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第七話 休息 A Rest

朝斗視点。

 

 俺たちが休んでいると、突然扉が開いて健二達が飛び込んできた。健二達の様子を見るとずっと走っていたのかとても疲れているようだ。篠原が慌てて片山に駆け寄り様子を聞いていた。


「春子大丈夫ですか?すごく疲れているみたいだけど何があったのですか?」


 篠原に声を掛けられた片山は息を整えつつ答えた。


「私は大丈夫だよ。真紀ちゃん。真紀ちゃんの方は大丈夫だったの?」


 片山は笑いながら篠原に話をしていた。俺は健二と他にいた三人に近づきお互いの情報を交換することにした。


「朝斗!俺はなんとか生存者を発見することと、何だか興味深そうな情報を見つけたんだ!」


 それから健二は、この館には主人と呼ぶべき存在と、館そのものに意思があるという話を聞いたということを説明してくれた。


「ただ……片山が怨霊に襲われてそのせいで……十字架が砕けちまったんだ。」


 健二の発言を聞いて俺は驚いて話しかけた。


「怨霊に襲われた!?それで十字架が壊れたって……それは最初にあの二人が言っていた十字架が身代わりになるという話の事か……」


 俺はそのまましばらく考え込んだ後に、端っこの方で何かのぬいぐるみで遊んでいる兄妹の霊の方に向かって話しかけ始めた。


「十字架を何かしらの方法で手に入れる方法は無いのか?」


 俺がそう聞くと二人は同時に答えた。


「えっとね……それはもう春子お姉ちゃん達には説明してあるんだけど……」


 それから二人の説明を聞いた俺は内容を理解することが出来たが、同時に眠気が限界にきてしまった。それと同時にさっき健二が十字架の入手方法について説明してくれれば、ここまで時間を費やすことは無かったのではないかと考えた。軽く思案した後に気が付くと健二の方に足が向かっていた。


「どうしたんだよ?気怠そうな顔をしてっけどよ?」


 俺が話しかけると健二は少し眠そうではあったけれどもごく普通に話しかけてきた。俺はそのまま健二に。


「いや……聞かなかった俺も悪いんだが……出来たらさっき十字架についての事情について説明をする時に十字架の調達法について説明してくれないか?」


 と言った。健二は「悪い」とだけ返事をした。俺はその後


「こんなこと言ってもあまり意味は無いが……すまない。俺もそろそろ少し寝る」


と付け加えて、近くの床にシーツを敷いただけの簡素な寝床の方で横になった。


(後で健二に謝っておかないとな……)


 俺は薄れ行く意識の中でそれだけ考えた後に眠りについた。



雄介視点

 

死ぬ気で走ってやっとエントランスに到着した俺たちは、それから高本の友人らしき連中と、俺たちのことを以前見限ったあの赤マントと簡単な自己紹介をした後に大半の連中は眠りについたのだが……俺は正直眠れなかった。


(途中で合流こそ出来たけれど朝倉とはぐれたのって俺が原因だしな……)


 俺は、あの厨房で食料を調達しようとし時に俺たちはあの怨霊に襲われた。俺はあの時朝倉を咄嗟に見捨てて逃げることを選択しちまった。慎二は「朝倉なら逃げ切れる」って説得したけれども、正直そんな根拠なって全くなかった。俺はあの時、自分の命を優先しちまった。誰かに攻められたとしても多分俺は、「じゃあ、お前が俺の立場だったら逃げないのかよ!?」

て聞きかねない。正直自分でも薄情でヘタレな性格だ。


ただ俺たちが厨房に行くと言ったとたんに何処かに消えたあの赤井……赤マントのことは正直あんまり信用出来ない。まあ、ヘタレな俺よりは役立つのは事実だけどな


そんなモヤモヤしたことを考えていると、赤井が俺たちを起こしだした。


「みなさん、そろそろ四時間経過しましたので起きてください。情報交換及び方針決定のための話し合いを始めますよ。」


 俺を含めた全員がのそのそと起き上がり始め、話し合いを始めるためにソファーと机の周りに集まり始めた。



 俺たちが話し合いの中で交換した情報として【屋敷には主人がそんざいする】【屋敷……ひょっとするとこの異界その物に意思がある】【危険度は本館、東館、西館、別館、あとは存在が仄めかされている本館の地下、の順に高い】ということが分かった。後、赤マントを仲間に出来た毛利の話だと、【本来は決まった範囲しか動かないはずの怨霊が決まった範囲以上を行動する可能性がある】らしい。


 俺たちが情報を交換した後に、赤井が今度は話を始めた。


「情報の交換が終わったようですし、次は私の目的について話をさせてもらいますよ」


 そういうと赤井は立ち上がり全員から注目されるであろう場所に移動した。


「まず私の目的ですが……実は毛利君たちには言ってあるのですが、簡単に言うと、本館一階厨房前に怨霊となった少女を善良な霊に戻す、または成仏させることです。」


 周りが一瞬ざわついた。俺を含めた大半の人間が怨霊を善良な霊に戻すことなど無理だと思っているのが目に見えて分かった。ただ片山という女子高生だけは不可能ではないと考えているような顔をしていた。


