差支えもないこともなり、自分も名乗ることにした。


「私は朝倉奏多。大学二年生よ」


 私の名前を聞いた岸部さんは目をキラキラ輝かせながら私の顔を覗き込んでいた。


「朝倉奏多……じゃあ奏ちゃんって呼んでいいかな?」


 私は慣れないニックネームを突然つけられてしまった。しかしあまり悪い気もいないこともあったし、そのニックネームで呼んでも問題ないと返事をした。



 それから私は岸部さんと情報を交換することにした。岸部さんはだいたい私と同じ時期にこの世界に連れてこられたらしく、後、最初に食料を確保するために厨房に言った時に銀の十字架を使てしまったらそうだ。最初に会った霊に十字架の再入手の方法を聞こうと思ったらしいのだが、私も遭遇した移動する怨霊のせいで移動できないらしい。ただ移動する怨霊の行動パターンとして本館に限って言えば一つの階に留まるのはおおよそ二、三日ぐらいで、一階から上の階に上がっていき、一番上の階を探索した後は、一階に戻ってきて後は繰り返しらしい。


「多分明日ぐらいには上の階に移動すると思うの。だからエントランスは多分大丈夫だと思うの。だから明日にでも移動しようかなって思うんだ」

 

岸部さんは自分の事情と計画の説明を終えると「次は奏ちゃんの事情を教えてくれるかな?」と言われ、私も説明できる範囲で説明することにした。


「私は同じ大学の友人を含めて三人で行動していたんだけれど、厨房の前であの女の子の怨霊に襲われて二人とははぐれてしまったの。出来たら二人を探しに行きたいんだけど、どこに居るのかも分からなくて……」


 私が友人とはぐれて困っているということを説明したら何故か岸部さんは複雑そうな顔をしていた。私がどこか体調が悪いのかと聞くと、さっきまでの調子に戻って「何でもないよ奏ちゃん」と言っていたので特には気にしないことにした。



 それから私たちはさらに話し合い、今日は体を休めた後にエントランスに向かうということにした。私が給仕室(仮にそう呼ぶ)に元からあったベッドに横たわると、岸部さんも隣のベッド横になって話しかけてきた。


「奏ちゃん。あのね……」


 私はさっきまでとどこか違う岸部さんの様子に気になり話しかけた。


「どうかしたの?岸部さん?さっきまでと様子が違うけど何か

あったの?」


 その時に岸部さんの顔を見て気付いたけれども、今にも泣きそうな顔をしていた。驚いた私は岸部さんに改めてどうしたのか聞いてみた。すると彼女は少しずつ話し始めた


「私ね……現実に帰っても友達が誰もいないの……いつも一人ぼっちで……大好きなお父さんもお母さんも私が中学生の時にあった航空機事故で死んじゃったし……だから本当はここで死んだとしても悲しんでくれる人もいないの」


 自分の境遇について話し始めた岸部さんに私はどこか同情すると同時に何か違和感を覚えた。何故かはわからないけれど、彼女のこの態度に嫌な予感がした。


「変な話しをしちゃったね。ごめんね。今言ったことは忘れて」


 岸部さんが少し申し訳なさそうに答えた。それから岸部さんも寝たので私も寝ることにした。



「奏ちゃん可愛い……私だけのモノよ……?」



 それから起きた私たちは朝食を軽くとって、エントランスに向かうことにした。向かう途中は特に変わったこともなく、無事に到着した。エントランスにはあの子供たちが居なかった。


「あれ……?あの子たちがいない?」


 私は驚いたけれども岸部さんは何故か嬉しそうだった。岸部さんはそのまま私に


「じゃあ一緒にあの子たちを探しに行こうよ?一階に居なかったら二階は後回しにして三階から探せばいいでしょ?」


 確かに言っていることはあっているけれども、私は桐生君と小鳥遊君のことが気になった。二人は果たして無事なのだろうか?


「どうかしたの、奏ちゃん?」


 二人のことを心配していると、岸部さんが私に心配そうに声を掛けてきた。


「大丈夫だよ。ただはぐれた友達のことが心配で……」


 その言葉を聞いた岸部さんはとても怖い顔をして私を睨みつけてきた。驚いた私は咄嗟に岸部さんから離れた。


「何で他の人のことを心配しているの?私が居るんだから別にいいじゃない。どうせここからは出られないんだから一緒にここで 私たちだけで過ごせばそれで幸せでしょ?」


 あまりに突拍子の無い発言に驚いた私をよそに岸部さんは話し続けた。


「大体その二人って奏ちゃんを見捨てて逃げたんじゃないかな?奏ちゃん騙されているんだよ。だから私が奏ちゃんとずっと一緒に……」



「ふざけないで!私をどうにかする以前に桐生君や小鳥遊君の悪口を言わないで!!」



 岸部さんは私が怒鳴ったことにとても驚いていた。しばらく立ち尽くしていた岸部さんはブツブツと何かを喋っていた。


「嘘だよ……奏ちゃんがあいつらみたいに私にひどいことを言ったりしたりするなんて絶対しない。だって奏ちゃんは私に優しくしてくれたじゃない……」


 怖くなった私は岸部さんから背を向けてその場から逃げた。


「待ってよ、奏ちゃん。どうして逃げるの?」



 後ろから間延びするような声とともに岸部さんが追いかけてきていた。私は恐怖に駆られながらも必死で逃げていた。私は逃げ続けている時にふと、厨房の近くに来てしまっていたことに気がついた。


(だめ……ここは危ない……)


 私は慌てて引き返そうとしたけれども、岸部さんがすぐ目の前にまで近づいてきていた。


「奏ちゃん……ひどい……どうして逃げるの?奏ちゃんも私のことを嫌いになるの?そんなことないよね?」


 私は恐怖のあまりその場に座り込んでしまった。眼鏡の向うの目は狂気に淀み切っていた。岸部さんは満足げな顔で私の頬を撫ながら話し始めた。


「これからは二人だけでいよう?どうせここではいつ殺されるのかも分からないんだから一緒に居ようよ。いいでしょ?」


 おそらくここで拒絶すれば私は殺されるだろう。すべてを諦めようとした時に声がした。


「お姉ちゃん達楽しそうなことしているね?私も混ぜてほしいな」


 私は声のした方向を振り向くと、あの厨房のあたりにいる女の子の怨霊が居た。怨霊に気付いた岸部さんは恐怖に震えていた。女の子は岸部さんの方に話しかけ始めた。


「眼鏡のお姉ちゃんは私と同じにおいがする?ねえお姉ちゃん。」



「私の【仲間】にならない?」



「イヤアアアアアアアア!!」


岸部さんは悲鳴を上げながらその場を走り去っていった。女の子は岸部さんを追いかけながら去って行った。私はしばらく動けなかったけれども、あの女の子がここに戻ってくるということに気付いて慌ててその場を立ち去った。



 それから私はさっきの給仕室に入り鍵を内側から閉めた。幸いにも貯蔵されている食料が有ったのもあってそのまま二週間ぐらいその部屋に気配を殺して引き籠っていた。


(もういやだ……一人でこんなところにいたくない……岸部さんのことも見捨てちゃったし……二人もひょっとしてこんな気持ちなのかな?誰か助けて……)


 そんなことを考えている時に外で扉を開けようとしている気配がした、しばらくした後に何か話す声が聞こえたと思うと、扉が外から無理やり蹴破られた。


 中に入ってきたのは高校生ぐらいの男女だった。二人は私の姿に驚いた後に生存者と判断したのか男子高校生の方が自己紹介を始めた。


「俺は高本健二っていうんだ。こいつは片山春子。俺と同じ高校に通っているんだ」


 自己紹介された私は二人に改めて自己紹介したけれども内心不安でいっぱいだった。


(この二人も岸部さんみたいに狂っていたらどうしよう……)


 そんなことを考えていると私の名前を聞いた片山さんが驚いたように声を掛けきた。


「朝倉さん!?ひょっとして桐生さんたちの知り合いの!?」


 私は桐生君の名前が出たことに驚いて二人に食いついた。


「二人は生きているの!?今どこにいるの!?お願いだから教えてちょうだい!!」


 片山さんが困った様子でいるのに気付いた高本君がさっきと違い、敬語交じりで私に事情の説明をし始めた。


「今二人は朝倉さんを探すために奥の厨房の方を探しに行ってます。厨房の方に居るはずの怨霊も十字架を使ってしまいましたけど、しばらくは大丈夫なはずです」


 説明を受けた私はしばらく考え込んだ。

(二人が生きている……でもあっちには岸部さんも……でも岸部さんだって生きている人間だし……ここはいかないといけないよね……?)


「事情は分かったわ。厨房の方に向かって二人と合流しましょう。」


 高本くんがそれなら一旦エントランスに戻ろうと言ったけれども、二人に一刻も会いたい私は拒否してしまった。


(我ながら自分勝手ね……自分でも嫌になるわ)

 私は自分自身を自嘲しつつ二人とともに給仕室から出て厨房に向かった。

                                         続く

 

 どうもドルジです。

 今回は前から考えていたはぐれていた間の朝倉さんの行動を間章として書いてみしました。

 自分で書いていて、だんだんバトル要素が出てきている気がしていますが、これはあえてそのままにしたいと思っています。それとは別に、文章表現や誤字脱字を気を付けたいと思います。

 キャラ紹介

名前 岸部菜緒

性別 女

年齢 18歳(専門学校生)

身長 157cm

体重 46kg

髪型 黒髪(長めのボブカット)

趣味 インターネット

所属部活 無し

成績 中の中

特徴

朝倉が洋館で出会った女性。

現世では親しい人間が居ないらしく、初めての告白の後に振られた直後に屋敷に来たらしい。

今までため込んでいた孤独への恐怖と依存心が朝倉に優しくされたことで爆発してしまい、狂気に

囚われた行動を取り始めた。

趣味のインターネット仕入れたのかオカルト知識は意外にある。

イメージCV 山本彩乃


能力 (F<E<D<C<B<A<S)

身体能力 D

精神力 F

知力 C

霊的知識 B

機転 E

行動力 E(依存する相手に関してはA)

霊力 B

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