「本当にそんなことが出来るのですか?それに赤井さんは一度私たちが厨房に行く前にそこに行くことを拒絶しましたよね?正直言っていることとやっていることが違うと思うのですが?」


 朝倉は俺が内心、気になっていたことを言及した赤井は柔和な笑みを崩すことなく答えた。


「今は彼女を元に戻すためには確実な方法を突き止めることと、それを実行する前に必要なある程度の状況【サンプル】を集めることが必要でした。だからこそある程度の犠牲は妥協したのですよ」


 俺は正直この【クソ野郎】の発言にむかついた。ただ、今ここで下手をすると俺たちが殺されかけない。普段温厚な慎二もキレそうになっているのを抑えていた。


「まあ、僕の目的はさておき、今後の方針ですが、またある程度のチームに分かれて行動することが最も効率がいいと考えています。ですから……僕と一緒に本館および西館探索に来てもらう人間として、毛利君と篠原さん、それと小鳥遊君でよろしいですか?」

 

俺は突然自分が指名されたことに内心驚いたけれども二つ返事で承諾した。赤井は俺が承諾した後に「小鳥遊君は確か一度ある程度は西館を探索しているらしいですので、期待していますよ」と言った。


(一言多いなこいつ、狙って言ってるのか?)


 俺は内心イライラしつつ赤井の次の発言を聞いた。


「では後の残りの方々は東館の礼拝堂の探索を行ってもらいましょう。よろしいですか?」


 残りの全員が特に否定はしなかった。ふとさっき出会った高本っていう男子高校生を見ると、俺と慎二以上にキレかけていた。それを片山たちが抑えている様子だ。


「では、話し合いはここまでしましょう。この後3時間の休息の後にそれぞれ出発するという形でよろしいでしょうか?」


 赤井はそんな高本の様子に気付いているのかいないのか、そのまま話し合いを終えると宣言した。それから俺を含め全員が簡易的な寝床に入った。俺もさっきはほとんど眠っていなかったこともあってか、すぐに眠りについた。



春子視点

 

話し合いを終えた私たちは大半再度眠りについた。それから3時間の休憩の後に。再度探索をしなければならないからである。


(確かに死にそうな思いはしたけれど……ここで逃げたって、ただ死ぬのが遅くなるだけだ。ただ死ぬのを待つよりも必死でここからの脱出方法を探すことが何よりも大切だ。)


 私はあの時の怨霊の少女に首を締め上げられた時のことを思い出しながらも自分自身を奮い立たせた。


「それにあの怨霊の女の子……あまり悪い人じゃなさそうだったし……話せばきっとわかってくれるはず……それに赤井さんが言っていた少女は絶対あの子だ……朝倉さんも言っていたけど何で赤井さんは直接あの子に話しかけないのだろう?」


 私はその疑問がどうしても気になり、赤井さんに確認を取るために寝床から出た。


 赤井さんはエントランスの端の柱に身を持たれていた。私が話しかけると赤井さんは柔和な笑みで返事をしてくれた。


「どうしました片山さん?何か私に質問ですか?」


 私は柔和な赤井さんの態度からついありのまま思っていることを聞いてしまった。


「赤井さんはどうしてあの子に会ってあげないのですか?私はあの子に会ってあげた方がいいと思います。」


 私の言葉を聞いた後にどこか苦笑いをするように赤井さんは答えた。


「それは先ほど説明をしましたように、確実に彼女を元に戻せるまではまだ接触は危険だと判断したのですよ……」


 私はその発言にどこか矛盾を感じた。真紀ちゃんの話を聞く限り、あの子ぐらいの怨霊は消そうと思えば消せるはずだ。それなのにどこが危険なのであろうか?


「赤井さん……私たちを捨て駒として扱うことについて私は何か言う気はありませんけれど、彼女に会わないのは本当は逃げているだけではないのですか?」


 私の発言に赤井さんから笑顔が消えた。私はまた人の触れてはいけない部分に言及してしまったと気付いたけれども、今回は引くことは出来なかった。


「真紀ちゃんから話し合いでは言わなかったその女の子との関係も聞いていますけれど、本当は守れなかったことに負い目を感じて会うのが怖いだけではないですか?」


 私が質問を投げかけると、赤井さんは今まで見せたことのない恐ろしい形相で私を睨んできた。


「黙れ。お前のような少し普通より霊感のあるだけのたかが人間の小娘に私の何が分かる」


 赤井さんが私を睨みつけるたびにとてつもなく強力な重圧感を感じるけれど、ここで止めるわけには行かない。


「確かに妖魔の気持ちはわかりません。でも少なくとも人間霊の気持ちならある程度は分かります。私がその子の立場なら赤井さんに会いたいと思います。これはおかしいことですか?」


 私の言葉を受けた赤井さんは一瞬驚愕した後に、何処か歯がゆそうな顔をした後に私から目を逸らし「その話はこの探索が終わった後に詳しくしましょう」とだけ言ってそれから話を切られてしまった。


 それからもう私に出来ることは無いとも思い、そのまま再度寝床に入り、眠りについた。


      

                                         続く



お久しぶりですドルジです

今回は想定外に更新が遅れてしまったことと、番外編に入るのは次ぐらいになりそうです。本当に申し訳ありません。

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